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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
25章-4 冬期休暇-悪魔という存在

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「取り敢えず、これは俺が始末してよいか?」


 オリバーは話は終わったと言わんばかりに、踵をかえして黒い球体に向き直った。しかし、シェリーに問いかけたにも関わらず、その返答を待たずにオリバーは黒い球体を指先で弾く。それだけで黒い殻は泥水のように溶け出した。

 恐らく何かの魔術を使用したのだろうが、何をしたのか全く理解できなかった。


 溶けた殻の黒い液体の中央にパシャンという音を立てながら落ちてきたものは、まだ両方の翼があるものの形が変形したように歪で、全体的に白と黒が混合された人形(ひとがた)の存在だった。


「ふむ。シェリーが言っていたことはこういうことか」


 アーク族と悪魔の混合体と言えばいいのだろうか。そのモノは黒い殻を壊されたことに怒りを顕わにしているのか、低く唸り声を上げている。

 そのモノに向かってオリバーは手をかざした。そう手をかざしただけだ。それだけで、目の前の悪魔の成り損ないは砂のように崩れ、黒い液体の中に沈んでいった。


「ひっ!砂になっちゃったよ!」


 今まで何かしらの生物として生きていたものが砂のように崩れ去ったのだ。それは陽子もシェリーの後ろに隠れて、ガタガタ震えるだろう。いや、その矛先を自分に向けないで欲しいという現れかもしれない。


 しかし、悪魔の成り損ないとはいえ、簡単に排除してしまうのは、流石世界から選ばれた存在だったということだろうか。


「まだ、核ができていないとこうも脆いものなのか」


 オリバーは何やら不満げに黒いシミになってしまった地面を見ている。


「核ができていない?」


 シェリーが疑問に思いオリバーに尋ねる。すると、オリバーは振り返り己の心臓を指し示した。


「悪魔の心臓を意味する魔核のことだ」


 確かに幾度かシェリーは次元の悪魔と戦った際に身体の中から核を取り出し浄化をしていた。その魔核がないとオリバーは言っているのだ。


「悪魔には心臓は存在しない。あるのは身体の何処かに存在する魔核だ。それを破壊しないかぎり、いくらでも再生し続ける厄介なモノだ」


 破壊。シェリーは浄化という手段をとっているが、オリバーほどになると魔核の破壊をすることができるということだ。

 いや、確か初代傭兵団長をしていたマリアがそのようなことを行っていたと傭兵団の者が話をしていたので、英雄クラスとなれば可能なことなのだろう。


「ふむ。中々面白い。ダンジョンとなればひと目につきにくく、世界から力を吸い取り十分に力を得られると。てっきり次元の狭間で力を得ていたのかと思っていたが、まさかダンジョンだったとは、盲点であった」


 オリバーは独り言のように持論を展開させていっている。そして、ふと何かを思ったのかオリバーは陽子に視線を向けた。


「ひっ!」


 視線を向けられた陽子は思わずシェリーの肩を掴んで身を縮める。そして、ここには居ないアピールをするけれど、バレバレである。


「ヨーコ。君はおかしなことを言っていたな」


「な……なんでしょう」


 陽子はオリバーとは会話をしていないはずなのにっと思いながら聞き返す。確かにしていない。


「そんな怖ろしいモノがダンジョンの中にあるとはっと、言っていたが、君は気づいていなかったのかね?」


 そのようなことを口にしたことは陽子も覚えているので、陽子はここぞとばかりに悪くないアピールをする。


「そう!陽子さんのダンジョンに突如として穴が空いて、魔物が出ていってしまったことは認めるよ!だけど、あんな気味が悪い丸い物体があるなんて陽子さん知らなかったんだよー!」


 オリバーは陽子が気づいていなかったことに、ダンジョンマスターの意をかい潜って存在した悪魔の揺り籠という存在を考え始めたところで、シェリーが口を出した。


「オリバー、悪魔の揺り籠はダンジョンのポイントを吸い取っていたみたい」


「ダンジョンポイント……一種の世界のエネルギーであるか。何処かで見つけたら観察するのも一興か」


 恐ろしいことを口にしているオリバーに対して陽子は慌てて止めにかかる。


「陽子さんのダンジョンポイントが勝手に無くなってしまうのは困るよ!」


「オリバー、屋敷に変なモノを入れないでもらえる?」


 シェリーもルークが帰ってくる家に怪しい物体を置かれては困ると否定しておく。二人から拒否されたオリバーは肩をすくめた。己が興味を向けた存在は跡形もなくダンジョンに飲まれていったのを見届けて、帰ろうと足元に陣を展開させる。


「オリバー帰るのなら、ついでに連れて帰ってもらえる?あと、黒い鎧の回収も」


 シェリーはちゃっかりとオリバーを移動手段として使うことを忘れてはいなかったのだった。




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