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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
26章 建国祭

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「シェリーは何もしていないって、言っていたことはカイルが全て駆逐したのか?」


 グレイが止まってしまった距離を埋めるかのように、小走りでカイルに聞いてきた。聞かれたカイルは勿論首を横に振る。


「え?じゃ、あのオリバーさんが動いたってことか?」


 オルクスが興味津々で聞いてきた。それも“あのオリバー”に敬称が付けられていることから、何かとひどい目に合っているオルクスにとっては近づきたくない存在なのだろう。


 しかし、それも違うと首を横に振るカイル。ただ、カイルにはあの鎧が何なのか理解はしていなかった。炎国で見た鎧に似た感じの物がオリバーの部屋から出てきたとしか認識していなかった。

 だが、オリバーが作り陽子が管理している鎧にも酷似しているので、どの様なものかを判断しきれないでいた。ただ、アレは危険なモノとしか認識できなかったのだ。


 そう、誰もシェリーが持って帰った鎖でグルグル巻に封印された箱の中身は見ていなかったのだ。


「シェリー。あの黒い鎧がどういうものか教えてもらえるかな?」


 カイルは一番知っているであろうシェリーに尋ねる。尋ねられたシェリーはカイルを一瞥し、ため息を吐きながら答えた。


「あれは鍛冶師のファブロさんが作った、ブラックドラゴンの力を最大限に引き出した鎧です」


 鍛冶師ファブロという意外な名が出たことで、5人の頭の中には試し斬りとして廃棄処分という名の勝手に動き出す鎧が頭の中に浮かんできた。


「それってシェリーが厳重に封印されたのを持って帰ってきたやつか?」


 グレイが驚いた様に聞いてきた。


「そうですが、何か?」


 シェリーは何か文句でもあるのかと捉えられる口調で言う。勿論、グレイは封印してあった物を自由にしていることに対して何かを言っているわけではなく、ただ単に本当に驚いたから聞いただけなのだ。封印してあった物の中身は自分たちが倒した鎧と同じ様なものだったのだと。それも、オリバー作偶発的産物を倒すほどの力を持っていたのかと。


「あ、いや……文句があるわけじゃなくて……あの……俺の剣を作ってくれたファブロさんの鎧はあのSクラス級のモノたちを倒せたのに、俺はというと……」


 グレイは言いどもってしまった。その後にがきっと【無力だった】という意味の言葉が続くのだろう。しかし、それはシェリーの知り合いがことごとく、強者であったり何かに秀でていた者であったりと普通から逸脱した者たちであったためだ。一般人から言えば、グレイのレベルであれば、十分と言っていい。


「グレイさん、ファブロさんの剣を覚醒させただけでは駄目なのですよ。炎王がルーちゃんに見せつけたように炎を出せるだけで喜んでいるようであるなら、それはただの魔剣にすぎませんから」


 確かに鍛冶師ファブロから剣を譲り渡されたときに言われた言葉は『なんとか及第点だ』だった。ギリギリ剣を扱うに値するといわれただけで、シェリーの黒刀を渡したときとは反応が違っていた。


「それに貰ってきた廃棄物は所詮魔龍鎧(まりゅうがい)というべき、力の暴力を奮うだけの意志なき人形であり、それ以上でもそれ以下でもないモノにすぎません」


「え?それはどういう意味だ?結局、強いってことだよな」


 オルクスがシェリーの言わんとすることが分からず、首を傾げている。


「それはただありのままに力を奮うだけのモノってことだね。成長もしなければ、状況により攻撃を止めることもない。そう言えば、君たちはシェリーと水龍アマツ仕様の鎧との戦いを見ていなかったよね」


 カイルがニコニコといつのどおりの感じでシェリーの言葉に補足を入れていたが、若干その言葉に何か含みがあるように聞こえてしまうのは気の所為だろうか。

 あの時はオリバーの作った鎧に負けていたよな、と。その君たちが何故己の番の側にいるのだろうな、と。


 今までシェリーとの時間を堪能していたカイルとしては、ここ数日がストレスとなっていたのだろう。


 そして、そのカイルの言わんとすることを感じ取った4人の雰囲気が悪くなる。カイルだけ白き神の強制力という力によって、番という繋がりを得たことに関しては陽子から言われた言葉で理解はしていたが、納得はしていなかった。


 何故、貴様だけが俺のシェリーと番としての繋がりを得ているのか……4人の怒りは一つであったが、そこに共闘しようという意志はない。何故なら己以外の4人全てが敵なのだから。


「はぁ」


 そこに一つのため息が聞こえてきた。そのため息を聞いて5人が互いに互いを牽制しあっていた視線がため息を吐いた者に向けられる。勿論、そのため息はシェリーからこぼれ出たものだった。


 シェリーの中ではルークが学園に戻ってしまったために、またこの煩わしい日々が始まってしまったのかというため息であり、今日の夕食がユニコーンの肉を使った料理に決まった瞬間でもあった。



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