第二十九話『良くぞ考えたのにゃん』
第二十九話『良くぞ考えたのにゃん』
「親はにゃくとも子は育つ。
ミーにゃんにゃくともイオラにゃんは育つ」
「こらこら。なにわけの判らないことをいっているのわん?
あっ、ミアンはいいのよ。ミアンは。なにを喋ろうが慣れっこだから。
問題は他にあるの。ミアンも判るでしょ? えっ、判らない?
んもう、どうしようもないなぁ。
そういう意味不明の内容に飛びつく物好きな精霊がね。
アタシたちのすぐそばに居るって忘れたのわん?」
「なぁるほどねぇ。ミアンちゃんの発言ってなかなか意味深だわぁ」
《予想違わず、だったもんで、ここからはしばし、ひと休みなのわん》
「ほぉら。いわんこっちゃない。早速食いついてきたわん。
こうなれば一刻も早く逃げ出すのにかぎるわん。
ぐずぐずしていたら、それこそ大変。意味不明どころか、『迷宮をさまよい歩く旅人』にでも陥ってしまいかねないぶっ飛び発言を耳にしなくちゃならないんだもの」
ぱたぱたぱた。
「ダメにゃん」
さあぁっ……すぽっ。
「うわうわうわっ」
「ミーにゃんゲットにゃん!」
「うわうわ……って、こらぁっ!
捕虫網なんかで捕まえるなぁ。
アタシの、お姫様としての面目丸つぶれなのわぁん」
「にゃって……にゃってウチひとりにゃけじゃ心細かったのにゃもん。
ミーにゃん。苦労を分かち合ってこそ、親友にゃろう?」
「ミアン……。
そうかぁ。アタシって自分のことばっか考えていたのわん。
ごめんね、ミアン」
「ううん。謝らにゃくたっていいのにゃよ。
判ってくれたにゃけで十分にゃ」
「それでこそミアン。それでこそ我が親友と認めた女の子なのわん。
あっ。秘密会議はここまでなのわん。
見て、ミアン。
イオラがついに、誰もが怖れるぶっ飛び発言をしようと口を開き始めたのわん。
どこまで抵抗出来るか判らないけど……、
それでも、不肖ミーナ、粉骨砕身、我が身を捨てて立ち向かってみるわん!」
《覚悟を決めたもんで、ひと休みはこれにて終わりなのわん》
「ミアンちゃん。良ぉく判っているじゃない。
アタシが育ちざかりだってこと」
「イオラも調子に乗ってぇ。何万年も生きている創造主がなにをいうわん」
「ミーナちゃん。あなたはワタシよりも若いと思っているでしょ?」
「だぁって、そうだもん」
「ところがどっこい。事実は小説よりも、ずぅっ、と奇なのよ」
「奇なのはミアンとイオラの頭の中身わん」
「ふぅ。やっぱり気がついていないようね」
「なにをわん?」
「ワタシの一生もミーナちゃんの一生も、取り敢えず100パーセントとするわ。
まずはミーナちゃんからよ。
妖精の寿命はおよそ1000年。
妖精の幼児期は300年だけど、今のミーナちゃんの歳はおよそ200歳ぐらい。
だから、
200/1000=20パーセント。
ミーナちゃんは生涯の20パーセントを既に生きてしまったことになるわ。
お次はワタシよ。
イオラの木に宿る精霊の寿命はおよそ1000万年。
で、今のワタシはといえば、
そうね。恥ずかしながら、せいぜい、2万年といったところかしら。
だから、
2/1000=0.2パーセント。
ワタシはまだ全生涯の0.2パーセントしか生きていないの。
生涯比率でいうなら、そうね、
ミーナちゃんが幼児なら、ワタシはまだ、よちよち歩きの赤ちゃん、ってとこかしら。
ミーナちゃんのことを『ママァ』って呼んで甘えても決しておかしくないお年頃なの。
ということで、
『判りましたでちゅか? ママァ』
なぁんていってみたりしてね」
『うっうっうっ』
「あら。どうしたの、ふたりとも。涙にむせんじゃったりして」
「だって……だって……んぐっ……ねぇ、ミアン」
「ぐすん……うっうっ……んにゃ、ミーにゃん」
「んぐっ……イオラがこんなにも歳に焦りを感じていたなんて……んぐっ」
「自分の若さを認めさせようと、こんにゃにも四苦八苦していたにゃんて……ぐすん」
「なんて涙ぐましい努力なのわん」
「にゃんて涙ぐましい努力にゃのにゃん。
良くぞ考えたのにゃん。褒めてあげたいくらいにゃ」
「もう大変なのわん。話を聴いていたらこっちまで……ううっ」
「イオラにゃんの心の号泣に思わずもらい泣きにゃん……ぐすん」
「…………」




