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ジェイ・ソーティ 自衛隊異世界任務記録  作者: EPIC
第2章「次なるフェーズ」
18/21

Part17:「零れ落ちた王子と、雷光」

「――キョーマイチイ、スズイロイチイ」


 そんな二人の元へ、向こうから声が割り入り掛かったのは直後。。

 同時に視線を向けた二人が見たのは、いずもの艦橋構造物の方より、甲板を歩みこちらに来る二人分の人影だ。


「ウィリアム大尉」


 その内の一人、海自のものとは異なる海軍軍服に身を包む白人男性を見止め。鈴色が知っているその名を紡ぐ。


 イギリス海軍駆逐艦ダイヤモンドより、連絡調整将校としていずもに来ているイギリス軍人だ。

 そしてそのウィリアムの横隣にもう一人、何か多分に落ち着かない様子で一緒に立つのは、15歳前後程と見られる子供。


 ハーケィ王子。

 件の、幻龍帝国に侵略の手を向けられた王国、『リュシテ王国』より逃がされ落ち延びた王子だ。

 現在はいずも艦内で保護されている立場にあり、郷真と鈴色もここまで何度か見かけていたが。

 その可憐な顔立ちに華奢な容姿は、王子と教えられるまでは美少女、お姫さんだと疑わなかった程だ。


「出撃前にすまない、王子が二人とお話をされたいそうだ」


 その、落ち着かなそうにしている可憐な王子にまずはきっかけを作ってやるように、ウィリアムが先んじて二人にそう紡ぐ。

 ウィリアム大尉は伯爵の爵位を持つ身の上なのだが。日本人の爵位と言うものへの先入観と偏見も助けてか。

 都合が良いと言うように、ウィリアムは艦隊にてハーケィ王子の面倒を任されている。というか半ば海自から押し付けられているような状況にあったのだ。

 ウィリアムもその手の心得が無いわけでは無く、少し困りつつもそれを受け入れてはいたが。


「どうぞ、王子」

「申し訳ありません、伯爵……」


 そんなウィリアムの取り次ぎの後、ウィリアムの促しに礼と謝罪で返しながら。

 ハーケィ王子は郷真と鈴色の前に出て立つ。


「あ……あの……」


 しかし、どこか臆するところがあるのか。ハーケィは最初の一言を切り出すのに苦労している様子。


「やりにくいな」

「声にださないの……」


 そんな王子を前に、郷真が遠慮も無い様子で零したのはそんな言葉。

 それに鈴色が困惑でツッコミ、見守っているウィリアムも困った顔を思わず作る。


「あの……お二方はこれより出撃されると伺いました……っ。我が王国に、幻龍帝国の手に落ちかけているリュシテの地に……!」


 しかし幸いか、緊張状態のハーケィの耳にそれは入らなかったらしく。

 ハーケィは次には意を決したように、二人に向けてそう言葉を切り出した。


「どうか、どうかお救い下さい!我が王国を……民を……!」


 それは、懇願の訴えであった。


「逃げ延びた私などに良くして頂いております上で、他力本願のお願いとは存しております……!しかし今に恐れ苦しんでいるのは、罪無き民たち……!願わくば……!」


 本来ならば、王族である己が護り導かなければならない国の国民を。しかし力無くそれは叶わず、落ち延び悔い苦しむしかなかった王子の。

 希望に縋る必死の訴え。


 郷真も鈴色も、この異世界の言語の習得度は程々といった所であったが。

 その訴えるところは、十分に伝わってきた。


「――すでに乗り掛かった舟」


 その王子の様を見ていた郷真が、次に静かに発したのはそんな言葉。


「大きいことは言わない主義だ、しかし最大限を尽くしましょう」


 そして紡がれ向けられたそんな言葉。

 それは王子の懇願を受け入れ、任されることを承諾する確かな一言であった。


「!……あぁ、感謝を!」


 それを受けた王子は、泣きそうかと覆う程に顔を緩め。

 王族式の礼を伴い、頭を下げて見せた。


「王子、頭をお上げください。我々の出撃は騒々しいものとなります、大尉と一緒に艦内へ」


 次には鈴色が声を掛け、王子に頭を上げてもらうと同時に、艦内への退避を促す。


「大尉、お願いします」

「あぁ、そちらも武運を。王子、こちらへ」


 そしてウィリアム大尉にまた促され、王子は艦内へと引かれ戻されて行った。


「大変だな、王子様ってのも」

「そんな程度じゃないでしょう……その重圧を降ろしてあげるためにも、半端な仕事はできないよ」


 大尉と王子を見送りつつ、変わらずの淡々とした色で他人事のように言った郷真に。

 鈴色は呆れ渋い顔色でそう返し、しかし次には取り直してそう促す。


「分かっている」

「ホントに?――まぁいいわ、上で会おう」


 それに返した郷真に、鈴色は疑問の色を向けたが。

 次には切り替え、そう伝えると。彼女は後方の発艦スポットに駐機する、彼女の乗るべきF-35Bへと向かった。



「――と」


 機体に掛けられたタラップを上がり、郷真は自身のF-35Bの操縦席に飛び込み収まった。

 手元の操作系の一つを操作し、キャノピーを閉じ、狭くも慣れ親しんだ空間を感じる。


《――ストレンジャー32、発艦前チェックを開始してくれ》

「了解」


 次には待っていたというタイミングで、いずもの航空管制室より要請の通信が来る。


「右主翼、ヨシ――左主翼、ヨシ――」


 操縦桿にペダル類を操作しながら、同時に振り向きキャノピーより機体外部を見て。主翼のフラップが正常に動作していることを目視確認。

 同時に、飛行甲板上でチェックを行ってくれるデッキクルーから問題なしの合図を受け、ハンドサインでそれに返す。


「火器系――連動正常」


 さらに火器操作系、トリガやミサイルボタンのテスト動作を行い、正常であることを確認。

 他、必要とされる発艦前チェックが滞りなく進む。


「32、全てスタンバイ」


 全ての確認を終え、準備完了状態となり。通信で管制室に伝えると同時に、郷真はコックピットからいずも艦橋の管制室にハンドサインで合図を送った。


《了解32、発艦を許可するッ》


 管制から許可が下りる。

 同時にデッキクルーが所定の位置に退避し、誘導員が屈みながら発艦のゴーサインを出す。


「――フゥ」


 ほぼ一瞬、一呼吸の時間を置いた後に。

 郷真は該当の操縦系を一杯まで操作し、エンジン出力を最大まで上げた。


 バーナーが吹き唸り、「クンッ」と機体が全身を開始。

 正規空母のカタパルトを用いた射出には及ばないが。郷真を乗せたF-35Bは限られた飛行甲板の間で急激に加速。


 いずもの甲板が終わるとほぼ同時の直前に、その機体をフワと持ち上げ――大海原の上空へと飛び出した。


《32――滑らかだ》

「どうも」


 無事の発艦を向こうでも確認したのだろう、いずもの管制室から発艦を評する通信が寄越される。

 それを聞いて返しつつも郷真は操縦桿を操り、機体を上昇を伴う旋回行動に入らせる。

 相棒、二番機である鈴色を待ち編隊を組む為だ。


 旋回反転しながら安全高度に機を到達させ、その際に同時に、すれ違う形で眼下に今しがた飛び立ったいずもを見る。

 また同時にちょうど甲板上を、続いて発進した鈴色のF-35Bが離艦する姿が見えた。


《ストレンジャー41――32に負けないスマートさだ》

《ありがとう》


 通信に、発艦した鈴色機と管制室のやり取りが聞こえる。

 それを聞いて程なく、艦隊上空を旋回する郷真機に鈴色機が追い付き。二機は編隊を完成させた。


「編隊形成完了。ストレンジャーユニットは方位を080に取り、戦爆連合との合流及び作戦空域への到達を目指す」

《ストレンジャー、了解した。ご武運を》


 艦隊上空で旋回を続け、取るべき進路方位に機を乗せながら。郷真はいずも管制室にこれからの行動を再確認のために伝える。

 そして管制室からは武運を祈る言葉が返され来る。


「いくぞ」

《了解ッ》


 そして郷真は二番機の鈴色機に向けて淡々と紡ぎ。鈴色からは反した息巻いた声色で返事が寄越される。

 そして次には二機は取るべき進路へ機首を向け。エンジンを吹かし、艦隊上空を離れて目的地へと飛び去った。



「……すごい」


 いずもの艦橋で、ハーケィ王子はウィリアム大尉や他海自隊員に混じり。

 発艦の一連の光景を見守り、そして圧巻されていた。


「比類なき力を持つ空の戦士……どうか……!」


 そして艦隊上空を飛び去った二機の軌跡を追って見つめ続けながら。

 そう、強く願う言葉を紡いだ。

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