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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
26章 建国祭

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 イスラ・ヴィエントの質問。はっきり言ってあり過ぎというほどあったような気がする。しかし、シェリーは黒髪の老人の赤い目の真っ直ぐ見つめていた。恐らく知りたい答えは一つなのだろうと。


「世界はこの現状を憂いています。ですから変革者たちはこの世界で役目を与えられています」


 シェリーは一つため息を吐いてから言葉にする。


「クロードさんは獣人たちを戦いに導く役目がありました。そのためにクロードさんの周りには多くの人たちが集まっていたはずです」


「ああ、そうじゃな」


「水龍アマツは種族の垣根を壊すため、炎王は新しいものを世界に与えるため、ユーフィアさんは魔道具を世界に満たすためです」


「ではソナタはどうなんじゃ?」


 イスラ・ヴィエントはシェリーに尋ねる。お前はどうなんだと。


「私ですか?私は“破壊者”です。そして世界から聖女をやらされ、世界の浄化と魔王の討伐を命じられています」


「やらされておるか?まぁ、薄々気がついてはおったが、また魔王か。これは大変じゃのう」


「戦火は大陸全土に及ぶでしょう」


 シェリーは前回は大陸北部だけの戦いだっが、今回は大陸の全土に戦いが及ぶと言い切った。その言葉に周りがざわつく。


「その理由はなんじゃ?」


「しつこくナディア様に来るように催促されているのもありますし、白き神に南側に行くようにも言われています。あと、このように平和の時間もあとわずかと言われましたし」


「どこを突っ込んでよいのやら」


 黙ってき聞いていたツヴェークは頭を抱えおり、イスラ・ヴィエントはシェリーの大胆さにあきれていた。


「それから、白き神から最悪世界が壊れても構わないと言われました。ということはそれ程の戦いになる。最悪世界が壊れる程の戦いになると……ですから、シュピンネ族の力を借りれないかと思ったのですが、イスラ・ヴィエント閣下」


 今までの話の中でシュピンネ族がどこに必要になってくるのか、わからなかったが、シェリーはイスラ・ヴィエントに力を借りたいともう一度言った。


「ふむ。神託を無視している理由はなんじゃ?」


「ムカつくからです」


「う……うむ。聖女となると違うのかのぅ。しかし、わしは一族から追い出されておるから一族の力は借りれんぞ。わし以外の一族に頼め」


「ちっ」


 これだけの事を提示してのにも関わらず、イスラ・ヴィエントからは力を借りれなかったことにシェリーは舌打ちをする。


「わしは老害じゃからのぅ」


 それだけ言って、イスラ・ヴィエント忽然と姿が消えた。まるでその場に始めから居なかったように姿が消えたのだ。


「ちっ!逃げた!」


 そう言ってシェリーは立ち上がって、辺りを見渡し、マップ機能を操作して居場所を探ろうにも、元々イスラ・ヴィエントには反応していなかった。シェリーのスキルはシュピンネ族には通じなかったのだ。


「シュピンネ族にスキルが引っかからないから、今まで見つけられなかったってこと?」


 このシェリーの言い分だと、以前からシェリーはシュピンネ族の者を探していたようだ。

 そして、イスラ・ヴィエントの名が出た時点でクロードを餌にすれば、シュピンネ族のイスラ・ヴィエントは現れるだろうとシェリーは考え、軍の敷地内でスキルを使ったのだ。


「シュピンネ族の能力があれば、百獣なんて足元も及ばないというのに」


 シェリーは当てが外れてしまったことが、かなり動揺して素の言葉が出てしまっている。


「シェリー?」


 カイルが困惑したようにシェリーの手を引っ張る。それにより、シェリーは正気に戻ったのか大きくため息を吐き出した。


「はぁ、初めて接触したシュピンネ族との交渉に失敗してしまいました」


 そう言ってシェリーは座っていた席に戻った。


「第0師団長さん。お騒がせしました」


 そのツヴェークは頭を抱えて項垂れている。ここ少しの間で起こったことが、あまりにも異常な事過ぎて頭を抱えてしまっているのだろう。


「そうですね。今日はここまでにしておきましょうか」


 シェリーはカバンから白い封筒を取り出して、テーブルの上に置いた。


「建国祭での人族の選出お願いしますね」


 そう言って、シェリーは立ち上がった。しかし、そんなシェリーをツヴェークは引き止める。


「一つ聞いてもいいだろうか」


「なんですか?」


「貴女の敵は何ですか?」


 シェリーの敵。この場に来てシェリーは、マルス帝国。次元の悪魔の名を上げた。しかし、イスラ・ヴィエントとの話の中で、魔王という名も出てきたのだ。それは、ツヴェークも聞きたくなったのだろう。


 シェリーの敵は何かと。


「敵ですか。それは世界ですね」



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