第三十九話『ミーにゃんとミムカにゃん』
第三十九話『ミーにゃんとミムカにゃん』
ざざああぁぁん! ざざああぁぁん!
「いつ眺めてみても、湖『彩香』はでっかいのわん。
ああでも、ひょっとしたら、
『図体が大っきければ、それだけでエライ』
なんてお高くとまっているのかも。
うん。そうね。そうに違いないのわん。
イオラの森のお姫様としては、ここは一つ大いに猛省を促したいところね。
でもどうやったらいいのわん? どうすれば……はっ!
湖のほとりには扱いやすい小石が数知れず転がっているじゃにゃい。
これを放り込んでやればいいのわん。
そうと決まれば、まずは……これこれ、これわん」
ぎゅっ。
「投げるのに手頃な大っきさなのわん。
腕を思いっきり下から上へと振るって、出来るだけ遠くへ飛ばしてみようわぁん。
えぇいっ!」
ひゅうぅっ。
「ほらほら、小石は放物線を描くが如くぅ…………ダメわん。丸っきりなっていないわん。
ほぼ垂直に墜ちてくる運命しかあげられなかった……うぉっ!」
つっ、つっ、つっ、つっ、つっ、ぽっちゃん!
「なんて不思議な。予想をはるかに超えるところまで行ったのわん。
でもどうして? どうしてなのわん?
水面に堕ちた瞬間、まるで弾かれたかの如く、向こう側へと飛んでいったのわん。
しかも不思議はそれだけに留まらず。
あれは……そうそう。まるで水面を滑らせるように横投げをしたのにも似た現象。
水面から水面へと伝って、とうとう真ん中近くにまで辿り着いてしまったのわん」
「こらあっ!
なにを遊んでいるのでありますかぁ?」
「あっ、ミムカん。今ね。とぉっても不思議な現象が」
「とぉっても不思議な、じゃありませんですよぉ。
『彩香』に橋をかけたいっていうから、こうして石材を揃えて持ってきたのにぃ。
希望した当の妖精が遊びほうけてなんとしますですかぁ」
「ごめんごめん。なんかやたらと地味な作業なもんでつい。
現実逃避の最前線に身を置いてしまったのわん」
「ふぅ。あのですねぇ、ミーナ。
こういった作業は往々にして地味なものなのでありますよ」
「そこをなんとかならないわん?
こう派手に、ぱぁっ、と。祭りがきた、みたいな感じで」
「完成したら、いくらでもやるがいいでありまぁす。
今はただひたすら地味にこつこつと。それしかありませんですよぉ」
「やれやれ。アタシには向かない作業なのわん。
とはいえ、いい出しっぺは確かに自分。
仕方がない。ミムカん。アタシも手伝うわん」
「ミーナ。なにを勘違いしているのでありますかぁ?
手伝いに来ているのはミムカのほうでありますよぉ」
「よいしょ……うぉっ!
ミムカん。これって重たいのわん」
「そりゃあ『橋』として使うわけでありますからぁ。
頑丈さとか耐久性とか、その他もろもろを検討した結果、
持って参りました石材が一番妥当、との判断が下されたのでありますよ」
「まぁ石なんだからしょうがないか。
ところで、と。
見て見て。どの石もほぼ同じ寸法で綺麗に切り出されているのわん。
しかもほら、上下の表面なんてまっ平らっぽいし。
なかなか手の込んだ造りね。ほとほと感心するわん。
これってミムカんがやったの?」
「のんのん。『なんでも造り隊』でありまぁす。
石材の選択から加工、そして仕上げまで、
全ては彼ら彼女らの手に依るものなのでありますよ」
「前にも聴いたことがあるけど、それっていつもどこに居るのわん?」
「目にしたことがないのも無理はありませんですよぉ。
なんせあの方らは神出鬼没な存在なのでありますから」
「なのにどうしてミムカんはいっつも逢えるのわん?」
「お忘れでありますかぁ?
ならば、今一度、声を大にして叫ぶでありまぁす」
『ミムカはなんと、『森の妖精』なのでありまぁす!』
「はいはい。自称ね。もう聞きあきたのわん」
「なにを小さく、ぼそっ、と呟いているのでありますかぁ?」
「ううん、なんでも。
ミムカん。重いから担ぐのなんてとても無理。
しょうがないから念動霊波を使うわん」
「当然でありますよぉ。
……っていうか、
ミムカの、魂を込めた言葉を無視しないで下さいませですよぉ」




