Part12:「魔獣VS鋼鉄」
「――糞ォ……!ふざけやがって!こんなの冗談じゃねぇぞォ!」
出現した、巨大な恐竜型の生物。
その背には、野盗たちの頭目の大男の姿があった。
頭目の男の手には、何か大粒の水晶が。加工されて枠に嵌められたものが、握られているのが見える。
それは、『魔獣召喚石』と呼ばれる魔法道具。
そしてこの巨大な恐竜型生物こそ。それにより『召喚』、転移出現させられ現れた『召喚魔獣』と呼ばれる魔法生物の一種。
この世界にて、騎乗動物や動物兵器として扱われるもの。
補足し明かせば、これは野盗の男が。
ここぞという時のために、非合法の経路で大枚をはたいて手に入れたもの。
正体不明の存在――自衛隊の登場により、手下を瞬く間のうちに失い。
それ故、ここぞと言う時のための召喚魔獣を繰り出さざるを得なくなった。頭目からすれば得体の知れない、そして『収穫』を邪魔された不愉快な状況に。
頭目はその顔に剣幕を浮かべ、唸る様に怒りを口から漏らしている。
「この俺様をコケにしやがって……許さねぇ!全員焼いて、踏み潰して、皆殺しにしてやらぁ!!」
そして野盗の大男は、怒りの感情に任せたまま。握る召喚石に念じ、跨る恐竜型魔獣を進ませけしかけた。
「なっ!」
「ったくッ」
巨大な恐竜型生物の、それも目に見えての脅威であろうそれの登場に。
御邸は率直に驚き。須藤は忌々し気に、隠さぬ悪態をまた吐く。
「召喚魔獣です!彼らはあんなものまで手中に……!」
その背後より、女村長がその存在についてを簡単だが発し伝えてくる。
「よくは知らないが、頑丈で厄介そうだッ」
「た、対戦車火器射手!用意を……!」
女村長のその言葉を受けながら、須藤はまた零し。
御邸にあってはあからさまな慌てる色で、第1分隊の要員に対戦車火器の用意を指示する。
だが次にはその恐竜型生物、召喚魔獣は。その巨体に似合わぬ俊敏な動きで踏み出し、こちらに向けて突進を仕掛けて来た。
「チィッ!」
その強襲の動きにまず応じたのは、近くに止まる共通軽装甲車の車上の薩摩。
薩摩はターレットに据えるM240Gを旋回から、発砲。
続けてそのまた近くの別方からは、第1分隊の同じく共通軽装甲車車上より、ターレットのMINIMI Mk.3が扱う隊員の手で唸り。
両者からの火線が召喚魔獣へと向き、叩き込まれた。
だが。それぞれの火線は、召喚魔獣の体の表面に容易く防ぎ弾かれた。
鱗が強固なのか、肉が分厚いのか、その両方か。それが銃弾をも防ぎ弾いたようだ。
「ジョーダンッ!?」
悪態を張り上げる薩摩。
そして次には、突進で迫っていた召喚魔獣はこちらに至り。薩摩の乗る共通軽装甲車に向かって体当たりでの強襲を仕掛けた。
「ッ!」
「のわッ――!?」
間一髪。運転席に戻った加納がアクセルを踏み込み、急速発進が間に合った。
「――ぶねェッ、ギリだったぞッ!?」
共通装甲車は召喚魔獣のその足元を煽る様に走り抜けて、その先へと逃れ。
その車上で薩摩が振り向きつつ、冷や汗をかいて声を零す。
「まだ来るぞッ!」
だが、隊員の内からまた誰かが警告を張り上げる。
召喚魔獣は突進が空振りに終わり、そのまま突き抜けた先で。しかしまたその巨体に反した軽やかさで、ドリフトの様相で転回回頭。
そして、その顎を掻っ開き。その喉奥に微かな光源が見えたかと思った瞬間。
それは――巨大な火玉へと変わり。そして投手の投球の如き動きで、召喚魔獣の首を薙ぐ動きで撃ち出された。
狙われたのは。いや、狙い図った攻撃なのかも定かでは無いが。
それが飛んだ先にいたのは、先の御邸の指示で対戦車火器の84mm無反動砲(B)の準備に掛かっていた、対戦車火器射手の隊員等。
「おぁッ!?」
だが襲い飛び来た火玉を、隊員等は装填行動を中断して飛び退き退避。
直後に火玉はその場に直撃して、地面を大きく焼いたが。隊員等は間一髪それの被害を間逃れることに成功した。
「!――散会!距離を取りなさい!」
冷や汗ものの光景を立て続けに見て、若干青ざめていた御邸は。しかしそこで声を張り上げ、周辺の各員に行動を指示する。
「アレの動きをよく見て!可能なら火力を集中!併せて住民の皆さんを退避させて!」
各行動を示す御邸の言葉。
それを受けるが早いか、周囲の各員は半数は召喚魔獣を相手取るべく散会して向かい。半数は村人たちの退避誘導に取り掛かる。
「強火力がいるッ――常陸11、所在知らせ!集落に脅威出現、武蔵10他は大型生物と対峙中ッ!」
その隣近く。須藤は同じく目撃したその召喚魔獣の脅威度を測り。全体の指示は御邸に任せ、自身は対処のための手配を始めていた。
自身の着ける簡易通信機に言葉を向けている須藤。
《集落のすぐ側、合流中ッ。そちらまで30秒は掛かりませんッ》
それに呼び掛けた相手からは、すぐにその旨の返答が来る。そして伝えられた言葉の通り、「それ」はすぐに到着して現れた。
須藤等の背後向こう、集落外周の家屋の影。
そこから、ヌっ――と現れたのは、鋼鉄の巨体。
第101前進観測隊の機動戦闘車班に組み込まれる――16式機動戦闘車。
それが、その装輪の走行形態を活かした快速さで早急に到着し、村内に走り込んで来たのだ。
《常陸11より武蔵10、該当を目視ッ。トンデモないのが現れたモンだッ》
その16式機動戦闘車の車長より、次には召喚魔獣を目撃してのそんな軽口が寄越される。
「11、敵は俊敏だ。これ以上暴れられる前に仕留めたいッ」
《了解。各隊へ、これより叩き込むッ。距離を取り退避をッ》
そんな須藤は要請の言葉を送り、16式機動戦闘車側からは了解の返答が返る。
そして16式機動戦闘車は走行行動を続けながらも。その照準のため、その砲塔を動かすを見せた――
「――マジでデカブツ生物だッ」
視点は16式機動戦闘車の車内、砲塔内。
キューポラから頭を出して直接召喚魔獣を目視している車長が、そんな声を零す。
「装填、ヨシッ」
それも束の間。
次には105mmライフル砲に砲弾を叩き込み、装填を終えた装填手から知らせる声が上がる。
「装填了解。砲手ッ」
「対象追ってます、照準中ッ」
「了解、完了次第撃て」
車長は装填手へ了解を返してから、砲手に呼び掛ける。
その砲手は照準スコープを覗きながら、自身の行動の状況を返し。それを受け、車長は砲手に射撃のタイミングを任せる旨を発する。
「――捉えた」
その直後。砲手は照準のクロスの中心に、今も暴れ動く召喚魔獣のその図体を収め捕まえ。
そのトリガーを引いた。
瞬間――けたたましい砲声が唸り上がった。
105mm砲から撃ち出された砲弾は、照準の通りに召喚魔獣の巨体へと飛び――見事に命中直撃。
召喚魔獣のその巨体は直撃の衝撃で一瞬、宙に打ち退けられて浮かび。
しかし同時に発生した爆発炸裂が、その巨体を包み隠した。
「――ッ」
一瞬、固唾を飲んで状況を見守っていた車長や砲手等が。しかし次に爆炎が晴れた先に見たのは。
そのどてっ腹の肉が抉られ、こそがれて失い。胴側面の全体に、がっぽりとクレーターの如き大きな穴を開け。
そして、その巨体を地面に沈めて息絶えた、召喚魔獣の姿であった。




