第八十二話『「やれなかった」から「やらなかった」のにゃん』
第八十二話『「やれなかった」から「やらなかった」のにゃん』
「それで一目散に駆けつけてきてくれたのね」
「一目散?
ねぇ、ミアン。あれって一目散なのわん?」
「何分くつろいでいたからにゃあ。
まっ。気持ちは一目散にゃったかもしれにゃい」
「そうそう。気持ちはね。ええと、確か……」
「ちぃとばかし、おネムしたあとにゃ。
事情を聴いていたのにゃろうにゃあ。
レミロにゃんが例の『観測銃オリオン』でウチらを吸い取ってにゃ。
保守空間まで転送してくれたのにゃん」
「三にんで、べちゃくちゃ、お喋り。結構盛り上がったのわん」
「あらまっ。ずいぶんとのんびりしていたのねぇ」
「当ったり前にゃん。
大精霊らの手で、とっ捕まっているってことはにゃ」
「ある意味、一番安全な場所に居るってことだもん。
違うわん?」
「うぅぅん。違わなくはないけどぉ。
それって、おかしくないかしら?」
「大精霊が仲間の大精霊にとっ捕まった時点で、
既におかしいのにゃん」
「そうね。それには『異議なし』。反論のしようがないわ。
さてと。のんびりの一件はこれくらいにして。
ミアンちゃん。続きをどうぞ」
「うんにゃ。
お喋りが一段落したあとにゃ。
天外魔境から送られてきた映像をターゲットに、
レミロにゃんはまたまた銃で転送してくれたのにゃん」
「それが『岩屋の牢獄』だったのわん」
「岩壁にずらりと扉が並んでいるのにゃん。
にゃもんで、『どこに居るのにゃん?』と探そうとしたらにゃ」
「大声で、『出せぇっ!』って喚き散らしているのが聞こえてきたのわん」
「でまぁ『ここら辺りかも』と予想してにゃ。
扉にカギを差し込んでみたら」
「ばっちし、だったのわん。
岩戸が開いて、アタシたちは抱き殺されかかった、
といった次第なのわん」
「まぁ。ふふふっ」
「にゃははっ」
「きゃははっ……って、笑いごとじゃないわん!
帰ってからも、ぎゅうっ、って、やられたじゃない。
助けにいってあげたのに、
なんでこんな命がけの目に遭わされなきゃならないのわん?」
「ミーにゃんミーにゃん。そんにゃにカリカリしにゃいで。
二度あることは三度あるのにゃ。
むしろ、
『今度はいつかにゃあ』にゃあんて期待して待っていようにゃん」
「ミアンちゃんったらぁ。
不思議ね。時々、本当の神さまに思えてくることがあるわ」
「アタシも」
「恥を忍んで打ち明け話をするとね」
『ふむふむ』
「ミーナちゃんたちを驚かす現われ方をたくらんでいたの。
どろどろとした身体でオーブンの中に隠れていてね。
誰かがドアを開けた瞬間、
『うらめしやぁ!』とかいって、
べちゃあ、とみんなにぶっかけるつもりだったのよ」
「イオラにゃん。それって実際に起こったのにゃん」
「おやまぁ」
「さすがに、『うらめしやぁ!』はなかったけどね。
友だちのひとりがどろどろの犠牲になったわん」
「あら。楽しそう」
「にはとても見えにゃかったにゃあ」
「うん。どっちかっていうと、しかめっ面だったのわん」
「やるほうは面白くても、やられたほうはたまらない……か。
誰かが面白い、と思った分だけ、誰かはつまらない、と感じている。
『感情』という要素さえ、平等を常に追い求める。
これって『永遠不変の法則』かも。
だったら……、やるほうに徹したいわね。
そう願うのは私だけではないはずよ。
ひょっとしたら、みんながそうかも。
とすればよ。
これもまた『永遠不変の法則』じゃないかしら」
「でもにゃ。イオラにゃんはやらにゃかった」
「ミアン。『やれなかった』が正しいと思うわん」
「どっちでもいいじゃない、ミーナちゃん。
『やらなかった』のは間違いなんだから」
「そうはいかないのわん。
『やろうとした』のを、
自分で抑えたのと、
誰か、もしくは、なにかのせいで、抑えたのとでは雲泥の差なのわん」
「ミーナちゃん、同じことよ。少なくともワタシにとってはね。
『自分を抑える』なんて選択肢は端っから皆無だったもの。
『やれなかった』から『やらなかった』しかなかった。
ただそれだけのことよ」
「にゃあんかややっこしい話ににゃってきたにゃあ。
こういうのってネコは苦手にゃんよ。
にゃもんで、単刀直入に質問したいのにゃけれども」
「どうぞ。遠慮なく」
「にゃら、お言葉に甘えて。
にゃあ、イオラにゃん。にゃんで、『やらなかった』のにゃん?」
「ミアンちゃん。それじゃあ、ワタシも単刀直入にお答えするわ。
運の悪いことに、ばれちゃったの。
覗き見の天才にね」




