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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
26章 建国祭

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「言われてみれば、そうなのだが……聖魔術を使える者は希少なので……魔道具の浄化もできるのだろうか」


 ツヴェークは突然全く違うことを話しだした。


「物によりますが?」


 シェリーはできるとは答えなかった。シェリーからすれば、浄化出来ないものはないだろうが、シェリーの何気ない一言でニールから色々な依頼を押し付けられてきた覚えがある。

 そのため、甥であるツヴェークもニールと似た仕事一筋の匂いを感じたシェリーは言葉を慎重に選んだ。


「いくつか使えない遺物があるのだが、ほとんどが呪いのような(けがれ)をまとっているので使えない。資料によると、200年ほど前までは稼働していたそうなのだが、浄化する者が居なくなったために今現在は水を生成する遺物しか稼働していない。浄化してくれるとありがたい。勿論、その依頼料金はこちらから出す」


「それはどのようなものですか?」


 シェリーはツヴェークが言う遺物というものはアーク族の遺産だと理解した。そして、どのような物か興味があると聞いてみたのだが。


「それが、肝心な部分が読み解けなくてな。何故、放置されているのかは別の者の手で書かれていたので普通に読めたが、本体の説明部分が私には読めず、別の者が書いた内容から、恐らく結界などの防御関係の遺物だとは読み解けたのだが……」


 それはアーク族の言葉であるから読み解け無いということではないだろう。なぜなら、この世界の言葉は白き神の元で統一されているのだ。ならば、読めない文字を書いて、この国に残したという人物は一人しかいない。


「その資料は閲覧可能ですか?」


「統括師団長閣下の許可が無ければ、閲覧出来ない」


 となれば、部外者であるシェリーがその資料を見ることができることは皆無だろう。シェリーはこの際なので、聞きたいことは聞いてしまおうと、空いているソファに向かって手を向けた。


「『亡者招来(死者の召喚)』」


「ちっ!今度はなんだ」


 舌打ちの音と共にシェリーを睨みつけるように赤い瞳を向けて現れたのは、勿論黒狼クロードである。そのクロードにシェリーは立ち上がって、鞄から次々とお菓子を出してきて、彼が座る目の前のローテーブルにドンとお菓子の山を作った。


「第3師団が管理している使えない古代魔道具の説明をしてください」


「シェリー・カークス。すまないが、以前もこの方がいらしたが、これは転移を使ったわけではないよな。どうやって、結界が張ってあるこの部屋に現れた?」


 シェリーがクロードにアーク族の魔道具に関して聞いていると、ツヴェークが聞いてきた。どうやら、ツヴェークはこの話し合いに邪魔が入らないように結界を部屋に張っていたようだ。


「気にされなくても大丈夫です」


 シェリーはいつも通り、シレッと答えるが、気になるものは気になるとツヴェークはどことなく第6師団長であるクストに似た人物に視線を向けた。

 クロードはというと、お菓子の山から旨塩ポテチを探り当て、袋を開けて抱え込むようにバリバリと食べている。


「あの、お名前を伺ってもよろしいでしょうか?自分は……」


 ツヴェークがクロードの名を知るために、自ら名乗ろうとしたところで、クロードに手を上げられ、言葉を止められた。


「俺の名など意味がない。だから、名乗る必要もない。使えない古代装置のことだったな」


 クロードは今の己がただの記憶でしか無い存在であるため、本来であればこのようにツヴェークの前に存在する者ではないと、名の名乗ることを拒否した。ただ、言わなくてもわかっているだろう?という意味にも捉えられる。

 一度、ナヴァル公爵家で会い、クストと話をしている姿を目にしているのだ。普通であれば、クロードのことをナヴァル公爵家の縁者ととらえるところだろう。


「建国時代から稼働していたものは、第一層内の結界だ。それと浄化装置。最後に自動迎撃システムというものの一部か」


 クロードから思ってもみない言葉が出てきた。まるで、この王都の元であった空島が要塞であるかのような言い方だ。


「第一層内の結界とはどういうものですか?」


 シェリーはもしその結界というものが現在も稼働していれば、ナヴァル公爵家への襲撃は防げたのではないのかと考えたのだが。


「結界といっても大部分にガタがきていたらしい。俺は実際に目にはしていないが、初代ナヴァル家の当主であったグロスの手記では、今の第1層壁の高さまでの結界で、大通りの4箇所に結界の穴があったためにそこに門を設置したとあった」


 それは結界と言っていいのだろうか。いや、見えない壁という障害物にはなっていたのかもしれない。


「俺が調べたらどうも、第二層の辺りを覆う結界もあったが、強い衝撃によって第二層の結界は壊れ、第一層の結界のみを維持していたようだ。ただ、その稼働するエネルギーと言えばいいのだろうか……魔道具を動かすエネルギーが人の心らしい。俺にはさっぱり理解できなかったがな」


 クロードは肩をすくめているものの、人の心がエネルギーとはそのようなモノで動くのかという疑問の方が大きいと思われた。



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