摩利支天の宴③
♩Mai Pen Rai
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宴が始まってしばらくすると、
街の灯りが遠く下に広がり始めた。
地上では誰かが仕事を終え、
誰かが恋人と歩き、
誰かが明日の不安を抱えて眠ろうとしている。
だがその屋上だけは、
少し時間の流れが違っていた。
マロンのマジックは相変わらずだった。
コインを消したと思えば、
客の思い出を取り出し、
カードを切ったと思えば、
未来の冗談を先に披露する。
姫は笑い、
ジンは静かに頷き、
チャンは
ビールを楽しむ。
ボスは
そんな光景を眺めながら
珍しく黙っていた。
ふと、
「なあ。」
とボスが口を開いた。
「ここは何なんだろうな。」
誰に向けた言葉でもなかった。
マロンはグラスを磨きながら笑う。
「テーマパークですよ。」
「こんなボロいテーマパークがあるか。」
「あるんです。」
そう言ってマロンは夜空を指差した。
「有名な場所はみんな知っている。
でも本当に面白い場所は、
地図に載らない。」
風が吹いた。
遠くで汽車の音が聞こえた。
「ここに来る人は、
何かを失った人が多いんですよ。」
マロンは続ける。
「夢だったり、
仲間だったり、
本来の自分だったり。」
誰も言葉を返さなかった。
その代わり、
それぞれが少しだけ思い当たる顔をしていた。
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ホクホクの出来上がった料理が運ばれる。
肉でも魚でもない、
名前の付いていない料理だ。
“
!
!!!
何これ!!!
世界で一番美味しい!!!
“
まるでプリンセスの食卓の様な料理に
ご満悦の姫が叫ぶ。
皆幸せそうだ。
実はその料理ー
こっそりと
近くのコンビニで仕入れられたものー
御足労のボスもご満悦だ。
昔どこかで見た夕暮れ
もう会えない誰かとの会話。
素晴らしい日々の野外食事パーティー
そんな記憶の味ー
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「なるほどな。」
ボスはふと静かに呟いた。
「ディズニーランドじゃない。
ここは記憶の遊園地か。」
マロンは肩をすくめる。
「マイナーですけどね。」
皆が笑った。
その時だった。
屋上の扉がギィ、と開く。
誰も呼んでいないはずの客。
足音が一つ。
暗い階段を上がってきたその人物は、
月明かりと共に立っていた。
マロンが珍しく驚く。
ジンもグラスを置いた。
姫は目を丸くする。
ボスだけが小さく笑った。
「おいおい。」
「次のレアキャラのお出ましか。」
摩利支天空間の宴は、
まだ終わりそうになかった。




