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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
25章-4 冬期休暇-悪魔という存在

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 シェリーは身体を反転させ、先程のニコニコとした笑顔から、いつも通りの無表情に変わる。そして、キッチンの入り口にいるスーウェンとリオンを見て一言述べた。


「これ以上夕食を作る邪魔をしないでください」


 それには二人共、首を縦に振るしかなかった。シェリーに睨まれた二人は内心はイライラとしながら、表面上は何も無かったように装い、既にダイニングテーブルの席についているグレイの元に行く。

 そのグレイはというとテーブルに頬をくっつけて、心ここにあらずという感じで、先程の騒ぎにも反応していなかった。

 グレイの中でも今回のことは納得できず、グルグルと同じ思考が回っているのだった。どうすれば、シェリーは首を縦に振ってくれるだろうかと。


 そんなグレイの前に二人は席につく。


「グレイ。貴方がいながら、なぜ、カイルの軽挙を許したのですか?」


 スーウェンの言葉にグレイは視線だけを二人に向ける。どうやら怒りの矛先をグレイに向けることにしたようだ。


「そうだよな。グレイはシェリーの一緒にいたのだろう?」


 グレイの行動を確信をもって尋ねるリオン。そこに復活したオルクスが交じる。不貞腐れていると言っていいグレイの肩を掴んで、その目を覗き込むように首を傾けるオルクス。その目は答えしだいでは、お前を殺すぞと言わんばかりに殺気が浮かんでいる。


「なぁ、なんであんな事になっているのか、説明をしてもらおうか」


 3対1と言っていい構図であり、グレイはシェリーのツガイたちの中で一番弱い存在だ。そのグレイに圧をかけるように3人が責める。お前は何をしていたのだと。


 3人から圧を掛けられているグレイは肩を掴んでいるオルクスの手を払い、身体を起こして、3人を見る。3人から責められているのに動じてはいない。

 そして、呆れたような表情をして言う。


「じゃ、お前たちはその間、何をしていたんだ?」


 最もな言葉だ。己だけを責めるのは間違っているとグレイは堂々と言い返したのだ。


「お前たちは魔眼に精神支配されて、そこから動けなくなっていただけだろう?俺とカイルはアレぐらいの魔眼の力なんて、何も影響を受けなかったぞ」


 そもそも3人は動くことすらできなかった間に起こったことを、己が悪いと言わんばかりに責めるのであれば、3人の無力さを呪うべきたと言った。


 その言葉に3人は逆切れをする。正論は正論だ。しかし、時にはその正論は人を苛立たせることもある。

 殺気が膨れあがった3人の頭にバケツを引っくり返したような水が降り注ぐ。


「目を覚ました早々、騒がしい!」


 ダイニングの入り口には金髪の美しい青年が、とてもとても不機嫌そうに立っている。その目の下のクマは、いつもより濃い色をしているのは気の所為だろうか。

 いや、いつもは朝食か夕食のどちらかを共に食事をしているオリバーが朝食時も夕食時にも顔を出すのは珍しいことだ。


 これは屋敷の結界内で膨れ上がる怒気や殺気や魔力がオリバーの癇に障り、文句を言いに来たのだろう。


「もう少し静かにできないのかね!」


 水が滴り落ちる3人に騒がしい静かにしろと言葉にしているオリバーだが、屋敷中に響き渡る声を出しているわけではなかった。やはり、彼らの怒気や殺気や魔力がうざかったようだ。


「オリバー。今日はユニコーンのスープなのだけど、一緒に食べる?それとも後で食べる?」


 機嫌の悪いオリバーに対しシェリーはいつも通り淡々と今日の夕食はどうするかと尋ねる。何時もは夜食かと言う時間帯に夕食を一人取っているオリバーだ。起きてきたのなら、一緒食べるのかと聞くシェリーは焼いた肉が山盛りになっている皿を両手に持っている。その肉は何の肉なのだろうか。


「スープだけ、いただこうか」


 寝起きにその大量の肉を見せられても、食べられないという答えなのだろう。


「ユニコーンは良い。魔力が豊富で食べ甲斐がある」


 違った。ユニコーンの肉が持つ魔力が魅力的なようだ。その答えを聞いたシェリーは一つ頷き、肉が山盛りになった皿をダイニングテーブルがある方に持って行く。

 そして、水も滴るいい男となった3人に冷たい視線を向けて言った。


「濡れたままで席につかないでくださいね。あと、椅子と床は各自で拭いてください」


 王族であるリオンも族長の息子であるスーウェンもここにいるのであれば、その立場など関係がないと言う風にシェリーは自分の後始末は自分でするように言う。できないのであれば、ここには居るなとも聞こえてしまう。


 そのシェリーの言葉に3人は素直に従ってダイニングから去っていく。従わないと、夕食にありつけるかどうかという選択肢を彼らに突きつけられるからだ。だから、彼らは足早にその場を去っていった。



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