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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
25章-4 冬期休暇-悪魔という存在

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「悪いけど、僕にフラゴルに命令する権利はないよ」


 イーリスクロムははっきりと言い切った。いくら数年前まで統括副師団長だった人物でも、イーリスクロムがその行動を強制することはできないと。


「では、4箇所の調査をお願いします」


「いや、簡単に言うけれどね。こっちも色々対処している途中なんだよ。帝国もそうだけど、各地の魔物の被害も収まらないし、祭りの準備もしなければならないし」


 イーリスクロムは何かと言い訳をしているが、一番最後の言葉が本音なのではないのだろうか。


「祭りの縮小をすればいいのでは?新年明けて早々に馬鹿騒ぎするお祭り、五月蝿すぎると思います」


「祭りは大事だって、その日は馬鹿騒ぎする日と決められているからね」


 ちょっとおかしな気もするが、この国の祭りもギラン共和国と同様に皆が楽しみにしているものなのだろう。


「では、祭りが始まるまでの1週間の間で、特に仕事がなさそうな統括師団長閣下に行ってもらえばいいのではないのですか?」


 シェリーは統括師団長がそこまで忙しくないだろうと決めつけ、騎士団のトップを動かそうとしている。ただ、この事はクロードも言っていたことだ。ウラガーノを使えと。


「完全体の悪魔を倒せる者で、動かせる人物は決まってくるのではないのですか?」


 シェリーは淡々と話、イーリスクロムを追い詰めていく。完全体の悪魔と成るモノがこの国に存在しているのだと。それを倒さなければ、その悪魔がどう動くかなんて討伐戦を戦い抜いたイーリスクロムならわかるはずだと匂わせているのだ。


 イーリスクロムは頭が痛いと言わんばかりに頭を抱え込んでしまっている。そのようなことは、言葉にせずともイーリスクロムもわかっている。この事は放置すべきではないと。


「はぁ、軍議を開くしかないか。でも、この時期に会議をしても絶対に意味がないと思うんだよね」


 それは会議を開いても獣人が多い騎士団と軍部では近づいてくる祭りの日に気もそぞろとなっているからだろう。


「確かに優先的にしなければならないことなのはわかるから、軍で請け負うけど、この時期だから期待しないで欲しいと冒険者ギルドの補佐官に伝えておいて」


 イーリスクロムはそう言って立ち上がった。多種多様の獣人が集まると、その者たちをまとめるというのは至難の業だ。いくら、一国の王だとしても絶対的な力を持つ者でなければ難しいのだろう。


 項垂れながら会議室の様な部屋を出ていくイーリスクロムの背中を見ながらシェリーは内心思っていた。なぜ、再び冒険者ギルドに戻って自分が報告しにいかなければならないのかと。

 外は既に日は沈んでおり、夕闇が辺りを支配する時間になっていたのだった。



 結局シェリーとカイルは再び冒険者ギルドに戻ってきていた。本当はシェリーが第二層を通ったときに自分の屋敷がある方向に曲がろうとしていたのだが、それをカイルに止められたのだ。


 今依頼完了の報告をしておかないと、また冒険者ギルドに足を運ばなければいけなくなるがいいのかと言われてしまえば、シェリーも渋々足を方向転換したのだった。


 そして、今現在にぎやかなギルドの隣に併設している食堂でシェリーとカイルは夕食を注文していた。


「ジェフさん。海鮮鍋が食べたいです」


 いや、カウンターに座ったシェリーはメニューにない物を注文していた。それに対し、厨房の奥にいるジェフはすぐさま返答する。


「そんな物はメニューにない!メニューから選べ!」


「寒い外から来た私に酷い言いようですね」


 シェリーは勿論海鮮鍋がメニューにない事は知っているが、寒い外を歩いて来たので、ただ単にお鍋が食べたいと思い付きを口にしたのだ。


「シェリーちゃん。お肉ならあるにゃ」


 わがままを言うシェリーの横でウエイトレスのミーニャがシェリーにメニュー表を渡している。


「夜のメニューも昼のランチぐらい種類を作るべきです」


「お昼のランチはここの職員の為のメニューにゃ。夜はあまり好まれにゃいにゃ」


 ルークが学園に入るまで、日常的に繰り返されていた風景をシェリーの隣に座ったカイルが微笑ましげに見ている。

 そんな何でもない日常風景を壊す声がギルド内に響き渡った。


「ヤバい!ヤバいぞ!『愚者の常闇』近くから見たことのない魔物が溢れ出ている!」


 その言葉を聞いたシェリーはルークがいる場所に何が起こったのかと一瞬焦ったが、その後に首を傾げる。


 その辺りは陽子のダンジョンのテリトリーのはずで、そこから魔物が溢れることなんてありえない。


 もし、あるとすれば、管理する陽子に何かがあったと判断すべきことだった。



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