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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
25章-4 冬期休暇-悪魔という存在

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「女神ナディアからの啓示であれば、行った方が良いだろう」


 いつもより遅い朝食を食べに地下から出てきたオリバーもシェリーと同意見のようだ。昨日女神ナディアが顕れたのは、シェリーに催促しに来たのかと思えば、危機感をあおり、グレイを通じて女神ナディアが用意した依頼に行くように促したかったのだろう。


「しかし、朝から服ごときで騒ぎ立てることではなかろう」


 服?どういう事だろうか。オリバーの視線は、エプロンを外し黒のスーツ姿になっているシェリーを見て、その周りの者たちに呆れた視線を向けている。

 スーツ。これはシェリーのクローゼットの奥に仕舞われていたものだ。それも佐々木のお気に入りの黒のスーツ。


「本当に。おかげで朝食の用意が遅くなってしまった」


 シェリーはオリバーの言葉を肯定するように頷いている。


「いや、だってさぁ。いつの間にか、カイルとグレイの服が増えてるっておかしいよな」


 オルクスが文句を言っているが、言葉をそのまま受け取るとおかしな意味に捉えかねない。

 恐らくだが、昨日カイルとグレイがシェリーの服を大量に買っていた事を言っているのだろう。カイルを示す色の洋服とグレイの色を示す洋服が増えているということだ。


「俺たちが動けない間、デートしていたらしいじゃないか」


 リオンがイライラとしながら言っている。もしかして朝から二人の機嫌が悪いのは昨日の事を引きずっていたわけではなく、今朝シェリーのクローゼットを開ければ、見慣れない洋服が並んでおり、それをカイルとグレイに問い詰めた結果、どうも3人でデートをしていたことが発覚したということだった。

 だから、朝からオルクスとリオンの機嫌が悪かったのだ。


 そんな様子の二人にオリバーはバカバカしいと言わんばかりに一瞥し、食後の珈琲を持って立ち上がった。いや、実際に口にした。


「本当に(つがい)という者は愚かだな」


 これは己の行いをあざ笑う言葉なのかもしれない。その言葉を残し、オリバーはダイニングを出ていった。


「へぇ。ナディア様の啓示なんだ」


 ルークはというと、最初に食べ始めたので既にルークの前の食器は片付けられ、シェリーとオリバーがこの依頼は神からの啓示だと言った依頼書を興味津々な目をして見ている。


「僕も付いていったら駄目なのかな?」


 ルークは興味本位で言ってみる。もしかしたら、その神の啓示の恩恵に与ることができるかもしれないと思っているのだろう。しかし、そのルークの思惑をカイルが否定した。


「それは厳しいと思う。ここは半魚人の巣を通り抜けた先にあるから、水中戦になるだろうし、ここは火山地帯の上、火蜥蜴(リザードマン)の巣窟だから、熱耐性と毒の耐性の併用と身体強化が使えないと厳しいかな」


「そっかー。水中戦はしたことがないから、諦める」

「え?俺、そんなの無理だと思う」


 ルークとグレイの声が重なった。ルークは悔しそうに諦めると言っているのに対して、グレイはというと青い顔をして無理だと言っている。依頼書には地名は書いてあっても、そこがどの様な場所か記載がないのだ。

 この国に長年住んでいれば、その地がどの様なところか自然と耳に入ってくる。だから、依頼書には場所と目的の依頼しか書かれていない。そして、ニールにとって当たり前のことだから、その土地がどのようなところかの説明はなかったのだ。

 まだ、半年ほどしかこの国にいないグレイとオルクスではその場所がどれ程危険なところか知ることができなかった。


「カイル。じゃ『クウノミ』という物があるダンジョンはどうなんだ?」


 これは先程ルークが言っていたところだ。


「ああ、ここって方向感覚がなくなる森のダンジョンだね。入ったら、さまよって出てこれないと有名」


「それでは、シェリーはどうやってダンジョンを攻略したんだ?」


 方向感覚を失えばダンジョンの攻略どころではなくなると、リオンがシェリーに疑問を投げかけた。


 その疑問の答えに8つの目が興味津々とシェリーに向けられる。それはグレイとオルクス、リオン、そして最後にルークだ。カイルはというと、いつも通りニコニコとした笑顔を浮かべている。


「目の前の道を進めばいいだけです」


 シェリーは端的に答えたが、そもそも森の中で道というものは存在するのだろうか。


「ダンジョンというものはそういうモノだからね。決められた攻略方法を見つければ簡単に最深部につけるよ。ただ、今回はスタンピードの予兆の疑い調査だから、迷って正解だと思うよ」


 シェリーの言葉を補うようにカイルが言う。決められた攻略方法を探し出すというのは、方向感覚失うよりもオルクスにとって難題なのではないのだろうか。


 その時、玄関からドアノッカーの甲高い音が鳴り響いてきた。人の家を訪問するには少々早すぎる時間だ。

 いったい誰が来たのだろうかと、どうでもいい話から抜け出す口実として、シェリーは腰を上げるのだった。



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