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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
25章-4 冬期休暇-悪魔という存在

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「そもそも加護って得ようとして得られるものか?ルークも加護のことを聞いてきたが、俺は加護なんて意識したことがない」


 炎王はオルクスに疑問を投じた。炎王はシェリーに指摘されるまで複数の神から加護を得ていることは理解していなかった。なにやら多くの称号を得ているなとしか思っていなかったのだ。


 繰り返しになるが、炎国の者たちが崇める光の神ルーチェは加護を与える神ではない。

 そんな曖昧なモノに頼るよりも、己の力で解決した方が物事が上手くいったため、神に縋ろうとは思って居なかったのだ。

 いや、白き神の言葉に憤りを感じていたのは事実だった。だから、白き神にしろ、光の神にしろ敬意は払っても縋ろうとはしなかった。


「でも……ですが、加護を得ると獣化できるのです」


 オルクスにしては珍しく丁寧な言葉遣いだった。

 獣化。それは獣人としは得たい力なのだろう。その言葉に炎王は首を傾げる。


「獣化?あれだろう?巨大な獣に成るヤツだろう?ロロが昔はたくさんいたと言っていたな」


 ロロとはギラン共和国の西の端にあるエルトの街の下にあるダンジョンのマスターの名だ。いや、正確には依代にしている鳥の名だが。


「ガナートの(せがれ)。獣人の強さとはなんだ?」


 炎王はとても曖昧な問いかけをした。獣人といってもその種族は膨大だ。一概にこれだ!というものでもない。


 案の定オルクは炎王がどのような答えを求めているのかわからず、黙ってしまった。


「別に獣化したからと言って強いとは限らないんじゃないのか?ソルも獣化できたが、己が弱いということをよくわかっていた。自分が英雄と呼ばれているのは天津やグアトールが居たからこその名声だとな」


 炎王が言うソルとは金狼獣人の祖であるソルラファールのことだ。その英雄と謳われた人物自身が己の弱さというものを理解していたと。

 それも英雄という名声は水龍アマツやこの国の統括師団長の祖であるグアトールと共に戦ってきたからこそのもので、彼自身の実力では英雄には至らなかったと。


「リオンにも言ったことだが、強さをもとめるのはいいが、強ければいいっていうものじゃない。その力に振り回されてしまっては意味がないと俺は思う。身に余る力は己を食いつくすものだと覚えておくといい」


 そう言って炎王はため息を吐いて再び口を開く。


「俺のところに精霊がいるだろう?あいつはその昔に力を求めて氷竜を食ったそうだ。だが、その氷竜の力はあいつには大きすぎて何もしなくても辺りを凍らせてしまう。だから、その力を押さえるために深い眠りにつくか、氷竜以上の力で得た力を押さえなければ、いけなくなってしまった。力を得るには何事にも順序というものがあるのではないのか?」


 力を求めたが故に膨大な力を更に強大な力で押さえなければならない。何の為に力を得たのかわからないという1つの例だ。


「今の君たちのやるべきことは、神の加護を得ることではなく、地道に力を得ることじゃないのか?」


 炎王は第三者から与えられた力ではなく、己自身で力を得るべきではないのかと、オルクスに……いや、この場にいるグレイやリオンを諭す。


「でも、リオンは何か知らないけど、力を与えて貰っているし、グレイは女神ナディアのゴリ押しで、加護をもらっているしズルいと思う」


 しかし、オルクスは炎王の言葉に反論する。半分愚痴のようにも思えなくもないが、オルクスの言葉遣いは既に元に戻っていた。

 そして、自分だけ置いてけぼりをされたように、何も変わらないと。


 確かにリオンは鬼族として新たな力を得たのだろう。それも炎王とその番であるリリーナが手を貸した。

 そして、グレイはというとオルクスの目の前で女神ナディアの策略で獣王神フォルテから加護を貰い受けたのだ。

 自分自身にはそのように手を貸してくれる者はいないと。


 オルクスにそう言われてしまえば、炎王は腕を組んで考え始めた。炎王自身は龍人だが、豹獣人族の長でもある。何かをするのであれば、己であろうと。


「ガナートの(せがれ)。一応声をかけてはみるが、白き神はあまり好かない。ルーチェ様は道を示してくれるが、ただそれだけだ。俺は佐々木さんじゃないから、応えてくれる者がいなければ、それまでだ」


 炎王はオルクスの為に神々に声をかけてくれるようだ。ただそれはオルクスの願う獣王神の加護ではない。

 一番力のある白き神でもなく、自国で崇めている光の神でもない。本当に己が声をかけるだけで、加護を与える神がいるのか。

 膨大な加護を得ながらも半信半疑で、空間に向かって声を掛けた。それも、何処からともなく、一升瓶を取り出して言ったのだ。


「異界の酒を交換条件にこの者に加護を与えてくれる方はおられるか?」


 いや、珍しい異界の酒を条件にオルクスへの加護を願った。要は対価を与えるので、加護を施してくれないだろうかと。


「……」


 しばし待つが何も変わりはしなかった。これは異界の酒ごときでは加護を与えるほどではないということなのだろうか。



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