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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
25章-3 冬期休暇-火種は既に落とされていた

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「【全ては白き神の手の上で躍らされている】この言葉を残した者はあの黒髪のエルフだったかな?」


 カイルは感情を押し殺した様な声で言った。まさか己がその言葉を実感する時が来るとは思っていなかったのだろう。

 シェリーはカイルの言葉に頷いた。


「でも···それでも、神の力が働いたからと言って、許されることじゃない」


 シェリーの横でグレイが拗ねるように言う。シェリーの言っている意味は理解できても、納得できることではないのだろう。


「シェリー、俺も「嫌ですよ」···」


 グレイが言おうとしたことをシェリーは最後まで聞かずに、否定する。シェリーがグレイの希望を叶えれば、なし崩しに他の3人もということになってしまうのは目に見えている。だから、シェリーはこれ以上面倒なことは抱えたくないと頑なに否定した。


「ズルい。ズルい。ズルい」


 グレイはシェリーに抱きつきながら、カイルを睨み、悪態をついている。そんなグレイをシェリーは鬱陶しいと言わんばかりに眉を潜め、カイルはニコニコした笑顔でシェリーの手を握っているが、まとう雰囲気は人でも殺しに行くような感じだ。


 そこにユーフィアとクストが戻ってきた。応接室に入れば、機嫌が悪そうなシェリーの両脇に、更に機嫌の悪そうなカイルとグレイがいるのだ。若干部屋に入るのに躊躇してしまう光景だった。


「シェリーさん。何かありましたか?」


 ユーフィアは恐る恐るシェリーに尋ねる。尋ねられたシェリーは機嫌が悪そうな表情のまま首を横に振り


「何もないです」


 と答える。何も無かったわけではないが、あったことをユーフィアに言っても仕方がないことだ。

 何も無いというシェリーの向かい側に腰を下ろしたユーフィアは、先程遭ったことを話しだした。


「シェリーさんがおっしゃっていたとおり、次元の悪魔は動かない状態でした」


 マリアの報告では結界が壊れたと言っていたが、ユーフィアが仕込んでいた制御石を解する機能は役目を果たしていたらしい。


「ですので、ゆっくりを観察をすることができたのですが、確かに背中の背骨の当たりに制御石が埋め込まれていました。2体は魔道具の実験に使ったのですが、残りの一体はその制御石を外してみることにしたのです」


 グレイが見ていた光景はユーフィアが次元の悪魔を観察し終わったあとの一体目を撃破したときだったようだ。しかし、動かないのであれば、そのまま始末してしまった方がよかったと思うのだが、ユーフィアは敢えて取り外すことにしたようだ。


「元々意思の疎通が取れないので、何とも言えませんが凶暴化しているように感じました。おそらく制御石がなくなり、神経毒···寄生虫?が暴走したと思われます」


 ユーフィアが寄生虫と言い換えたモノは、以前ハリガネムシに例えていたモノのことだ。脳を支配し身体を操る得体の知れない何か。頭部がない次元の悪魔は背中にある中枢神経を支配していたのだろう。


「はぁ、こんなことなら武器の性能テストに2体も使わなければよかったわ。1体だけじゃ正しいかどうかわからないもの」


 ユーフィアは研究者として今回のことを見ており、思ってもみない結果がでたので、もう少し検証したいという感じなのだろう。そして、ユーフィアの隣りにいるクストはというと、機嫌が悪そうな雰囲気をまとっていた。


 やはりユーフィアがいるこのナヴァル家の中で外部のモノが侵入してきたことが、機嫌を損ねる原因だったのだろう。


「おい、少し前に帝国に行ったと言っていたな」


 そのクストがシェリーに聞いてきた。少し前ではないが、夏に弾丸旅行のような計画を立てられ帝国に入ったことはある。


「行きましたが、それがなにか?」


「こんなに次元の悪魔を送りつけるほど、帝国内は次元の悪魔で満たされていたのか?」


 クストの言い分だと、帝国内に次元の悪魔がひしめいているような言い方だ。それだとそれは人が住めない国となっているだろう。


「そんなことになっていたら帝国から人々が逃げ出していると思います」


 当たり前のことだ。それは人としての生活を脅かされていることに等しい。


「恐らくそうなっているのは、グローリア国の方ではないのですか?」


 もう随分前からその地を踏んでいない魔導師の国。今の現状が一番わからない国だ。


「以前マルス帝国に行く際にラース公国とグローリア国の国境付近を通ったときに、奴隷を連行しているマルス帝国の軍部と接触したことがあったのです。その時は何故国境沿いを移動しているのか分からなかったのですが、グローリア国の内部を通ることに不都合があったのではないのでしょうか?」


 確かに彼らが国境沿いを移動していることに疑問があった。なぜなら、グローリア国の王都からマルス帝国の帝都は西に真っ直ぐ進めばいいだけなのだ。だから、わざわざ国境沿いを通る意味はない。


 シェリーのその言葉にクストはなんとも言えない唸り声をあげるのだった。



補足:奴隷と軍部が出てくるのは2章の話に出てきます。



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