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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
25章-4 冬期休暇-悪魔という存在

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 シェリーの報告にニールはテーブルに肘をついて、頭を抱え込んでいた。あまりにも非現実的な報告だということだろう。


「空島?アーク族?なんだそれは聞いたことないぞ。それが、あの完全体の悪魔の正体だと?」


 ニールは独り言のようにブツブツと言っている。


「しかし、魔人の力と同等と言われれば納得できなくもない」


 そう結論が出たのか、ニールは顔を上げてシェリーを見る。そして、新しい煙草を取り出し、火をつけ大きく一息吸って、紫煙を吐き出した。


「これは何処かに報告したのか?」


 ニールは冒険者ギルド以外にこの事を言ったのかと確認した。その言葉に対しシェリーはいつも通り淡々と答える。


「依頼を受けたのは冒険者ギルドですので、ここの報告したのですが、報告しなかった方が良かったですか?」


「そうじゃない!国に報告したのかと言うことだ。これは一ギルドの手に余る。国に動いて貰わなければならない。それに王都にいるSランクはカイルとシェリーしか居ない」


 一冒険者として、悪魔と戦えるかといえば、はっきり言って難しいところだ。この王都メイルーンにいるSランクがカイルしかいないとすれば、尚の事。


「ニールさん。私はBランクですが?」


「は?何言っているんだ?実力的にはSランクだ。ルークも学園に入ったことだし、昇級試験を受けてもいいだろう?」


 Bランクのシェリーに対して、ニールはSランクのカイルと組ませる依頼を出していたのは事実だ。それはシェリーがSランクのカイルと組ませても足を引っ張らない実力が在るということを認めていたからだ。

 いや、以前から普通を逸脱した問題を起こしていたシェリーを規格外と認定していただけかもしれない。


「受けませんよ。国にはニールさんから報告してください」


 シェリーは否定の言葉を口にしてから、報告はギルド経由で国にして欲しいと要望する。

 しかし、ニールはシェリーの言葉に首を横に振った。


「はっきり言えば、今現在怪しい箇所が5箇所ある。その内一つは『ギランの豹』が受けた依頼の中に混ぜておいたが、残り4箇所残っているんだ」


 どうやら、今グレイとオルクスが受けている4箇所の依頼の内、1箇所が今回シェリーに依頼した内容に酷似したところのようだ。


 そして、まだ4箇所が残っていると。


「その4箇所の依頼を受けてくれるのなら「断ります!」……そうだろう?」


 シェリーはニールの言葉を遮って依頼を受けることを拒否した。恐らくその4箇所は、ほどほど遠い場所になるのだろう。

 今回依頼したダンジョンは王都に西の森にあるため、日帰りで依頼をこなすことができた。これは、ニールがシェリーの性格を理解しているため、敢えて日帰りできる依頼をカイルに渡したにすぎない。

 では、他の4箇所はグレイやオルクスが行っている場所のように日帰りでは難しいところにあると推測できた。


「だから、急ぎでシェリーから国に上げて欲しい。国王陛下に直接会うルートを持っているのだろう?」


 確かにシェリーは国王であるイーリスクロムと直接会い、用件を伝えることができる。しかし、ギルドという組織があるのであれば、大きな事柄はギルド経由でするべきではないのだろうか。


「この前も会って色々言われたのですから、ニールさんからしてください」


「会っているじゃないか」


 そう言いながら、ニールは紙に何かを書き始め、その紙を封筒に入れ、赤い蝋で封をしてシェリーに差し出す。


「ここが怪しいと思われる場所だ。さっき俺に報告したことと合わせて国王陛下に報告しろ」


 この前会っているというのであれば、問題ないよなと言わんばかりの態度で、シェリーに命じる。そう、頼むのではなく、命じたのだ。そして、最後に一言つ加えた。


「特殊緊急依頼だ」


 と。この言葉はフェクトス総統が使った言葉だったが、内容的には私利私欲が見え隠れした依頼だった。だが、今回は本当に急を要するものだ。

 なんせ、この国内で完全体の悪魔の存在が確認されるかどうかという案件だ。もしまだ、今回の様に不完全な存在であれば、対処もし易いことだろう。


 しかし、その言葉にシェリーは真顔で答える。


「ですから、私はBランクであって、Sランクではありません」


 そもそもこの特殊緊急依頼はSランクしか受けることができない依頼だ。だから、以前フェクトス総統からの依頼は、建前としてSランクであるカイルが受けることになったのだった。


「わかっているが、これは放置していい事柄じゃない。一刻を争うといってもいいほどだ。それに依頼を受けるのはカイルで問題ないだろう?」


 この言い方だと、Sランクのカイルが良いように使われているようにも聞こえてしまう。

 だが、当の本人であるカイルと言えば、シェリーを膝の上に抱えてニコニコと機嫌がよさそうだ。きっとシェリー(つがい)のために、Sランクという記号が使われるのであれば、嬉しいことだと考えているのかもしれなかった。



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