パーティーと...前衛VS後衛スタート
トーナメントが終わり、午後五時。学園の許可を得たパーティーが賑やかに始まったが、午後八時までの条件付きだ。最初は喧騒と歓声で溢れていた会場だが、デンが火をつけた。
「そろそろ、優勝者インタビューでも行きましょうか!」
この一言で、周囲の盛り上がりは最高潮に達する。
「前に出ろ、ルーシュ!」「歌え~!」「踊れ~!」「謝罪しろー!」
(いったい何を謝罪するんだ……)
酔ってもいないのに、このノリは勘弁してほしい。「そもそも、優勝賞品もないのに優勝者インタビューは受けん」と断ったが、容赦ない罵声が飛んでくる。「ノリが悪いぞ~!」「調子に乗るな、一言喋れ!」「アホ!」「ボケ!」(もう訳がわからん)
昔から人前は苦手だ。賢者とは、常に裏で密かに世界を動かす存在。こういうのは、勇者や前衛の切り込み隊長の役割だ。……そうか、これこそが**前衛が持つべき「仲間を引っ張る力」**なのかもしれない。
ルーシュは一つ大きく息を吸い、腹に力を込めた。一歩前に出ると、騒がしかった会場が一瞬で静まり返る。
「みんな、トーナメントお疲れ様」
彼の声が響き渡る。
「俺は前衛VS後衛が、この世界の未来にとって最も大切なことだと思って、みんなと訓練をしてきた。最初は無理だとか、無謀だとか、散々言われた。だが、訓練を重ねるうちに、みんなの目が『勝ちたい』という輝きに変わっているのを感じていた」
ルーシュは周囲を見渡す。その眼光に、全員が引き込まれる。
「このトーナメントを通じて分かったことがある。先生や賢者の資料から得る情報は、この時代の変化に全く追いついていない。古臭い知識だ。だが、それをこなしてきた今、ここにいる全員が、旧時代の常識を超えて成長していると感じた」
ルーシュはさらに声を張る。「ただ敵の前を走って、後衛に倒してもらうだけの時代は終わった。自ら考え、攻める立ち回りができる前衛になれば、後衛がパーティーに入れば、世界はもっと、もっと変わる。はっきり言う。俺たちが訓練した前衛組は、今や最強の一角だ!」
拳を突き上げ、熱を込める。
「まずは目先の戦いだ。後衛を叩きのめす! そして前衛主導で、来るべき魔王の戦いに勝てる戦力を作る。俺たち前衛組こそが、歴史を変える先駆者だ! みんな、準備はいいか? 打倒後衛組、行くぞ!!」
「おおおおおおおおおおおおおおお!」
爆発的な歓声が上がり、学園の屋根を揺らす。あいつ(勇者レオ)の真似をしただけだったが気恥ずかしさはあったが、仲間の歓喜に引っ張られるのは、悪くない気分だ。
「何だよ、お前。もっとクールなやつかと思ったら、なかなか熱い演説するじゃねーか」ジャックがニヤリと笑う。
「ルーシュ、かっこいい。これからもよろしくねっ」リリスがニコニコと微笑む。
「お前だけに良いカッコはさせねぇ」ロックが熱いハイタッチを求めてきた。
「言うねぇ。一番能力隠しているのは、まさかその熱いリーダーだったってオチですか~?」へらへらとイリュウが声をかけてくる。
仲間たちの熱意が、ルーシュの胸に染み渡る。このトーナメントは、皆を一つの目標にまとめる最高の経験になった。
「魔王を倒すって、まだ学生ですよ、僕たち。いつ攻めてくるかもわからないやつに対して、気張りすぎじゃないんですか?」と、メロが冷静に水を差す。
「気にするな、お前はしっかり学べば良いんだよ。この先、何がどう起きるかは誰にもわからん。だが、魔王は絶対に動く。その時は、絶対になにかが起こる」
「なんですかそれ? まるで魔王を知っているみたいですね」
「いいんだよ。今できることをしとけ。せっかくのパーティーだ、楽しもうぜ」そう言って、話を切り上げた。メロは勘もいいし頭も良い。今は少し厄介だが、この先の戦いには必要不可欠な一人だ。
後衛の傲慢と賢者の必勝戦略
パーティーの翌日。すぐに次の戦い、前衛VS後衛の準備が始まった。明後日に控えた決戦のため、後衛組との話し合いの場が設けられる。
向こう側には、スザクと、学園ランキング1位、3位、4位、5位を占める、後衛の精鋭四人が並んでいた。実力だけで見れば、この五人だけで前衛組を蹂躙できてしまうレベルだ。
こちらはルーシュ、ジャック、ロック、リリスがリーダーとして臨む。
「何だ? 子供が来るところじゃないぞ?」と、後衛の精鋭の一人がリリスに侮蔑の視線を送る。
反論しようとした瞬間、スザクがそれを止めた。「辞めとけ。あのグランドマスターの娘だそうだ」
「もったいない。最強の魔法使いの娘が、前衛職とはな」ガルの娘と知ってもなおこの態度。この男こそが、旧態依然とした後衛優位の象徴であり、一番厄介な相手かもしれない。
意外にもスザクは冷静だ。最初の悪役のような印象とは違い、最近はまともな奴に見えてきた。
無駄話はそれだけで終わり、最終確認はすんなりと行われた。
後衛が提示したルール
フィールドは、山、森、湖、砂漠、草原が入り混じった広大な大フィールド。
人数は20対20、制限時間2時間の一回勝負。
勝敗は、生き残り制で残存人数の多い方が勝ち(復活なし)。
スタート地点は、後衛が山、前衛が砂漠。
スザクが提案した条件は、広大なフィールドでの陣取り戦という、後衛に圧倒的に有利なものだった。これでは、まともに戦えば勝つのは難しい。
だが、ルーシュはニヤリと笑う。**ここまで戦略が見えたのなら、攻める方法はいくらでもある。**後衛がどう出るか、その思考の枠組みが見えたのだ。
どう攻められようが、古代の賢者である俺の経験をもってすれば楽なものだ。絶対に勝たねば意味がない。だが、一人の力ではなく、仲間の成長と力を合わせて勝利を目指す。
話し合いの結果を皆に伝えると、文句も出たが、ルーシュの作戦を聞き、全員が納得した。
主要メンバーは、ルーシュPT(ルーシュ、メロ)、リリスPT(リリス、イリュウ、アーサー)、ジャックPT(ジャック、レイン、クシィ、ティムズ)、ロックPT(ロック、デン君)で構成されている。Bクラスの仲間は控えに回り、各PTの控えをルーシュPTに加えた。最終調整に一日を使い、明日、歴史が変わる決戦の日が訪れる。
試合前夜、賢者の絶対的予言
「明日戦うわけだけど、ロロたちは出るのか?」とルーシュが尋ねると、ロロは黙っている。「いえ、私たちは控えです」とヴィニーが答えた。
「まぁ良いじゃねぇか。そもそも戦うの嫌いだったろ」と元気づける。
「ふんっ、コテンパンにやられてしまえばいい」とロロは言い返す。「ははっ、どっちにいってんだロロ?」「どっちもだ」まったく、面白い変わった奴だ。
「だが、良かった。お前たちには見ていてほしかった。今から話すことを考えて、しっかり試合を見ろ」とルーシュは真剣な眼差しで言った。
「何でしょうか?」とヴィニーが尋ねる。
「後衛の実力、前衛の実力、そしてどこで試合が決まったか、各々考えろ。後衛の自陣展開が5分で完了したら優秀だ。こっちの攻め方にいつ気づくか、いつ負けと気づくか、それでも作戦を変えあらがってくるのか。後衛の動きすべてに注目しろ」
ルーシュは自信満々に言い放つ。
「はっきり言う。現時点でこの試合、負ける要素がない。前衛はどう戦っているのか、前衛はどう後衛対策をしているのか、しっかりと見ろ。後衛の動きすべてを、俺が後手に回す。それで後衛がどう対処するかを見ろ。それが今のお前ら、いや後衛全員の課題だ。もしも俺たちが負けるとすれば、俺より強いやつがいた時だけだ」
「ん~それはないですね。わかりました、言われたとおりにします」とヴィ二ーは頷いた。
それだけ伝えて、ルーシュは早々に寝床についた。
開戦の合図
「さぁて、いっちょやりますか」
試合当日、ジャックが声を上げる。控室は緊張感が張り詰め、ムードメーカーのデンすら元気がない。
「おいっ、ムードメーカー、元気出せよ」ロックがデンを叩くが、デンは顔を上げない。
「気合入れろよ。作戦忘れるな。問題が起きたら各自対処しろ。そういった時が一番実力が出る。それができるやつを選んだつもりだ」とルーシュは皆を鼓舞する。
「選んだってこっちはほぼ全員じゃないですか」とメロがイチャモンをつけた。「うるせぇ、いいんだよ。結局ここにいる全員が強い」とルーシュは言い切る。「何を根拠に?」とメロが問い返す。
そのやり取りに少し笑いが起き、みんなの緊張が和らいだ。
フィールドは全ステージ混合。後衛が山スタート、前衛が砂漠スタート。後衛は山で見渡しを、前衛は砂漠で見晴らしの良さを避けるための配置だ。
「いよいよ始まる」とルーシュがそう言った。
「お前ら、健闘を!」
『ビィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ』と、大きな合図が鳴り響いた。




