第七十一話『穏やかにゃるミリアにゃん』
第七十一話『穏やかにゃるミリアにゃん』
「実は……、今日のような日がくると信じ、密かに策を練っていたのです」
「なんと!」
「にゃんと!」
「そんな苦労の報われる時がついに。
ただちに成果をお目にかけましょう。
出でよ、三十にんの『私』!」
『にゃおぉぉん!』
ぴたぴたっ。ぴたぴたぴたっ。ぴたぴたぴたぴたっ。
「あっ。ミリアんの『私』に何体も引っつかれたのわん」
「ウチもにゃん」
「ミーナさん、ミアンさん。どうです? この苦肉の策は?
前回は同じ三十体でも、『間合いを取って』での闘いでした。
だから破れたのです。
でも今回は違います。身体にしっかとくっついた状態であれば、たとえ、
『装甲型ネコネコ反射。ハイバーVersion』
を使ったとしても効果なし。はね返すどころか、防御すら叶わないのです」
「ミーにゃん。ちぃとばかし、まずいんじゃにゃいの?」
「ミアン。ちぃとばかし、どころか、大っきくまずいような気がするわん」
「ミーナさん。『気がする』ではなく、事実そうなのです。
論より証拠。ただちにお見せしましょう。
さぁふたりとも。三十倍の力で幸せにおなりなさい。それぇっ!」
『無気力波、エクストラVersion!』
びょおん。びょおん。びょおん。びょおん……………………。
「し、しまったぁ!
なぁんかもう頭も身体もふらふらになってきたのわぁん」
「ミーにゃん。ウチもにゃ。
もうダメにゃん。立っていることすらぁ」
ばたっ。
「あっ、ミアン。
……ってアタシも同じみたい。駆け寄る気力さえもぉ」
ばたっ。
「やった…………やったぁ!
やりましたよ、ミストさん。
ついに、悪逆非道のかぎりを尽くした連中を葬りました。
あなたの仇を討ったのです」
しぃぃん。
「この沈黙こそが勝利の証。
私の心は今、とても晴れやかです。穏やかです。
まるでこのまま、すうぅっ、と気を失ってしまうくらいにぃ」
ばたっ。
ひゅううぅぅっ。
がばっ。
「ここはどこ? アタシは誰?」
「ウチはミアンにゃ」
「あのね。だから前にもいったと……まぁいいわん。
そうかぁ。闘いは終わっちゃったかぁ」
「うんにゃ。終わったのにゃん」
「惜しかったなぁ。あともうちょっとで」
「勝ったみたいにゃよ。ウチらが」
「えっ!」
「ほら。あれをご覧にゃさい」
「あれを、って」
くるっ。
「うわん!
ミリアんじゃない。でもどうしてぶっ倒れているのわん?」
「さぁにゃ。
当の妖精も目を開いたみたいにゃし、ここは一つ、聴いてみようにゃん」
「うん!」
がばっ。
「ここはどこ? 私は誰?」
「アタシはミーナ」
「ウチはミアンにゃ」
「おふたりさん?
となると、私はミリアということになりますが……、
間違っていませんでしょうか?」
「うん。悲しいことに間違っていないのわん」
「うんにゃ。つらいことに間違っていにゃいのにゃん」
「ミーナさん、ミアンさん。現実とはそういうものです。
楽しいことや嬉しいことばかりじゃありません。
悲しいこともつらいことも、たんとあるのですよ。
私がこの世に生きているのだって、
それをあなた方がしっかと見届けなければならないのだって、
厳しい現実なのです」
「ねぇ、ミリアん。なにもそこまでいわなくたって」
「いいと思うのにゃけれども」
「そう……でしょうか?」
「私はミスを犯しました。
引っつかれたほうは確かに倒れますが、
引っついたほうも、ただでは済まなかったのです。
それぞれの『私』が『無気力波』を放てば、
ほかのそれぞれの『私』も巻き添えを食らわずにはいられません。
どれもが『私』ですので、
全ての『無気力波』が私へと放たれたことになります。
とどのつまりが、『狭界』の時と同じ。
私は自分で自分を倒してしまったのですよ。
ミーナさん、ミアンさん。
どうか笑ってやってください。この無様で愚かな姿を」
「ミリアん」
「ミリアにゃん」
「はあぁ。ダメです。まだ頭がくらくらします。
今しばらく夢の中で安静にしていますね。
あっ、ミーナさん。おネムの前に一つ、お聴きしても構いませんか?」
「なにをわん?」
『本当の意味で、ミストさんにひどいことをしたのは誰だと思います?』
《大変申しわけにゃいのにゃけれども、『答えにゃし』で、つづくのにゃん》




