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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
25章-4 冬期休暇-悪魔という存在

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 翌朝、シェリーはルークに3日分の食事とオリバー作回復薬が入った亜空間収納鞄を手渡し、気をつけるように言って送り出した。

 思ったより素直にシェリーがルークを送り出したのは、きっと行き先が陽子のダンジョンだからだろう。しかし、陽子のダンジョンは改装中だったのではないのだろうか。そのことにカイルも疑問を思ったのかシェリーに尋ねた。


「シェリー。そう言えばヨーコのダンジョンって改装すると言っていなかった?」


「そう聞いていますが、陽子さんのダンジョンは広いので、恐らく普通のところは閉じていないでしょう」


 確かに陽子のダンジョンは王都の50キロメル()南にあるが、王都内のシェリーの屋敷もダンジョンに含まれるのだ。それに全貌は計り知れないが、王都の中枢も陽子の言葉からダンジョンに含まれていることが伺える。そして、一般に開放されたダンジョンは物々しい軍事施設のような塔が立ち並ぶ要塞の地下30階層になる。

 王都までの約50キロメル()は含まれていないのだ。その一般に開放されていない場所の改装であれば、ダンジョンを使用する人たちには関係ないことになるのだ。



 そして、今現在シェリーとカイルは冬であるが青々とした木々が茂った森の中を歩いている。急ぐことではないので、二人は視線を辺りに巡らしながら、向かってくる黒い狼の魔物や黒い猿の魔物と数々の黒い魔物を大剣と刀で屠っている。流石、Sランクのカイルと実際はSランクのシェリーだ。余裕で魔物を次々と倒している。


「少し数が多いな」


 カイルが呟く。魔物の数が多く疲れてきたというわけではなく、このダンジョンにしては襲ってくる魔物の数が多いということだ。


 そして、木々の隙間や木の枝の隙間というところから魔物が向かって来ている。そう四方八方攻撃されているのだ。いくら雑魚だから問題ないと言いたいところだが、少々煩わしいくなってきているのだろう。


「ダンジョン全体を凍らせてしまおうか」


 カイルが無茶なことを口走っている。その横でシェリーは白いため息を吐き、黒刀を横に振るい、漆黒の熊型の魔物の胴を切り裂いた。


「これ以上寒くなるのは嫌です」


 何時もより厚手の外套をまとったシェリーがカイルの言葉を否定する。


「でも、このままだとオリバーさんに頼まれた素材が見つけられないよ?」


 先程から二人が周りに目を配らせているのは、どうやらオリバーから何やら素材を取ってくるように言われたようだ。


「帰りはこの道は通れないから、泉につくまでに見つけておかないと、ダンジョンの深部まで行けない」


 カイルがおかしなことを言っている。帰りに今通っている場所が通れないということは一方通行なのだろう。だが、なぜ最後にダンジョンの深部の話になるのだろうか。


「別にオリバーは見つけられなくてもいいと言っていたではないですか」


 シェリーはオリバーからの頼みごとはそこまで真剣に探してはいなかったようだ。


「ただ、気になることはここまで魔物が増えるとスタンピードの予兆かと思ってしまいます。ですが、それもおかしいですね」


「俺もそれは先程から思っていた。深部からの魔物が全く見られない。普通なら表層部には居ない魔物がいてもおかしくはないはずだけど、それが全くみられないよね」


 休む暇もなく魔物が次々と湧いて出てきている状況だが、二人してそれはスタンピードの予兆には見られないという意見で一致している。では、これはやはりニールの依頼にあった黒い泉に原因があるのだろうか。 


 その時シェリーの目の端に気になるモノを視界に捉えた。1メル(メートル)程の黒い球体だ。その球体はただ整然と地面から浮いて静止している。そう以前別の場所で見たモノと酷似しているが、禍々しい気配を放っているわけでもなく、波打っているわけでもない。ただの漆黒の球体だ。


 立ち止まったシェリーの横ではカイルも同じものを目にしていた。この森の中では異質でしかない漆黒の球体だ。


 シェリーはその漆黒の球体を『真理の目』で見た。


【アークのΕΑφΘλの卵】

 アーク族がΕΑφΘλに変異するための揺り籠。それはυ/Ε∑ΔφΑλになるもの。


 肝心なところが文字化けして読めないが、以前よりその正体が明らかになった。

 元々はアーク族であったモノであり、何かに変異するものであるようだ。


 シェリーは向かってくる魔物を切伏せながら、その怪しい黒い球体に近づいていく。


「シェリー。その怪しいモノに近づくのは危険だ」


 カイルがシェリーの行く手を阻むように目の前に立った。だが、シェリーはカイルを避けるように進もうとするが、シェリーの左腕を掴みカイルは引き止める。

 シェリーの腕を掴んでいるカイルを横目にため息を吐きながらシェリーは言った。


「はぁ。カイルさん、アレは西の辺境にある『狂いし陽の森』のダンジョンにあった不可解な黒い球体と同じものです。焼き払うだけですよ」


 シェリーはそう言ってカイルの掴んでいる手を払い退けるのだった。



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