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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
25章-4 冬期休暇-悪魔という存在

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「説明をしてもらおうか。カイル」


 カイルを睨みつけながら、オルクスが言う。それに対して、カイルは苦笑いを浮かべるだけだ。カイルからすれば魔が差したという感じだったのだろう。目の前でユーフィアとクストの姿を見て、羨ましかったという本音。シェリーがツガイを否定し続けているという現実。このままだと、シェリーは一人突っ走ってしまうという不安感。シェリー(つがい)を失ってしまうかもしれないという焦燥感。

 その全てが合わさり、カイルに行動させた···とカイル自身は考えていた。だが、そこに白き神の神威が絡んできているとなれば、苦笑いを浮かべるしかないのだろう。自分自身で行動したと思っていたものが、神の威だったとは。


「なぜ、答えないのですか?」


 スーウェンもカイルを責めるような物言いをする。それは何も答えないカイルに苛立ちもするだろう。


「いい加減にしろ!言うべきことがあるだろ!カイル」


 リオンが声を荒らげ苛立ちを顕わにする。その声にシェリーは顔をしかめ、ため息を吐く。やはり、一食だけでは心のわだかまりというものは浄化しきれないのかと。

 そこに冷静な声が割り込んでくる。


「なぁ、またオリバーさんに怒られるから、少し落ち着いたらどうだ?」


 内心モヤモヤとしつつも、神という力には抗えないことを、よく知っているグレイが3人に言葉を掛ける。ここの家主の機嫌を損ねるのはよくないと。

 その言葉に3人は姿勢を正す。



 実はオリバーが地下に戻っていく際に一言ボソリと漏らしたのだ。


「屋敷内でこれ以上騒ごうものなら、空間結界を張って出入りが不可能にするからな」


 と言ったのだ。その姿は麗しの魔導師と言われたグローリア国の魔導師長そのものだ。そこから放たれる威圧は膝を屈したいと思わせるほどのものだった。


 この言葉は屋敷と外を隔離するという意味だろうか。オリバーの言葉にシェリーは目をキラキラさせる。


「それは彼らを亜空間に閉じ込めるってこと?そんなことができるなら、初めからしてもらえばよかった」


 いや、シェリーのツガイである彼らを隔離するという意味のようだ。オリバーの言葉を正確に読み取ったシェリーのツガイ嫌いは相当のようだ。


「色々面倒であるから、普通はせぬ」


 嬉しそうに言うシェリーを一瞥したオリバーはため息を吐きながら、地下に戻って行ったのだ。



 そのような事をオリバーから言われたので、カイルに不満を抱きながらも、殴りかかりたいのを押さえているのだ。


「確かに色々ムカつくんだけど、心の収めようがないのだけど····はぁ、シェリーは番の儀式は嫌だの一点張りだし···」


 グレイは何とか自分の心の内で折り合いをつけようと努力をしてみたけれど、上手く行かないと項垂れている。


 はっきり言えば、シェリーが彼らを受け入れれば、全て解決することなのだが、シェリーのツガイ嫌いは幼少の頃に植え込まれたものの故、根が深くちょっとやそっとでは解決しないものだ。そして、カイルの誤ち。

 シェリーが素直に首を縦に振ることはないのは明白だ。


「ナディア様。俺はどうすればいいのだろう」


 グレイは思わず、己が崇める神の名を口ずさんでしまった。人はどうしようもないことにぶつかってしまうと、神頼みをしてしまうものだ。

 グレイも同じく己の心のわだかまりと折り合いが付けられずに、女神ナディアの名を呼んでしまったのだ。


『そうねー。シェリーちゃんの頑固なところも困ったものね』


 グレイの隣の席に突如として赤髪の美しい女性が座っていた。それも今までそこにずっといたように、足を組んで椅子に腰掛け、テーブルに肘を付き、その手の上に頬を乗せ、困ったわねという表情をしている女神ナディアが顕れたのだ。


 それには思わずグレイは席を立ち、隣りにいたカイルを盾にするように、女神ナディアと距離をとる。


『でも、一番いけ好かないのは、アイツね。また、勝手に動いて干渉し過ぎよ』


 アイツというのはきっと白き神のことだろう。その白き神に対して干渉し過ぎだと言っているが、女神ナディアにもそれは言えるのではないのだろうか。

 そして、女神ナディアは全てのモノを魅了する笑みを浮かべる。その笑みにシェリーは嫌な予感がし、睨むような視線を女神ナディアに向ける。


『ふふふっ。私が絆を結んであげましょうか?』

「しないでください」


 女神ナディアの言葉に直ぐ様、返答するシェリーは神々に振り回されるのは御免だという雰囲気を纏わしている。


『あら、あら、あら。でも、必要なことでしょ?』


 必要か必要でないかと問われれば、シェリー的には必要では無いが、世界の常識であれば、それは必要なことだろう。


「必要ありません!」


 シェリーはきっぱりと女神ナディアの提案を断ったのだった。



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