第三十一話『誰も知らにゃいかもにゃあん』
第三十一話『誰も知らにゃいかもにゃあん』
とぼとぼとぼ。
「おや?
向こうから、頼りなげに歩いてくるのはアタシのアホネコなのわん。
一体なにがあったのかなぁ?
なぁんかまたずいぶんと落ち込んでいるみたいだけどぉ」
ぱたぱたぱた。
「ミアァン!」
「はにゃ? 今ウチを呼ぶ声が聞こえたようにゃあ……」
ずっびゅうぅん!
「ふにゃん!」
ぺたん。
「やれやれ。思わず尻モチをついてしまったのにゃん。
真ん前の穴から、いきにゃり飛び出してくるのにゃもん。面食らうのも当たり前にゃん。
とにもかくにもスピードが半端じゃにゃい。
あぁっという間に、目が届かにゃい高さにまで昇りつめてしまったのにゃん」
ひゅうぅぅっ!
「あっ。今度は墜ちてくるのにゃん。
……にゃあんにゃ。良ぉく見れば、ウチの親友にゃん。
ふぅ。ブルってしまった自分が愛おしいやら愛らしいやら、ええと、可愛いやら」
「ミアァァン! 無意味に『愛』を連発するんじゃないわあぁん!」
「いいじゃにゃいの。『愛は』森を、村を救うのかもしれにゃいのにゃよ」
「アタシが救うわあぁん!」
「あのにゃあ」
「と、ここで恒例のぉっ!」
「恒例はやめてにゃ」
「なら、景気づけのぉっ!
大変なのわああぁぁん!」
ひゅうぅぅっ…………ぴたっ。
「あれっ? はて? なに?
地面に落下していないわん。
どっかぁん! じゃないわん。
おかしいなぁ。なにがどうしてこうな……うぉっ!
奇跡が……奇跡が起きたわん。
っていうか、奇跡の真っ最中なのわぁん。
こんなことって。こんなことってぇ。
ミアンがネコ人型モードで立って、
右手のネコ差し指の先でアタシをしっかと受けとめたのわぁん」
「昔懐かしの、サタディナイトフィーバー、にゃん!」
「なにいってんのかさっぱり。
だけどぉ。
お古なポーズであるのは認めるのわぁん」
「はぁうっ」
「幼児に似つかわしくないエライ大っきなため息だけどぉ。
なにかあったのわん?」
「にゃあ、ミーにゃん」
「うん?」
「ウチはにゃ。『現実の厳しさ』っていうのを、
いやはや、今日ばかりはとことん、思い知らされたのにゃん」
「へぇ。どんな体験をしたのわん?」
「うぅぅん、とぉ。
にゃあ、ミーにゃん。たとえ話でもいいのにゃん?
本当の話はまた今度、じゃダメにゃの?」
「今直ぐには話しにくい、というのなら、それでもいいわん」
「にゃら……そうにゃ、パン造りの話でもするのにゃん」
「パンって、あの、茶色っぽくてふわふわでもちもちの?」
「それはパンの一形態。白っぽいのもあるし、固めのモノにゃってあるのにゃん」
「ちなみにアタシも白っぽいわん」
「にゃら今日からは、ミーにゃんあらため、白パンにゃんにゃ」
「却下わん。アタシはミーナ。『それ以上』でも『それ以下』でもないキャラなのわん」
「ぶふっ。
『それ以上でも』という下りでは『これは謙遜なのわん』たっぷりの表情がありありと。
でもって、
『それ以下でも』という下りでは『んなわけないわん』たっぷりの表情がありありと。
誠に鮮やかにゃる切り換えにゃん。
ネコは移り気、とはいえ、ウチもまにゃまにゃそこまではいかいにゃいのにゃん」
「んもう、うるさいわん。
長年、ずぅっ、と一緒に暮らしているとこれだもん。
なにもかもお見通しとなってしまって、
『プライバシーよ。さよならわん』と手を振るしかないのわん」
「でもにゃ。ミーにゃんにゃってこれからどんどん自分の世界が拡がっていくのにゃ。
つき合いも多くにゃるし、友にゃちの数にゃって当然増えてくるのにゃよ」
「だから?」
「にゃからこそにゃ。
イオラにゃん以外にもひとりくらい、
『ミーにゃんを良ぉく知っている』
『いついかにゃる時でもミーにゃんをちゃあんと理解してくれる』
そんにゃ友にゃちが、そんにゃネコが、そばに居てもいいんじゃにゃい?」
「へぇ。なかなか説得力のある物言いわん。
そうかぁ。それがアタシのミアン……。
ごっめぇん。『うるさいわん』なんていって。アタシが悪かったのわぁん」
ぺこり。
《つづくのにゃん。ごめんにゃ》




