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番とは呪いだと思いませんか―聖女だからと言ってツガイが五人も必要なのでしょうか―  作者: 白雲八鈴
25章-3 冬期休暇-火種は既に落とされていた

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「なんですか。これは····」


 死んだ魚の目をしたシェリーは言葉を漏らす。シェリーの手のひらの上には赤い個包装されたキット○ットが乗せられていた。予想はできるが、シェリーは念のため聞いてみた。


「半分にして食べさせて欲しいな」


 ニコニコとした笑顏のカイルが答える。カイルも先程のユーフィアとクストの姿が羨ましかったのだ。だが、シェリーは死んだ魚の目をカイルに向けて一言返す。


「嫌です」


 あれは何もわかっていないユーフィアが素で行ったことが、良いのであって、強要されてすることではないだろう。だが、カイルもシェリーのそんな言葉如きでは諦めなかった。シェリーが番に対して否定的な態度を取るのは当たり前だと認識している。

 ならばと、カイルは一枚の紙をシェリーの死んだ魚の目の前に掲げた。

 するとどうだろう。シェリーの目がキラキラと輝き出した。


「これ欲しい?」


「欲しいです」


 先程の強固なシェリーの態度が一転して、素直になった。勿論シェリーの心を動かすことができる存在といえばルークだけだ。だから、カイルは以前使った同じ手をシェリーに対して使ったのだ。それは何か。


「ルーちゃん。かっこいいわ。これいつの写真なの?」


 シェリーの目の前に掲げられた写真はルークの騎士養成学園での訓練の姿だった。それは勿論外部に流出することはない写真なのだが、カイルは騎士団広報のサリーと取引して横流しをしてもらっているのだ。それは勿論ここぞというときに、シェリーの気を引くためだ。


「休みに入る前の実力テストの時の写真だね」


 どうやら、最近の写真のようだ。いったいどの様な手を使ってサリーと交渉して手に入れたのだろう。


「この写真が欲しかったら、食べさせてくれる?」


「喜んで!」


 どこぞの飲み屋の店員のような返事をシェリーは笑顔でカイルの返した。シェリーのルークに関する事になるとタガが外れるれたように甘々になるのも問題だが、そこに付け入るカイルもカイルだ。しかし、そこまでしてでも、シェリーの手から食べたかったのだろう。そして、ユーフィアとクストの姿が羨ましかったのだろう。


 シェリーは赤い袋の上から縦に中身をパキリと割り、袋を開け中身を一つ取り出す。黒いチョコレートにコーティングされたお菓子をカイルに差し出すシェリー。

 第三者から見てみれば、恋人がいちゃついているようにしか見えないが、互いの想いは一方通行であった。カイルは勿論シェリーしか見ていないが、シェリーの視線はカイルの手にある写真に釘付けである。


 差し出された菓子をパクリと食べて満足しているカイルにシェリーは手を差し出す。カイルの要望を満たしたのだから、早くルークが写った写真を渡して欲しいということだ。


 しかし、カイルは差し出されなかった手に持ってた赤い小袋の中身を取り出し、シェリーの口に押し付ける。その行動にシェリーは眉を潜めた。

 何故、写真をくれないのかという視線だ。


「シェリー。口を開けて」


 確かにユーフィアはクストに渡したものの半分を自分の口に運んでいた。この要望も応えないと貰えないのかと、シェリーは渋々口を開け、キット○ットを一口分をサクリと噛み切る。


「全部」


 もぐもぐと口を動かしながら、目が据わってきている。全部食べなくてもいいのではないのか。そう思っているシェリーにカイルは食べかけの菓子を唇に押し付けてくる。


「シェリー。あ〜ん」


 目の前のカイルにそんなに同じものを分け合って食べたいのかという冷たい視線を投げかけながら、ルークの写真の為なら仕方がないという感じで口を開けるシェリー。


 シェリーが全部食べたことに満足そうな顔をしているカイルにシェリーは出していた手を更に突きつける。しかし、シェリーは機嫌が悪いものの、カイルから見れば愛しい番とのひと時は何事にも変えられない。


 そのカイルは何かを呟いた。だが、小声過ぎてシェリーには聞き取ることができず、写真を早くくれないことに段々と機嫌の悪さが更に降下していく。


「シェリー。チョコレートが唇に付いちゃったね」


 カイルの言葉に、それはカイルが唇にチョコレートを押し付けてきたので、付いたのはカイルの所為だと、手の甲で唇を拭おうとシェリーが手を引っ込めれば、その手を取られ更にカイルとの距離が縮まる。

 いやもう隙間などなくシェリーはカイルに抱きかかえられている状態になり、カイルから口づけをされていた。


 しかし、それは普通の口づけではなく、カイルの魔力の塊がシェリーの中に押し入ってくるような、今までされたことが無い身体の奥から熱を帯びるような口づけだった。




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