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ジェイ・ソーティ 自衛隊異世界任務記録  作者: EPIC
第2章「次なるフェーズ」
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Part19:「雷光VS蛇竜」

「な……なんだいこれは……!?」


 王都上空にて、大型の蛇竜(ワイバーン)に跨り操っていた帝国の若き女軍人は。

 目の前の宙空で仲間たちが、数の上では主力である飛竜騎兵部隊が。一瞬のうちに千切られ弾かれて散った光景を目の当たりにして、思わずの声を漏らした。


 今回の任務は、最早死に体の王国の王都を落とすだけの物のはずであった。

 地上の兵どもは糧や戦利品を求めて必死だが。飛竜部隊に、そして特に精強とされる彼女たち蛇竜騎にとっては、貧弱な敵を啄むだけの一方的な狩りのはずであった。


 だが、その「はず」は今の一瞬で覆った。


 突如として現れた正体不明の飛行体は、音を切り裂くが如きで飛来したかと思えば。

 相手を直接喰らい啄むことすらせず、そして魔術かすらも定かではない得体の知れぬ術で、飛竜騎兵部隊を瞬く間にボロ切れへと慣れ果てさせた。


「こんな……!ふざけんなっ!こんなことが……あってたまるかい!!」


 その事実に、これまで最強の名を欲しいままにしてきた己たちを、コケにされたも同然のそれに。

 彼女は、驚愕と同時に激怒。


「おまえたちぃ!何をボサっとしてんだい!ヤツをなんとしても墜とすよっ!!」


 次にはその感情のままに、己の指揮下の蛇竜騎たちに命じ、そして己が跨る蛇竜の手綱を打って引き。

 向こうへ飛び去った灰色の飛行体の追撃を開始した。



 順に進入し、機関砲砲火にて帝国の飛竜騎兵たちを千切り攫えた郷真機と鈴色機は。

 そのまま王都の真上を突っ切り抜けて、一度その先の上空へと上昇する。


《――効果はッ?》

《大だ。飛行生物の一部隊程を撃破》


 一撃から離脱したばかりの状態の、鈴色からの尋ねる言葉に。

 先行離脱した順序関係から、先に効果状況を確認できていた郷真が返し答える。

 言葉の通り、王都上空を脅かしていた飛竜騎兵は、今の進入からの機関砲投射でその多くが撃墜墜落に至っていた。


「――いや、待った」


 だが。郷真は同時に王都上空に別の「動き」を見て、訴えの声を発する。


「後ろ下方に動き――二体、いや四体程上がって来る」


 また王都上空、今に両機が通過した飛行進路よりやや離れた個所。

 今の機関砲投射を免れていた飛行生物が計四体、急激な加速上昇でこちらを追い始める姿が見えた。


「少し大きさに姿形が、様子が異なる」

《ドラゴン、いやワイバーン……手練れ?ちょっと警戒を――!》


 上昇離脱からの旋回行動に入りながらも、自分等を追って上がって来る飛行生物の様子を見降ろし、推察を零していた両機両名だが。

 二名が同時に、その飛行生物に発光現象を見たのは瞬間。


 直後――光線が。

 熱光線、レーザーの類と感覚で分かるそれが。両機編隊の後側方すぐ近くを飛び上がり抜けた。


《ッ!?》

「ブレイクッ」


 ほぼ直後、郷真が張り上げると同時かそれより早く。鈴色機は上側方、そして郷真機は反対下方に急旋回にて散会。


「各個判断でやれッ」

《了ッ》


 そして通信で最低限の言葉だけを交わし、両機は空中戦態勢へと突入した。



 ここで明かせば、襲い来た飛行生物――蛇竜(ワイバーン)の詳細の区別は『熱蛇竜』と呼ばれる希少種。

 体内の特殊な臓器で生成した熱エネルギーを、熱光線として高速で吐き出し撃つ特性を持つものであった。



 少なくとも今に垣間見え、そして感じた所から、熱光線に被弾すれば無傷では済まない。

 それを受けて郷真も「本気度」を上げ、より緊張の中に自分を置きながら。

 スロット操作で加速し、同時に操縦桿を強く引き。発生したGを感じながら機を急旋回させる。


「ッ」


 そんな郷真機を追うように、三発四発と熱光線が対空砲火の如きで上がって掠める。

 それに心地の良くないものを感じながらも、郷真はまた操縦桿を操り旋回方向に角度を変え。別方向への急旋回に機体を転じて相手を混乱させることを試みる。

 そして同時にその最中でも郷真は眼下に視線を向け、「相手」の様子を観察する。


 追撃者たるワイバーンは、さすがに速度でこちら追い付くことは叶わないようだが。

 滞空性に優れる点を活かし、無暗に追い縋ろうとするのではなく位置関係の変更のための飛行を行いながら。そして常にその首の向きでこちらを追って狙い、熱光線を吐き寄越し続けてきた。


「アレに居座られると厄介だ」


 単純な速度機動力ならばF-35Bや戦爆連合各機の比ではないが。空中砲座として居座られれば、ワイバーンの熱光線は捨て置けない脅威だ。

 そう感じた今も、一発の熱光線が向こう近くを掠め抜ける。


 その早急な排除の必要性を確かとした郷真、次にはその手順に入る。


 操作系を操り、F-35Bがそのウェポンベイに備える空対空ミサイル――AIM-9Xを選択。

 そして、照準するべく機首を相手に――旋回させる手間は必要なかった。


 AIM-9Xの性能と。

 F-35系のパイロット、今の郷真も身に着けるヘルメットに備わるヘッドマウントディスプレイ(HMD)。

それ等が実現する照準システムが、従来のヘッドオンの手間とリスクを無用とする。

 システムはHMD越しに郷真が見たものをロックオンし、そしてAIM-9Xは基本的に機の真横だろうと後方だろうと敵に向かって飛んでいく。


 次には、回避攪乱のための機動飛行を伴わせながらも、少し傾けた機のコックピットより。眼下下方のワイバーンを郷真は目視。

 同時に照準システムがその姿をロックオン。

 そして郷真が操縦桿の発射ボタンを押すと、機体下面のウェポンベイハッチが開かれ、一発のAIM-9Xがブースターを噴射して機を飛び出した。


 噴煙にて軌跡を描き、下方に急な角度で降下飛行していくAIM-9X。

 一瞬驚いたように見えたワイバーンが、慌てて迎え撃つための熱光線を吐くが。

 儚くもそれはAIM-9Xの近くを掠めるだけ行き違い、そして――


 直撃から、炸裂。


 ワイバーンの、そしてそれに跨り操っていた若き女軍人の。その体が爆炎に巻き包まれ、そして千切られ弾け散った。


「――ッ」


 郷真は眼下、ワイバーンの背に乗っていた騎手の人間が。HMDで視界補助されているとはいえ、おおよその姿でしかなかったそれが。

 しかしミサイル直撃の直前。驚愕、そして恐怖の顔を見せた気がした。


 そんなことを思ったのも少し。

 眼下に、今撃墜したワイバーンの相棒であったのだろうもう一体が。仲間の爆発四散した様に臆したのか、慌てその反転させて飛び去り逃走しようとする姿が見える。


「――悪く思うな」


 戦意喪失の相手を追撃することに気が引けたが、あの熱光線の脅威を持つ存在に、どこかに潜まれ伏兵となられては都合が悪い。

 最早、標的に対してヘッドオンを行う上での障害は無く。高価なミサイルを使用する必要も無い。


 降下を伴う旋回行動にて、もう一体のワイバーンを追う進路を取り。次にはHUDに表示されたレティクルに、その逃走する背中姿を捕まえ。

 引き金を引いた。


 そのワイバーンは機関砲弾の直撃と近弾炸裂を受け、空中で儚く砕け散り、そして欠片となって舞い落ちて行った。


「――」


 おそらく、この異世界では脅威の権化であっただろう存在。

 実際、接敵して熱光線を掠められた瞬間は肝を冷やした。


 しかし、そんな存在が結果。

 自身の手による淡々とした作業のような行動よって、砕け散ったことに。霧散して晴れる爆炎に混じり、塵となって舞い落ちて行った姿に。

 郷真は何か微かに、儚く苦い感覚を覚えていた。


「――ストレンジャー41、応答を」


 そんな感傷に浸ったのも一瞬。

 まだ鈴色機が、そしてもう一組の敵ワイバーンがどうなったか確認が取れておらず。郷真は通信に呼び掛けながら、機体姿勢を戻して警戒態勢を取り直すが。

 すぐにそれも不必要のものとなった。


「ッ」


 直後、背後下方より別のF-35Bのシルエット、鈴色機が通信に答える代わりのように飛び抜けて現れ。

 一度、郷真機の側方上方へと追い抜いてから、速度調整で横側方に付けて編隊を組んだ。


《状態は?》

無傷(ノーダメージ)

《こっちは二体とも撃破、そっちは?》

「同じく、二体」


 先んじて鈴色機側よりこちらの状態を尋ねる通信が来て、郷真はそれに答え。併せてそれぞれの撃破状況を交わす。


《見事――ドラゴンかワイバーンか知らないけど、レーザーなんて肝を冷やした》


 次には鈴色は郷真側の戦果を称える言葉と、併せて冗談交じりのようにそんな表現の言葉を寄越すが。

 台詞に反して、鈴色の声色は何か思う所あるようなものであった。


 おそらく、そんな驚異たる異世界の存在を。しかし冷淡までに淡々と撃破し、何か儚いものを覚えたのは彼女も同じであるのだろう。


「そんな大物相手にしてはお手軽だった、最新の翼と得物に感謝だな」

《……はァ、そうね》


 そんな鈴色に、またそんな淡々と返した郷真。

 郷真としては特段意図したものではなかったが。皮肉と取られたのか、鈴色からは何か言いたげだが止めたような声が返ってきた。


 そんな、当初こそ肝を冷やしたが結果は一方的なものとなった空中戦は完了し。

 作戦フェーズは次へと移行する。

空中戦描写ムズい。

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