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魔術の練習

 他にも魔術で何かできないか、と考えてみる。


(やっぱり火だよね)


 何がやっぱりなのかはさっぱり分からないが、銀次の中で魔法と言えば火らしい。

 魔力を練って、指先に出して火をつけてみようとするが、特に何もおきない。


 かなり多くの魔力を出すと一瞬だけ火が出せるが、すぐに消えるし、先ほど日本刀をゼロから作るよりも多くの魔力を使ってしまっている。


(魔力で直接火を生み出すのが無理があるのかな)


 火とは、何か。

 何かしらの燃料、たとえばガスとか紙とかが、急激に酸化して熱を出す現象である。

 何もないのに火をつけることに無理があるのではないか。


 そこで銀次は、魔力を放って急激に温度が上昇するイメージをする。

 すると、空気中の可燃性のものと反応したのか、炎が起こり小さな赤い火球を生成する。

 より温度を上げるようにすると、白から青へ変化していく。

 何が燃えているのか分からないので、温度は分からないが相当なのではないか。

 銀次は危険を感じ、温度をずっと下げて赤に戻し、それを離れた岩に向けて飛ばす。

 火球は爆散するが、岩を溶かすような温度ではなかったようだ。


 温度が上げられるのであれば、逆に下げられるのでは。

 銀次は次に、空中で温度を下げてみる。

 大気の中の水蒸気が液化して水になり、さらに温度が下がることで凝固して氷になっていく。

 石でやったように氷に硬くなるイメージを加えた上で、岩に向けて飛ばすと氷球自体は砕け散ったが、岩にも穴が穿たれていた。

 ただ、大気中の水蒸気を使うので、あまり大きな氷球は作れず、大きなものを作ろうとすると、直接氷をを生む必要があり、火球同様に大きな魔力が必要なようだった。


 生成した氷は、石を操作した感覚でイメージすると、自在に形を変えたり動かしたりできるようだったので、氷の短剣をいくつか作り出して飛ばすことで、岩に穴を開けることができた。



 ◇ ◇ ◇



(風耐性があったから、風魔法もきっとあるはずだよね)


 風ってことは大気を操作するんだろう、大気を操り風を起こすことをイメージしながら、魔力を放つと小さな旋風(つむじかぜ)が生じる。

 より魔力を込めると、風の勢いが増していき、大きくなっていき、竜巻というに相応しいものになっていく。

 洞窟のなかでやりすぎると自らも危険なので、その程度にしておき竜巻を消す。


 次は、大気中に真空を作り出し、それを刃の形にして前方に打ち出す。

 真空の刃は、岩にぶつかるも消失せずにそのまま岩を切り裂いて進んでいき、フッと消える。

 カマイタチと呼んでも差し支えないその刃の切れ味は、凄まじいと言えるものだった。


 他にも、空気を使って何かできないかと考えるが、真空の盾による魔法への防御や、突風による大規模殲滅攻撃など、ここでは試すことができなさそうなものしか浮かばなかった。


 あと、風を操って飛べないかと思ったが、いくら小さな竜幼生とはいえ、それを浮かべるほどの風を生み出すと周囲への影響が大きすぎるし、魔力の消耗も大きいため諦めざるを得なかった。



 ◇ ◇ ◇



 土火氷風と魔法らしきものは再現できた。

 とくれば、水もあるだろう。

 しかしここに水はない。


 先ほど氷を作ったように、大気中の水蒸気を使おうかと思ったが、さすがに使いすぎたのか乾燥しており思うように生成ができない。

 仕方なく、水入れの中の水を使うことにする。


 水入れの中の水を空中に浮かせて水球を生成する。

 その中の一部を鏃状にして打ち出して岩に穴を穿ったり、水球を龍の形にして自在に操ったりしてみる。

 また、水を霧状にして散布して、視界を奪うようにすることもできた。



 ◇ ◇ ◇



 銀次が竜になる前にやっていたゲームに、Last Illusionがある。

 国民的な有名RPGであるが、その中でも特にMMORPGとして出されたナンバリング作品は、仕事と家事育児に追われて時間がないながらも、よくログインして楽しんでいた。


 その中で魔法の属性として定義されていたのは、全部で8属性あり、火水雷土風氷光闇であった。

 銀次がいま練習している魔術で、再現できていないのは雷光闇になる。

 思い付きレベルだが、魔力によりイメージを実現する魔術であれば、これもある程度再現できるのではないか、と考えていた。


 ということで、銀次は次に雷に挑戦することにした。


 指先から魔力を雷で放出できないか試してみる。

 少しバチっとする程度のものは出せるが、まともにダメージが出そうな電撃を出そうとすると、やはり大量の魔力を消費してしまう。


 水などの経験から、無理に魔力で生成すると魔力の割に効果が低いことが分かっている。


 雷を直接出すのではなく、雷が落ちるような電流をなんとか発生できないだろうか。

 目標の周囲とその上で電位差が生じるように、陰イオンと陽イオンをが集まるようにイメージしてみる。

 日本の雷は、夏と冬で電位差の方向が変わると聞いたことがあるので、恐らく正負どちらでも雷は出せるのだろうが、イメージで上空に電子を、標的付近に陽イオンを集めてみる。

 かなりの電位差を生じさせたあたりで、轟音と閃光とともに標的となった岩に落雷し破壊する。


 ただ、落雷事態は自然現象で、目標にうまく落ちないこともあるので、誘導したい経路に導線をイメージしてやると、途中にうまくイオンが配置されるのか、すんなりと目標に命中するようになった。

 他にも単体目標の強烈な落雷だけではなく、範囲に稲妻をばら撒くような形での電撃も実現できた。

 うまく事象をイメージできれば、少ない魔力で素早く実現できるのだが、これは銀次が元々物理や化学の知識をある程度持っているから、言わばチートとも言える能力なのだが、本人は気付いていなかった。



 ◇ ◇ ◇



(あとは光と闇か・・・これは難しそうだな)


 だいたいのゲームだと、その名の通り光の明るさと闇の暗さを扱うだけではなく、回復魔法や対アンデッド用の神聖魔法、呪いなどの暗黒魔法など、特殊な属性である事が多い。


 まずは簡単そうな単なる光源だが、光量子を生成することをイメージすると簡単にできた。

 逆に、周囲の光を吸収するようなイメージをすることにより、標的を暗黒に包むことができるようだ。


 回復魔法は、ゲームのような瞬間的に傷を癒すのはイメージが難しい。

 継続して自己治癒力を増進するような形であれば、なんとなくできそうな気がする。

 細胞を増殖させることで、傷を癒したり欠損を修復することもできそうだが、癌細胞のような弊害が出そうで怖い。

 逆に、体の反応を遅くさせることで、呪いのような状態を作り出すこともできそうだ。

 ただ、これらの検証は自分にやるのは怖いので、今はできない。

 いずれ魔物相手に少し試してみるか、と怖いことを考える銀次であった。



 ◇ ◇ ◇



 そして銀次は、遭遇した魔物に対して色々と試してみる。


 土や氷で作った鏃や、真空の刃、雷撃はそれほど魔力を込めなくても、この洞窟の中で出会う魔物であれば簡単に倒すことができた。

 光を収束させることで作り出すレーザーは、威力が高すぎるようなので注意しないといけなさそうだ。

 回復は、自己治癒力の促進だけではなく、細胞増殖を促すことをイメージすることでかなりの傷も癒せることが分かった。


 ただし、魔物の体液を直接沸騰させたり、血流を止めたり、相手の体組織を直接分解するようなことは、大量の魔力を使う割に成功率も非常に低かった。

 相手との相当な実力差があっても、相手の身体を直接的に破壊することは、相当な抵抗があるのだろう。


 まだ単純なことしか出来ていないが、イメージ次第で大抵のことは実現できるので、もっと色々と工夫をしていきたいと思索に耽る銀次であった。


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