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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
26章 建国祭

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「あれの元が人だとどうしても思えないが?」


 第二層内を通り抜ける為に歩きながら先程のことに理解ができないとリオンが言っている。


「え?でも俺、黒い球体の中に入った半分鳥人で半分完全体の悪魔を倒したけど?」


 グレイは己が倒したモノの異形な姿を口にしたとき、リオンとスーウェンから肩を掴まれ足を止められてしまった。


「虚偽は駄目ですよ」

「グレイが完全体の悪魔を倒したってウソだよな」


 二人してグレイが悪魔に対抗する力を持っていないと決めつけた。しかし、グレイが倒したモノは完全体の悪魔というより、不完全な悪魔と称したモノであったため、女神ナディアの補助もあっただろうが、倒したことにはかわりない。


「ん?だからその悪魔っぽいヤツを倒すのに、グレイが赤い狼になったんだ。あー俺も獣化したいなぁ。空を駆けてみたい」


 オルクスが己の願望とグレイの戦っている姿を見た感想を言ったが、空を駆けるという行動が獣化したからではないと気がついていない。その間はオルクスは気を失っていたのだろう。


「あ、それ普通でも空中で移動できるようになった。今はもう少し思ったように動ける練習をしている」


「グレイ。ちょっとその話詳しく話をしてくれないか?」


 スーウェンとリオンに引き止められている感じになっているグレイの行く手を阻むように立ちふさがったオルクスが詰め寄る。


 同じ獣人として黒狼クロードのように獣化しないと空を駆けることができないと思っていたのに、グレイが空を人の姿でも駆けられるという言葉にオルクスの斑の尻尾がゆらゆらと揺れている。

 これは更に一人先に進んでいるグレイに苛立っているのだろうか。


 そんなやりとりをシェリーは聞き流しながら、彼らを置いて進んでいく。その横ではしれっとカイルがシェリーの手を握って、ニコニコと話掛けていた。


 その姿を見た……見てしまった4人は、慌ててシェリーの後を追っていったのだった。





 シェリーの目の前にはそわそわとした感じがありありと見て取れるブルーグレーの髪に紫の瞳の男性が座っており、その背後には亜麻色の髪に鮮やかな青い瞳が印象的な男性が背後に控えていた。第3師団長と第3副師団長である。


 ここは第3師団の詰め所の建物内である。その一個師団の師団長と向き合って座っているのは勿論シェリーであり、他の5人は背後に控えるように立っていた。

 これは勿論座る場所でもめるため、シェリーが後ろに立つように指示したのだった。


「第3師団長さん。半分の引き抜きは問題なくできそうですか?」


「あ……ああ。正確には希望者だけなので半分にみたなかったが、3468人を移動できる」


 一個師団は1万人規模なので、3500人も満たなかったようだ。それに希望者のみとはどういうことなのだろうか。


「希望者のみですか?」


「そうだ、希望者のみだ。これは書かれていた訓練と仕事内容が厳しすぎるためだ。はっきり言って命の保証が出来ない以上、希望者のみとした。いや、軍人としては身命を賭す覚悟はある。しかし、突然に師団を半分に分けることに忌避的な者たちもいるのだ」


 納得のいかないところで重要な職についても、その者が足を引っ張るようでは意味がないと。第3師団長であるツヴェークはこの第0師団の引き抜きの重要性は理解していた。獣人ではなく人族のみで構成する重要性も理解していた。

 それは勿論ツヴェークはニールの甥だということは、彼の祖父と曽祖父が第0師団にいたということだ。


 シェリーから第0師団のことを聞かされて、調べてみれば理解できるほどの資料は十分な手に入っただろう。

ニールがこだわりを見せるほどに。


 だが、他の者たちは違う。そう、ツヴェークの後ろでシェリーを睨んでいる第3副師団長のように。


「まぁ、いいでしょう。残りの足りない人員は今回の武闘大会での引き抜きの許可を得ていますので、使えそうな人員をピックアップしておいてください」


「一つ聞いてもよろしいでしょうか?」


 シェリーの言葉を遮るように第3副師団長が発言をした。それにシェリーのツガイである彼らが殺気立ったがシェリーはそれを気にするようすはなく、いつも通り無表情で応える。


「何でしょう?」


「何故、軍に何も関係のない薬師の娘が、軍事に口出しをしてくるのでしょうか?」


 一般的にはシェリーは薬師カークスの娘ということになっている。しかし、第5師団と第6師団ではシェリーの本当の親が誰かということはひと目でわかってしまった。だから、シェリーに対して問題児というレッテルを貼り、見張っていたのだ。


 ただ、一般的見解ではたかが薬師の娘が何を言っているのだということだ。一般人ということになるのだが、ラースの魔眼を目の前にして、このようなことをいう部下を後ろに控えさせているツヴェークは冷や汗が流れていたのだった。



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