第八十三話『イオラにゃんはフィーネにゃんが大好きにゃん』
第八十三話『イオラにゃんはフィーネにゃんが大好きにゃん』
「お姉さま。
あなたは仮にも天空の村の守護神。大精霊のひとりなのですよ。
そんな子供じみた悪だくみなど、もってのほかです。
ただちにお忘れなさいますよう、慎んで進言させて頂きます」
「なりたくてなった立場じゃないわ。
フィーネちゃんだって知っているでしょ?」
「理由はどうであれ、実際にそのお立場なのですから。
そこはちゃんとわきまえて頂かないと」
「いいじゃないの。
そんな片っ苦しいことをいわなくったって。
そんな杓子定規な態度をとらなくったって。
これはほんのお茶目。そうよ。お茶目にすぎないわ」
「そうはいきません。わたくしの目の黒いうちは」
「あら。青い目よ、あなたって」
「言葉のあやです。
とにかく是が非でも、やめて頂きます。
どうしてもイヤとおっしゃるのであれば、仕方がありません。
強行手段に打って出ますので、そのおつもりで」
「強行手段?」
「怖れ多くも、お姉さまを捕える、ということです」
「フィーネちゃんがワタシを?
でもどうやって?」
「大昔にご体験なされた、良ぉくご存知の方法で」
「ま、まさか!」
「ええ。そのまさかです。わたくしの右手をご覧ください」
ちゃらりん。
「岩戸のカギ……」
がっしゃあぁん!
「でもって気がついたら、久し振りに『封印』な目に。
懐かしの『岩屋の牢獄』に閉じ込められていたわ。
『後輩にしてやられるなんて。情けないったらありゃしない』
そんな無念の思いから、
ついつい叫び声になって、あんなセリフを吐いちゃったの」
「でもにゃ。
ウチらにカギを渡してくれたのもフィーネ先生にゃんよ」
「そうね。なんかおかしな話なのわん」
「きっと端っからオーブンの件が終わり次第、渡すつもりでいたのね。
先輩を閉じ込めて、『けけけ』とか笑うキャラじゃないもの。
むしろ、どうやったら自然な形でワタシを解き放てるか、
思案に明け暮れたんじゃないかしら」
「そういえば、
『立場上、出来ないことになっていまして』とかいっていたわん。
ねぇ、ミアン」
「うんにゃ。ウチも聴いたのにゃよ」
「大精霊を『岩屋の牢獄』に封じ込めるっていうのはね。
封じ込めた側にしても、それだけ重大な責務を負っているってわけ。
『ことが終わりました。はい、釈放です』じゃ済まされないのよ。
だからミーナちゃんたちにお願いしたの。
ワタシの命の欠片を分け与えられた者たちが懇願したとなれば、
釈放するのに十分な理由となるもの」
「ミーにゃん。あん時ウチら、懇願したっけ?」
「ううん。というか、逆じゃない?
連れて帰って欲しい、って懇願された気がするわん」
「実際はどうでもいいの。体裁さえ整えば。
『フィーネちゃんとミーナちゃんたちが会って、
ワタシを連れて帰ることが決まった』
これさえ果たせればOK。
どういう経緯でそうなったかなんて一切お構いなし。
どういい繕うが自由。、
誰にもうるさいことをいわれずに済むの」
「なぁんかとぉっても面倒くさいのわぁん」
「ネコにはとてもついていけそうににゃいのにゃあ」
「ワタシもよ。でもしょうがないの。
体裁を重んじるのは、大精霊たる者の常だから。
とはいうものの……ふふっ。
フィーネちゃんが腕を組んで考え込むさまが目に見えるようだわ。
律儀でお堅い性格の反面、やさしくて思いやり深い娘だから」
「イオラにゃんがフィーネにゃんのところへちょくちょく遊びにいく理由が、
判った気がするのにゃん」
「妹分と呼んでいるのもね。大大大好きだからなのわん」
「なぁんか気恥ずかしい話になっちゃったわね。
さてと。こうやって自由になれたことだし、
どんな悪さで逆襲して差し上げたら、妹は喜んでくれるのかしら」
「イオラにゃん。目つきが怪しいのにゃよ」
「本当本当。ぎらぎらさせているのわん」
「なぁんてね。ふふっ。冗談よ。冗談。
あら。もう夕暮れ近くなったみたいね。
そろそろ日課のパトロールにでも行きますか。
今日は……そうね。大霊蛇の姿にでもなろうかしら」
「にゃら、ウチも。頭に乗っけてにゃ」
「なら、アタシも」
「はいはい。一緒に行きましょうね。
……ということで」
ぐるぐるぐるぐるぐるぅっ!
「にゃはっ。
相も変わらず、とぐろを巻いての登場にゃん」
「あのタレ目って、とおっても可愛いのわん。好感がもてるのわん。
……でもねぇ」
「鳴き声というか、喋り声がにゃあ。
あと、口を開けた時に覗ける牙もにゃんかも」
「アタシの創造主ながら、おっそろしいかぎりなのわぁん。
ねぇ、イオラ。
お願いだから、口は閉じたままにしておいてくれないかなぁ」
「しゃああぁぁっ!」




