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七度転生した大賢者、今世では剣士として無双します 〜魔法全盛の世界で剣を選んだ理由〜  作者: ねむのき 圓
4章 ヴァーミリオン王国と呪われし少女

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秘境の温泉・・・そろそろ反撃

旅の朝と予感

 と、そんな事も知らずにロロがテントから顔を出してくる。


「朝ごはん誰だっけ?」


 ロロは、昨晩のロマンチックな語り合いなどすっかり忘れたように、いつも通り緊張感がなかった。


「私ですよ」


 ヴィニーは既に火を起こし、簡素だが温かいスープを作り始めている。彼の細やかさが、旅の安定を支えていた。


 アーサーはまだ寝息を立てている。王族の血筋ながら、彼は朝に弱いタイプだった。


「リリス起きてるか?」


 ルーシュは、一人別のテントの様子を見に来た。


「うん、でも待って、準備中」


「分かったよ。朝ごはんもうできるから適当においで」


 女の子は時間がかかる。12歳でも、彼女はかなりの綺麗好きで、身だしなみを整える時間は譲れないようだった。


### 焦燥のルーシュと加速する旅


 王都を出て何日か過ぎた。盗賊の襲来はあの日以来無いが、ルーシュの魔力感知は、追手が確実に接近していることを伝えていた。来るなら今日だろう。


「ペースが良い。2日は早く着くな」


 ルーシュは当たり前のように言うが、その言葉には、追手を撒けるかどうかも試していた。


「ふざけんな! 何が2日早くだよ? クソみたいなペースじゃねぇか!」


 お決まりのようにロロが愚痴を言う。彼の不満は、疲労の裏返しだ。


「なんか急ぐ理由あったんですか?」


 疲れ気味のヴィニーが尋ねる。誰もがルーシュのペースに消耗していた。


「そりゃ、2日も早く余裕そうに到着してみろよ。**『さすがヴァイオレット王国の学生は体力があるなぁ』**ってなるだろ?」


「おお! そうかそうか、余裕余裕~! もっと飛ばすぞ!」


 ロロは**「さすが」**という言葉に弱い。王族としてのプライドをくすぐられると、弱気な性格はどこへやら、すぐさま元気になる。


「馬鹿ですかロロ様! 無理に決まってるでしょ! ルーシュさん、全く何考えてるんですか?」


 アーサーは流石に疑ってきた。彼は王族としての冷静な判断力を保っている。


「そろそろ接触してくる。俺達、追われてるんだよっ」


 ルーシュは、隠すのを止め、笑いながら駆け足になった。真実を告げても、彼らは動揺よりも好奇心で動くことをルーシュは知っていた。


「嘘でしょ? もぉ、なんで黙ってたんですかぁ」


 アーサーは呆れつつも、ロロを追いかけ走り出す。


「リリス、遅れるなよ」


「うんっ」


 ここ1週間で、リリスの笑顔はだいぶ増えてきた。彼女の笑顔を守るためにも、ルーシュは足を止めるわけにはいかなかった。


### 秘境の野営地と罠の仕込み


 今日は久々の野宿だ。ちょこちょこ小さな村が点在していたため、適当に宿に泊まることができていたが、追手を巻くため、少しペースを乱したことで今日は森の中で一夜を明かすことになった。


「ベッドが良いなぁ。お前のせいだぞ、ルーシュ」お決まりのロロの愚痴。


「たまにはこういうのも良いですよね。それに**温泉**あったじゃないですか」


 晩御飯の用意をしながら、ヴィニーが話す。今日は近道のため少し奥まった森を突っ切っていたが、思わぬ収穫、ここは温泉が湧く秘境だった。


「あれは良かったですね。なんか頑張った甲斐があります」


 アーサーも疲労が取れたみたいだった。


「おれは少し先まで道の確認に行ってくるわ」


 ルーシュはそう言うと、追手の確認と明日の道の確認をしに行った。流石に多くはないが魔物が出る森だ。近道といえど危険だ。しかし、この優秀なメンバーなら心配ない、とルーシュは信頼していた。


### 子供たちによる完璧な反撃


「きゃぁ!!」


 大きな悲鳴が響く。温泉のあった方からだ。


「ロロ! 覗きに行ったな!」呆れる3人。


「ふざけんな! 死ね!!」ロロが返す。


「え? じゃぁ……」


 4人が顔を見合わせ、青冷めた顔で慌てて悲鳴のする方に向かう。


「随分のんびりしているじゃねぇか? 厄介そうなお前が油断した隙に、準備をさせてもらった」


 先日の盗賊だった。完全に油断した。


 リリスは着替えは終わっていたが、武器を奪われ3人に囲まれていた。リーダー格の盗賊が、リリスにナイフを突き立てている。


「卑怯だぞ? ここが秘境なだけに……フフ」


 緊迫した状況で、こんな冗談を言えるのはロロだけだ。


「この状況で冗談とは。大人を舐めてると痛い目に遭うぞ?」


 鋭いナイフがリリスに突き立てられる。他の2人が武器をよこせとロロたちに向かってくる。


 リリスからある程度離れたところで、ロロが冷静に詠唱する。


**「ヒート・グラウンド!」**


 片方の男の足元から、ロロの炎魔法が仕掛けた火柱が一気に噴き上がる。トラップ型の炎魔法だ。


「ぐわあああ!」


 火が全身を覆い、男は転げ回る。


「おいっ!」


 もう一方が慌てると、その真後ろにアーサーが立っていた。


「いつの間に……」アーサーの一振りが、光魔法で強化された**ガントレット**の一撃となり、男を容赦なく吹っ飛ばす。


「お前ら、こんなことしてただじゃおかねぇぞ!」


 振り落とされたナイフはリリスの胸元に刺さると思われたが、リリスの体をすり抜け、自分の胸に刺さる。


「ゴフッ」


 血を吐き、膝をつく盗賊。


「痛そぉ……私の**幻影魔法**です」


 ヴィニーが、怯えながらも震える声で答える。


「いつまでも、いつまでもストーカーなんかして!」


 背後から、無傷のリリスが現れる。


「何が起こってる!?」


 吐血し這いずりながらもがく盗賊。


「俺達、完璧じゃね?」ロロが言う。


「上出来だ」


 ルーシュは、吐血している男を湯口へ向かって蹴り飛ばす。


 熱々の湯口付近の温泉に、ロロの魔法で燃えている盗賊が飛び込む。先ほどアーサーに吹っ飛ばされた盗賊もここに入っている。


 3人は、熱さと炎の痛さにもがく。


「すまなかった。助けてくれ! 金で雇われただけなんだ!」


 盗賊は、見苦しく命乞いを始める。


「私のパパは、たった一人で国のために頑張っていたの! **裏切り者なんて言わせない!**」


「だから、俺達じゃ……」


 盗賊たちはたじろぐ。彼らには、この少女の怒りが理解できなかった。


**「アイスフォール!」**


 リリスは背丈ほどの大剣を大きく振り下ろし、あたり一面の熱々の温泉を瞬時に**凍らせてしまった**。


「熱かったんでしょ。ふんっ!」


 華麗に決める少女。氷に閉じ込められた盗賊たちの顔は、絶望に歪んでいた。


「ヴィニー、アーサー……一瞬であんな威力出せるか?」


「「無理、無理」」


 2人は声を揃えて言った。リリスの隠された実力は、ルーシュの想像を遥かに超えていた。


### 勝利の裏側と作戦会議


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

**数時間前**


「温泉だぁ!」


 そろそろ野営の準備をしようと場所を探していると、ツンと指す匂いであたりを探していたところ、温泉を見つけたのだった。


「今日はゆっくりと温泉だな」ルーシュはひと息つけると安堵した。


「それと、ちょうどいい。**お前らだけで追手どうにかしてみろ**」


「ええ~何のためにお前いるんだよ」ロロが文句を言う。


「俺は子守じゃねぇ」


「子守とか言うな! 護衛だろ!」


「護衛? どういうこと?」


 リリスは不思議そうに聞く。リリスは、他のメンバーが王族、ましてやルーシュが賢者とは知る由もない。


「いやいや、ちょっとした冗談だよ」ロロが焦る。他の2人もロロに鋭い視線を送る。


「仕方ない。じゃぁ、ヴィニーはアーサーと偵察、隠密して絶対にバレないこと。俺は下準備してくる。リリスちゃんは報告待って、作戦考えようか」


「了解」


 ロロはああ見えて、状況判断と的確な指示ができている。自分では当たり前だと思っていて気づいていない、**リーダーとしての才能**だ。


 ヴィニーは特殊な能力持ち。幻影や隠密、索敵といった人を選ぶ能力の複数持ちであり、重宝される人材。王家にスカウトされるだけはある。


 アーサーも落ち着いていて判断能力及び戦闘能力が高い。光魔法と王族屈指の実力者だ。


「3人ですね」


 ヴィニーらが30分ほどで戻ってきた。


「隠密能力持ちですね。結構近づきました。こっちより精度は低く、隠密のみで姿を隠したりはしていませんでしたけど」


「いかにも盗賊。殺しも受けているとなると実力はそこそこ。3人なのはコソコソするタイプ」


「なんだ、ジャックさんとかクシィさんっぽい陰キャタイプねっ」


(アイツラいなくてよかったな)リリスの一言と無邪気な笑顔が、余計にきつく聞こえる。


「なら作戦は**囮作戦**で。でもルーシュの嫌いな逃げ回る作戦じゃなく、ちゃんと考え尽くされた完璧な作戦」


「というと?」ルーシュが不思議そうに聞く。


「ふっふ~、まぁ黙って見てるこった」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 と、こんな感じでまんまと罠にかかった盗賊ども。


「子供を舐めてるからこうなるんですよ」


 アーサーが最後に言った。リリスの怒り、ロロの戦略、ヴィニーの幻影、アーサーの剛力。この王国の次世代を担う子供たちは、確実に成長していた。


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