第十八話『三つ首蛇の襲撃にゃん』
第十八話『三つ首蛇の襲撃にゃん』
「ミーにゃん! あれを!」
「うわっ! 三つ首蛇が我が物顔でイオラの森の上空を飛んでいるわん!」
「にゃんともでっかいのにゃん」
「奇っ怪獣だとしたら、今まで見たことがないクラスの大きさなのわん。
『おぉぅ! まるで空を覆い尽くさんばかりでありますねぇ』
大げさに表現するのが得意のミムカんだったら、きっとこれくらいはいったかも」
「大きさも然ることにゃがら、姿形も独特にゃん。
長ぁい首から上は三つにゃのに、それより下は尻尾まで一つにゃもんにゃあ」
「おまけに真っ赤っ赤な身体を絶えずくねくねさせているわん。
あれじゃあ、飛んでいるというよりも、空を這っているといったほうが正しいかも」
「近年まれにみる気持ち悪さの奇っ怪獣にゃん」
「ああでも……、あれって本当に奇っ怪獣なのかなぁ」
「というと? ミーにゃんにはにゃにか思い当たる節でもあるのにゃん?」
「ひょっとしたら、だけど……、イオラじゃないかなぁ。お祭り騒ぎが好きだし」
「イオラにゃん? にゃったらウチの魂が呼応するはずにゃよ。
でもにゃ…………ほぉら。にゃんにも反応してにゃい」
「アタシもだけど……、あれだけでっかいしぃ。
たまにはそういうことも」
「ないわ」
「イオラにゃん!」「イオラ!」
「ふたりにはワタシの命の欠片を分け与えているのよ。
ワタシがどんな姿になろうと、ワタシが判らないなんて絶対にあり得ないわ。
「だったら、あれはぁ……」
「そう。奇っ怪獣と認めざるを得ないのじゃないかしら」
ぶおぉぉぉっ!
「ふにゃん! 紅蓮の炎を口から吐いたのにゃん!」
「木の葉が一枚、あっという間に燃え尽きたのわん!」
びぃぃぃっ!
「おおっ! 今度は目から琥珀色の光線を発射したわん!」
「にゃんと! あれを見にゃさい。
ほらほら。木の幹の当たった部分にゃ。
小っちゃいにゃがらもちゃあんと表皮が黒ずんでしまっているのにゃん!」
「まさに悪魔の仕業ね。なんて恐ろしい奇っ怪獣なのかしら」
「ミーにゃん。どうすればいいのにゃん?
このままにゃと被害はイオラの森にゃけにとどまらず、
天空の村全土にまで及ぶのにゃん」
「ううん。天空の村最大の危機なのわん。
なにか打つ手が……そうそう。一つだけあったのわん」
「にゃんと!
もう閃いたのにゃん。さっすがはウチの親友。イオラの森のお姫様にゃん」
「えっへん! なのわん」
「ほらほら、ミーナちゃん。いつまでも、
『鼻を高くして、胸を張って、腰の手を当てて』の『三て』をしていないで、
『閃き』とやらの話をしてちょうだい」
「そうにゃよ。頼むにゃ」
「揃って両手を合わせて拝まれちゃあ、黙ってもいられないわん。
ふたりとも耳を貸して」
「こんにゃもん?」「これでいいのかしら」
「うん。じゃあ、話すわん。
ほら、天空の村に現われる奇っ怪獣ってさ。どれも……」
ひそひそひそ。
「なら、ミアン。頼むわん」
「本当にウチがやるのにゃん?」
「今更なにをいっているのわん。
ミアンがこの三にんの中で条件にぴったりと合うんだから仕方がないのわん。
ほら、四の五のいわず、とっととやるわん」
「でもにゃ」
「ミアンちゃん。ほら、来たわよ!」
「にゃんと!」
くねくねくね。くねくねくね。
「真っ直ぐ向かってくるのにゃん!
しょうがにゃい。女の子も度胸にゃん」
くねくねくね。くねくねくね。
「ネコ人型モードで立って……両手を前に出して……ふにゃ! もう目の前にゃん!」
「ミアン! 今なのわん!
「呪と同じくらい威力のある、あの言葉を紡ぐのわん!」
「ミーナちゃん! しっかりぃ!」
「ミーにゃんもイオラにゃんも応援してくれている……。
ふたりのためにもウチは……怖いのにゃけれども……ええい、ままよぉ!」
『あんたはアホにゃああぁぁん!』
「しかしぃ……。こうも上手くいくとはにゃあ」
「提案したアタシだって信じられないわん。
でも事実は事実」
『この場に居る一番のアホ』と目に映る相手から『アホ』といわれたらどうなる?
考えるまでもないわん。ムカついて我を忘れ、飛びかかってくるに決まっているのわん。
「そう予測して立てたこの作戦。
どぉう? ものの見事に的中したのわん」
「でもにゃ、ミーにゃん。その相手とやらがウチとはかぎらにゃいのにゃん」
「それはどういう意味わん?」
「あん時、ウチの真後ろにはミーにゃんも、イオラにゃんにゃって居たじゃにゃい。
ひょっとしたら、『虎の威を借りる狐』の逆が起きたのかも。
ふたりのうちのひとりが目にとまってにゃ。
それで襲いかかったきた、と、いえにゃくもにゃい」
「そんなぁ。深読み過ぎるわん」
「まぁまぁ。
誰が元で襲いかかってきたのでもいいじゃない。
大事なのは三つ首蛇を倒したってこと。天空の村を救ったってことよ。
そうでしょ? ミーナちゃん、ミアンちゃん」
「その通りにゃん。さっすがはイオラにゃん。だてに長生きはしていにゃいのにゃん」
「年の功なのわん」
「あら。ワタシとしたことが墓穴を掘ったのかしら。
まぁいいわ。
終わり良ければ全て良し。ミアンちゃん、ご苦労様でした」
「振り返ってみれば……。
あのセリフを喋って直ぐにゃ。
ウチに食いつこうとしてか、三つの首が同時に延びてきたのにゃん」
「うん。だけど、運悪く……こっちにとってはラッキーだったけどね……、
三つが三つとも絡まってしまったのわん」
「三つ首蛇は身体のバランスがとれなくなったばかりか、呼吸すらも困難に。
挙句の果てに、とうとう、頭から落下。
地面に激突して、そのまま事切れてしまった……。
思えば、哀れな最期だったわね」
「ミーにゃん、イオラにゃん。
奇っ怪獣とはいえ、一つの命が消えたのにゃん。
簡単にゃがらも一応、冥福を祈ろうにゃん」
「それがいいわん」
「異議はなくってよ」
「にゃら」
合掌!




