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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
25章-3 冬期休暇-火種は既に落とされていた

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「クロードさんのどうでもいいことで機嫌が悪いのは放置しておいて」


「おい!」


 シェリーはクロードの珈琲へのこだわりをぶった切って話を始めた。


「まずは、エルフ族の奴隷がどれ程、この国に侵入しているかの数の把握です。帝国との国境には山脈が連なっているため、物理的に送りつける事ができず、転移ゲートという物を使って送り込んできたと考えられます」


「はぁ、前も言ったけど、この国でなくてもいいよね」


 イーリスクロムはため息を吐きながら愚痴がこぼれ出ている。このシーラン王国が標的になっているその理由は、やはり獣人の国ということと、国の守護者というモノが存在しないからだろう。


「ふん!俺が作った対帝国を見据えた師団を解体しておいてよく言う」


「僕は存在そのものがある事を知らなかったからね」


 不機嫌なまま言い放つクロードに対し、イーリスクロムは知らないことをどうこう言われても、どうしようもないことだと開き直っている。確かに、存在を知らされておらず、軍部と騎士団の上層部が勝手に決断したことに文句を言われても困るのいうのが心情というものである。


「お前は、知らなかったといえば済む立場か?」


 クロードの厳しい視線と言葉に何故か問われていない、クストと第5師団長の背筋が伸びる。


「知らなかったといえば言い逃れられるのは腐った政治家ぐらいだ。『記憶にございません』ってな。この感じだと百獣も存在しないのか?」


 クロードの言葉にいつも何を考えているかわからない笑顔を浮かべたイーリスクロムの表情が固まった。痛いところを突かれたという感じだろうか。


「『百獣』とはなんですか?初めて耳にする言葉ですが」


 クストが聞いたことがない言葉だとクロードに尋ねる。第6師団長の地位に20年ほどいるクストでも聞いたことがないと。いや、一師団長ごときに開示される情報など限られたものにすぎない。


「簡単に言えば百の種族で構成された王家の情報屋だな」


 百の種族というのは、各地から情報を集めるに際し、同じ種族であると種族間の折り合いというものが存在するため、そして種族に寄っては得手不得手というものも存在する。それを補うために百という種族の者達に王家の情報収集を行わせていたのだろう。

 国内では百獣が、国外では第0師団が情報収集を行い、シーラン王国の情勢の把握をしていた。だが、現在はその二つとも存在していない。

 それは帝国に隙を突かれることになるのだ。


「百獣の代わりはいる」


 イーリスクロムはただそれだけを答えた。代わり。その代わりがいても、この十数年の国内で起こった帝国が関与する事件を見抜くことができなかった。ならば、それは居ても機能してないということだ。


 イーリスクロムの言葉にクロードは馬鹿にしたように鼻を鳴らす。


「ふん!それはそこにいる小娘のような者のことを言っているのか?」


 クロードは小娘と言って、壁際で控えているセーラを指し示した。指を差されたセーラは肩をビクッと揺らし、イーリスクロムの方にチラチラと視線を向けている。


「金狐の奴を屋敷内に入れるなんて、俺が当主の頃は考えられないことだったなぁ」


 そう言いながら、今度はクストに視線を向けるクロード。

 金狐と種族を呼び捨てにしているということは、クロードは嫌なことでも王家に何かされたのだろうか。


「幻影使いの金狐。人を騙すことが得意で性根が腐った奴ら。まともに応えたら痛い目を見るのはこっちの方だ。昔はナヴァル公爵なんてものを背負わせられたから、頭を下げていたが、所詮貴様らの人徳などその程度のものだったということだな」


 心底馬鹿にしたようにクロードはイーリスクロムに向かって言った。百獣が機能していないということは、誰も王家に対して仕える意味を見いだせなかったと。クロードは皮肉に口元を歪めて笑った。

 相変わらずクロードの考えは歪んでいる。公爵であったから、仕方がなく王に敬意を払っていたと。そうでなかったら、王家などとっくに見限っていたと含ませているようだ。


「百獣もおらず第0師団も解体している。この国の目と耳となるものが、王族しか居ない。無理があるとわかっていてやっているのか?確かヴァレーニの子供は13人だったか?いや、お前は4番目の子だったな。9人で賄えることか?」


 先程からのクロードの言葉にイーリスクロムは苦虫を噛み締めたような顔をしている。

 しかし、クロードの言葉からイーリスクロムは本来であれば王に立つ人物ではなかったと言っているようだ。上の3人が存在しなくなったために、イーリスクロムが国王に立つことになったと。


 それはイーリスクロムも頼る者が存在せずに、一族の者でまかない、王城内と軍部内のことは自ら姿を変え、情報収集を行っていたということなのだろう。



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