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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
25章-4 冬期休暇-悪魔という存在

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 シェリーとカイルは閑散としている冒険者ギルドの中を歩いていた。人の姿は殆ど見られず、職員も暇そうに受付けのカウンターの席に座っている。


 ここがどこかと言えば、ギラン共和国の首都ミレーテの冒険者ギルドだ。別に今の時間帯が夜中というわけではなく、いつもであれば、朝の受付で人がごった返している時間帯である。何があったのかと周りを見渡して、シェリーは納得した。

 

 窓の外が真っ白で吹雪いているのだった。シーラン王国より北側にあるギラン共和国では厳しい真冬に突入していた。だから、冒険者ギルドに出入りしている人もまばらなのだ。普通はこの様に吹雪いているときに外に出るものではない。


 シェリーとカイルは閑散としたギルドの1階を横切り、二階へ続く階段を上って行く。その二階専用の受付にて、ギルドマスターとの面会を申し込んだのだ。

 そもそもなぜ、シェリーとカイルがこの首都ミレーテに来たのかと言えば、勿論完全体の悪魔の件である。


「あの〜申し訳ございません。マスターは冬期休暇中です」


 受付けの女性は申し訳無さそうに言っているものの、若干何故この時期に来たのかという雰囲気を醸し出している。外は吹雪いているので、そんな日に外出しなくてもということだろう。


「冬期休暇ですか。ということは、春までここには来ないと?」


 シェリーはというと職務怠慢なのでは?という雰囲気を出しながら、ギルドマスターの来る予定をを確認する。


「そこまでとは言いませんが2ヶ月程は外もこの様な日が続きますので、来ません」


 受付け女性はきっぱりと言い切った。ギルドマスターが来ないとなると、ダンジョンへ続く扉を開けてもらえないことになる。

 仕方がないので、シェリーはいつも利用している二階の休憩スペースを指しながら言った。


「ギルドマスターが居られないのはわかりました。では、少しだけそこの休憩スペースを利用してもいいですか?」


 受付けの女性はホッと溜息を吐いて、同意するように首を縦に振る。恐らく、Sランクのカイルと揉め事を起こさなくて良かったということなのだろう。


 シェリーは二階の端にある休憩スペースまで行き、受付けに背を向けるようにしてソファに腰を降ろした。そして、空間に話しかけるように呼びかける。


「ユールクスさん、お話があるのですが」


 そのシェリーの言葉に応じるように、緑色の髪に金色の目の男性が床から出てきた。と、同時に受付けの方からガタリという音と悲鳴のような声が聞こえて来たがシェリーは無視をする。


「ラースか。ここ最近はよく来るな」


 確かにシェリーは先日ルークと共に訪れたばかりだった。


「今回は別件です。悪魔の件でわかったことがあるので報告です」


 そのまま話を進めようとするシェリーをユールクスは片手を上げて止める。


「少し待て」


 そうユールクスが言葉にした瞬間、どこかよくわからない応接室の風景に周りが変化した。いや、違う。ユールクスがダンジョン内を移動しただけだ。

 実は応接室のソファに座っていたままだったと脳が勘違いしそうなほど、全く違和感が感じられなかった。流石、神へと至る者だと言えばいいのだろうか。


 そして、元々シェリーと面会の予定があったかのように、シェリーとカイルの前に用意されているお茶と茶菓子。目の前には優雅にソファに腰を下ろして、ティーカップを傾けているナーガのユールクス。その背後には同じ色をまとったナーガの女性であるスイが控えていた。


「さて話を聞こうか」


 ティーカップを置いて言葉を発したユールクスの姿はこの地を統べる王のように、威厳を放っていた。


「実はシーラン王国のダンジョンがおかしな状況に陥っていましたので、調査依頼が出されたのです。ユールクスさんのダンジョンはかなり広いですが、問題が起こっていないか確認に来たのです」


 そのシェリーの言葉にユールクスは何を言っているのだという表情を浮かべた。その辺りにある若いダンジョンと比べないで欲しいということなのだろう。


「昨日、親友がダンジョンマスターをしている『愚者の常闇』に突如として穴が空いたのです。そこからダンジョンで管理されている魔物が出ていったのですが、その穴を開けた原因に陽子さんは気がついていませんでした」


「ちょっと待って。それは余りにもおかしな話だろう」


 そう、ダンジョンマスターとは己のテリトリーを息をするように全てを把握できる存在だ。それにも関わらず原因がわからないとは、有り得ないと言い切っていいほどことだ。


「ラースは我らを愚弄しているのか?」


 陽子の言葉を代弁したはずのシェリーに対し、ユールクスは絶対に有り得ないことを口にしたシェリーを脅すように、殺気をぶつけたのだった。



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