第三十二話『これにゃって恋の物語にゃん』
第三十二話『これにゃって恋の物語にゃん』
「にゃら、そろそろ説明をばするのにゃん。
ごっほん。
ミーにゃん、パン造りはにゃ。
1.必要にゃ材料や道具を集めるのにゃん。
ここはまぁ『初めまして』のごあいさつや自己紹介の段階と思ってにゃ。
2.パン生地の材料を混ぜ合わせるのにゃん。
まぁ集団生活に放り込まれたと思えばいいのにゃん。
3.『こねる』『たたく』を繰り返すのにゃん。
いじめじゃにゃいにゃよ。まぁ、鍛え上げられている、ぐらいに思ってくれれば。
4.発酵させるのにゃん。
そんにゃ中でふたりは出逢ってしまったのにゃん。
甘い声で、『にゃあぁん』にゃんて。まさしく初恋にゃん。
恋にのぼせ、恋に熱くにゃってしまうふたりにゃん。
5.パンチしてカットして丸めて、でもって休ませるのにゃん。
パン造りにゃるものについて回る思わにゅ恋の落とし穴。
次々と襲いかかる試練の荒波に翻弄され、いつしか恋が冷めていくのにゃ。
悲しいかにゃ。失恋にゃのにゃん。
6.モノに依ってはここで成形にゃん。
女の子に生まれたのにゃもん。美しくにゃりたいのにゃ。
にゃら、『整形もしたい』と考えてにゃにが悪いというのにゃん?
リスク? 当然、ツキモノ、と思ってにゃ。腹を括るしかにゃいのにゃん。
ここで定番のセリフを一つにゃ。ごっほん。
『自己責任でお願いしますのにゃん』
7.また発酵させるのにゃん。
唄にもある、『♪恋も二ぃ度目ぇにゃらぁ』にゃのにゃん。
新たにゃ恋が訪れたのにゃん。
……にゃあんていってもにゃ。
ここまで来る道のりは相当長かったはず。険しかったはずにゃん。
甘い唄とは裏腹の、『雨にも風にも失恋にも負けず』の、
ど根性が実った結果にゃのにゃん。
……いや、待つのにゃ。
新たにゃ、ではにゃいのかもしれにゃい。
失恋した、はずの恋が再燃したのかも。
「離れてみて気がついたの。あなたという存在の大きさを。
やっぱり、わたしにはあなたしか居ないわ」
「ぼくもさ。判ったんだ。もう君しか目に映らなくなっている、ってことが」
覆水盆に返らず、じゃにゃくて、返ったとも考えられるのにゃ。
どちらにしてもにゃ。恋の炎がめらめらと噴き出しつつあるのはいうまでもにゃい。
8.やっとにゃ。やっと、お焼かれににゃられるのにゃん。
まさに、『恋焦がれて』『恋に身も心も妬かれて』の言葉通りにゃん。
……とまぁこんにゃ段取りにゃん。
長々とウチのお喋りにおつき合いくださって、誠にありがとうございましたのにゃん」
ぺこり。
「なぁんか判ったような判らないようなぁ」
「にゃんと!
あんにゃにもたとえ話を連発。盛りだくさんの内容でお届けしたっていうのにぃ?」
「むしろ、なかったほうが良かったようなぁ」
「ふぅ。やっぱ食べ物への批評は厳しいのにゃん」
「じゃなくて。ミアンへの批評なのわん」
「飾らにゃいウチが一番美しい。そういいたいのにゃん?」
「あのね……。どうしてそうなるのわん?」
「ねぇ、ミアン。今のたとえ話とミアンに起きた出来事と、どう繋がるのわん?」
「その前に、もちっと話を続けるのにゃん。
焼き上がったパンを食してみたのにゃよ。
あれにゃけ手間暇かけて時間をかけて造ったのにゃ。
『さぞかしや美味しいもんに仕上がったのにゃろうにゃあ』と、どきどきわくわく。
大いにゃる期待を胸に、ぱくっ、とにゃ。
でまぁ、その結果がこれにゃん」
ぐぁっ。
「口の中? どれどれぇっ」
じろじろ。
「うわっ。
ミアン、歯が何本か欠けているのわん」
「そうにゃん。
ウチとしてはにゃ。『外はかりかり、中はふわふわもちもち』のつもりにゃった。
にゃのに、いざフタを開けてみれば……ううっ。さにあらずにゃん。
『期待は裏切るためにある』との信条をパンが抱いてしまったせいにゃのにゃろうか。
外はかりかり、にゃれど、中はもっちりもちもち、とにゃってしまったのにゃん」
「もっちりもちもち、でも、美味しそうには聞こえるけどね」
「そんにゃ甘いもんじゃにゃいのにゃ。まさに、歯が立たにゃい、のたとえ道理にゃん。
くっついたが最後、
『もうお前はこっちのもんにゃ』といわんばかりに、
『これが恋の代償にゃん』といわんばかりに、
どうにも離れてくれにゃくてにゃ。
地面を、ごろごろ、と、もがきにもがいていたのにゃん。
で、とどのつまりが、
四肢奮闘の甲斐あって、にゃんとか歯を引き抜くことに成功してはみたもののにゃ」
「何本か犠牲になってしまった、というわけね。お気の毒わん」
「恋に犠牲はツキモノにゃん。でもにゃ。
にゃからといって怯むのは、それこそ、お門違いというもの。
にゃってそうにゃん。
あらゆる苦難を乗り越えてこそ、おのれの求める真の愛に辿り着けるのにゃん。
祝福の拍手に迎えられる日がくるのにゃん。
めでたし、めでたし、とにゃれるのにゃん。
……とまぁ至極無難にゃ締め括り方で、『幕』とするにゃん。
以上、『これにゃって恋の物語にゃん』でしたのにゃん」
「ええとぉ。
ねぇ、ミアン。アタシたちって、そんな話をしていたんだっけ?」
「と聴かれてもにゃあ。
ミーにゃんに判らにゃいものを、どうしてウチが判るというのにゃん?」
「あのね……」
《まにゃ、あと一話つづくのにゃん。どうにもしつっこくて、ごめんにゃ》




