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婚約者にほぼ殺されましたが、私は元気です!?  作者: 彩紋銅


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2/6

2.生き返りました!?

 ◆


「ギエーーーーッ!? 私、死んだんですけどーーーー!?」


 その言葉と共に、私は復(・)活(・)し(・)た(・)。


「ソニア!」


「蘇(・)っ(・)た(・)か(・)!!」


 気づくと、家族がベッドのそばで涙を流していた。


「……お父様、お兄様」


「良かった、生きてた……」


「お母様……」


 お母様も泣きながら、私の無事を喜んでくれていた。


 でも、私の心は沈んでいた。


「申し訳ありません。〝特異魔法〟の貴(・)重(・)な(・)一(・)回(・)を、自分に使ってしまいました……」


 なんて勿体無いことをしてしまったのだろう……。


「気に病むな。お前が生きていることが何よりなのだから」


 そう言われる程度には私は家族に愛されていたようだ。


 この世界には〝特異魔法〟と呼ばれる術式を使わなくても生まれつき使える魔法がある。

 使える魔法はピンからキリまであるが、私の特異魔法は〝蘇生〟だった。しかも、他人にも使えるという、かなりレアな特異魔法だ。


 ただし、使用回数には制限がある。さらに、対象者が一度完全に死亡しなければ発動しない。それでも貴重な魔法であることに変わりはなく、私が学園で王太子殿下のそばにいたのもそれが理由だった。


 私が〝蘇生〟を使えるのは、全部で四回だ。これまでに二回使っており、今回の蘇生でさらに一回消費してしまった。

 〝蘇生〟魔法を使えるのは、あと一回だけとなってしまった……。


「だが、今回の一件でローランド殿との婚約は破棄された。貴重な〝蘇生〟魔法を無駄に使わせたことも問題だが、何の咎もないお前を躊躇なく斬り捨てたことが重く見られた」


 一瞬とはいえ、私が死んでいたことも事実なので、仕方がなかった。


「そう、ですか……」


 今は、悲しみよりも、ローランド様への失望の方が強かった。


 ◆


 その後、三日ほどで私はベッドから起きられるようになった。

 肉体の怪我は蘇生魔法の影響で回復していたが、その分魔力をかなり消費していた。蘇生魔法ともなると、魔法をある程度使い慣れていてもこうなってしまうのだ。


 そして、何とか日常生活を送れるようになった頃、ことの顛末を知ることができた。


 私を斬り捨てたローランド様は、尚も私を斬りつけようとしたため、追いついた王太子殿下の護衛に取り押さえられた。

 ローランド様は拘束され、ルース嬢と彼女と一緒にいた彼は保護されたという。


 ルース嬢はどうやら、自分の意思で行方を晦まし、身を隠していたようだ。

 彼女には婚約者がいたが、彼は大きな商会の息子で、身分は平民だった。神殿は、彼女を能力の高い聖女として売り出そうとしていた。そのため、邪魔な元の婚約を破棄させ、高位貴族、できれば王族と婚約させようと目論んでいたらしい。


「それで、駆け落ちしようとしたそうだ」


「聖女とはいえ、その婚約関係・婚姻関係に口は出してはいけない。これは、神殿の掟でもあるはずなんだけどね」


 その結果、この国の神殿には、総本山である『聖浄大神殿』から監査が入ることになった。


 聖女の力は、子供を産んでも失われることはない。しかし、冷遇されたり、意に反する行いを強要されたりすると、弱まることがあるらしい。

 また、その力は高確率で子供に遺伝するので、婚姻は禁止されていないのだ。そのため、今回のような神殿の行為は禁止されている。


「それで、ローランド様は?」


 私は一番言いづらいであろうことを問いかける。

 父はまだ怒りが収まらず、母も大きなショックを受けていた。二人とも冷静に説明できないため、兄がその役を引き受けたのだ。


「彼は一時期、貴賓牢に入れられて事情を訊かれていたが、今は邸宅に戻って謹慎中だ。

 ソニアを斬った理由は、『自分の婚約者がルース嬢を攫った犯人だと思った』『ルース嬢を害したのも許せなかったし、愛する自分の婚約者が、これから罪人として生きることに耐えられなかったから』と証言しているらしい」


 貴族が罪を犯しても、それが家同士の問題であれば、本人は邸宅に返される。これは、賠償の準備をさせるためであり、同時に〝家〟が下す罰に重きを置いているからだ。

 どのような処分を下したかによって、その家の今後の立場が決まる。そのため、罪人への処分は慎重に決める必要があるのだ。


 もちろん、国や王族に牙を剥いたという場合は別だが。


「えぇ? 意味がわからないのですが……」


『愛する』って……最近は嫌われていましたけど?


 私は学園でローランド様に向けられていた冷たい眼差しを思い出す。絶対、愛とかそういう感情はなかったと思う。


 むしろ、ルース嬢に心変わりをしていたのでは?


「だよな。だから、精神鑑定にかけられた。まあ、異常はなかったみたいだが……」


「そ、そうですか……」


 それで正常なのか……。その方が問題なのでは?


「とにかく、ローランド殿との婚約は相手有責で破綻となった。書類上のやり取りは既に済んでいる。近々、その確認のために顔を合わせるが……」


「私も出席します」


「無理はしなくてもいいぞ?」


「大丈夫です。ケジメは、いつかつけなければならないでしょう? ここで断ったら、今後もローランド様に付きまとわれるような気がします。そうなれば、次の婚約にも影響が出るかもしれませんし」


 まあ、当分、婚約とか勘弁ですが……。


「そうか」


 お父様も了承してくれた。


 そして、両家の話し合いは、二週間後に決まった。



 ◆◇◆


 時間はソニアが目覚める前に遡る。


「ローランド、なぜこのようなことをした?」


「そ、それは……」


 騎士団での尋問を終え、クロクス侯爵邸に帰されたローランドは口ごもった。


「──まあいい。お前が答えなくても、騎士団から尋問の内容が届いている。まったく、自分の命を救ってくれた恩人を、その手にかけるとはな……」


「え? それはどういう……?」


「何だ、知らないのか? それとも覚えていないだけか? お前は子供の頃、一度死んでいるのだ。それを救ったのがソニア嬢の特異魔法〝蘇生〟だ」


「と、特異魔法? 蘇生!?」


 ローランドの驚きぶりに、彼の父は呆れた顔をした。


 防犯上の理由から、ソニアの特異魔法が〝蘇生〟であることまでは教えていなかった。だが、彼女が希少な特異魔法を持っていることと、その力で過去にローランドが救われたことは説明していた。それを覚えていないのだから、父親が呆れるのも当然だった。

 勘の良い者なら、その情報だけで、正解とはいかないまでも、近い答えを導き出していただろう。


「で、ですが、ソニアはルース様を嫉妬で害していたと……」


「そんな事実はない」


「は?」


「フラワリングケール伯爵家には時折、〝蘇生〟の特異魔法を持って生まれる者がいる。蘇生には使用回数に制限がある。そのため、大抵は王族を守るために使われてきた。

 学園に同年代の王族がいれば、その側近として常にそばに控えることになる。つまり、ソニア嬢が一人で行動する時間はほとんどない。ルース嬢に嫌がらせをする機会など、あるはずがない」


「そ、それじゃあ……」


「確かにルース嬢に付きまとっていた生徒はいたようだが、それはソニア嬢とは関係がない。宮廷の〝影〟が調べた結果、犯人はルース嬢に懸想していた一部の男子生徒だと判明した。いわゆる、好意をこじらせたストーカーというやつだな」


「──っ」


 ローランドはルース嬢に起きていたことを思い出す。

 私物がなくなる。誰かにつけられている。良からぬ噂を流される。視線を感じる──。


 よく考えれば、どれも嫌がらせというよりは、ストーカー気質の人物が目標の相手に行う行動といってもいいものだった。


 彼女のお気に入りのハンカチが、ひどく汚された状態で見つかったこともある。見つかった場所は、学園の敷地内にある、人が滅多に訪れない庭園だった。

 しかし、故意に彼女に見せつけるために置かれたようには見えなかった。持ち主がうっかり落としたか、汚れたために捨てたようにも思える。


 それに、ハンカチにこびりついていたあの粘(・)液(・)状(・)の(・)も(・)の(・)は……。


「ルース嬢が姿を消したのは、相思相愛の元婚約者と駆け落ちをするためだ。これは神殿が欲をかいた結果だ。

 ソニア嬢はまったく関わってはいない。お前が路地裏で見つけた時は、駆け落ち中のルース嬢をソニア嬢がたまたま見つけたところだったのだ」


「そんな……」


「つまり、お前は勘違いでソニア嬢を殺害した。その結果、本来は王族のために残しておくべき希少な蘇生魔法を、余分に一回使わせたということだ。蘇生魔法は、その対象が完全に死なないと発動はしないからな。

 まったく、損害賠償だけでどれほどになるか……」


 ローランドは父親の嘆きを聞きながら絶望したのだった。







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― 新着の感想 ―
嫉妬で傷つけた、代価が切り○す。とは……。 どんだけバイオレンスな世界なの……コワ……。
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