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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
25章-4 冬期休暇-悪魔という存在

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 シェリーは気になり、ニールに報告している冒険者の声に聞き耳を立てる。


「上からしか見てないから詳しくはわからないが、どうみてもやばそうな魔物が王都に向かって進んで来ているんだ!」


 どうも騎獣で上空を飛行中に見かけただけらしい。“どうみてもやばそう”と言われても、その情報だけでは何も判断できない。


「やばそうって、どうやばそうなんだ?」


 ニールも肝心なところが曖昧に言われ、イラッとしながら質問をしている。


「いや、本当に見たことがない魔物だったんだ。四足歩行の大きな鳥?翼がないドラゴン?首がない馬?とか色々だ」


 報告している冒険者の言葉にシェリーは眉をひそめる。どう考えてもオリバーの偶発的産物であるごみ溜め通路にいた物体たちが外に出てきてしまっているようだ。


「ジェフさん。晩御飯はまた食べに来ます」


 そう言ってシェリーはカウンター席を立った。勿論カイルも同じく席を立つ。


「そうか。じゃ頑張ってこいよ」

「何を言っているのですか?私は頑張りませんよ」


 シェリーはおかしな言葉を残して背を向けてギルドの出入り口に向かっていく。その姿にジェフは首を傾げているが、ニールはニヤリとした笑みを浮かべてシェリーとカイルの背中を見送った。これは手間が省けたと思っているのだろう。

 不機嫌そうな顔から一転不敵な笑みを浮かべているのを目の前で見てしまった報告している冒険者は思わずニールから距離を三歩ほど取ってしまったのだった。





「シェリー。どうするの」


 カイルは、さっきの話を聞いてシェリーは絶対に動くと確信していた。『愚者の常闇』にはシェリーの生きがいと言っていいルークが行っているのだ。

 その近くで魔物が発生しているとすれば、シェリーはルークの為に動くであろうと。


「まず、オリバーを叩き起こします」


 ちょっとおかしな返答が帰ってきた。確かに、オリバーが作り出したものかもしれないが、管理しているのは陽子であってオリバーではない。


「今、陽子さんに連絡が取れれば良いのですが、ここは西地区なので、屋敷に戻ってから状況確認をします」


 シェリーは西地区という言葉を使ったということは、まるでダンジョンがある方向の南地区は陽子のダンジョンの管轄に入っていると言っているようだ。


 シェリーは急いで、西地区第三層を抜け、屋敷がある第二層に入ろうとしたところで、シェリーを引き止める者がいた。


「シェリー・カークスちょっとだけ時間をくれないか?」

「今、忙しいのですが?」


 声を掛けてきたのは第二層門でシェリーを待ち構えるようにいた第5師団長のヒューレクレトだ。そのシェリーを引き止めるヒューレクレトの言葉にシェリーは被せるように返事をする。


「少しで終わる」


 これは恐らくヒューレクレトに頼んでいた帝国人の排除のことだろう。シェリーは早る心を押さえ、ヒューレクレトに視線を向ける。


「何でしょうか?」


「少し気になったことがある。上に挙げるか微妙なのだが人なのに人ではない匂いをまとっている者たちがいたんだ」


 匂い。どういうことだろうか。謎掛けのような言葉だ。人なのに人では無いとかこれは如何に。


「それで?」


「……あ、その……なんだ……」


 ヒューレクレトはオドオドと言いどもり、その先を言葉にしない。その姿にイラッと来たシェリーはヒューレクレトを睨みつけて言う。


「はっきり言ってもらえませんか?こっちは急いでいるのです」


「その事を統括師団長閣下に相談したいのだ」


 何故、そんな事をシェリーに言ってくるのか。そう思うのであれ騎士団本部に行けばいい話だ。

 そこで、シェリーはふと考える。もしかしてヒューレクレトの言っている統括師団長とは黒狼クロードのことを言っているのではないのだろうかと。


 どうもこのヒューレクレトという男はクロードの事を閣下と呼び、国王であるイーリスクロムよりも上位にいるような言葉を口にしていた。

 クロードから指示を受けたのであれば、その任務を完璧にしてこその師団長といいたいのだろうか。

 そして、クロードからの命令を実行の中で感じた違和感の正体をクロードに相談したい。そのような感じか。


「第5師団長さん。貴方が責任を持ってやるべき仕事中に違和感を感じたのであれば、貴方の直属の上司に報告してください。私は第5師団長さんの上司ではありません」


 シェリーはきっぱりと否定するとヒューレクレトは肩を落して項垂れる。もしかして、尊敬するクロードに会えるのかと思っていたのだろうか。


「ああ、でもどう違和感があるのかだけ、教えてください」


 すると背筋をすっと伸ばしたヒューレクレトの口からはおかしな言葉が出てきた。


「そうだな。感覚的にはピリピリという感じだ」


 さっきの冒険者と同じくとても曖昧な表現をされてしまった。


「強者を前にした感覚と同じなのだ。だが、器と力が合っていない違和感というか。例えて言うのであれば、子供にドラゴンの力が与えられたようなチグハグな感覚だ。」




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