公開前夜なのにデバッグが終わってなくて笑えない
コンチワ!初めての方は初めまして!
初心者が始める連載なので生暖かい目で見守ってください!
導入なので短めでっす。
ベータのバグレポート数件とコーヒー、それが今朝の朝食だった。
トークアプリでファイルをアップロードした瞬間、空かして止まない腹が急にまだかまだかと俺に訴えかけてきた。なんなら手も震えてきた。
「!……まずい。糖分」
確か三段目に桃缶があったはず。
危ない危ない、このまま気を失ったら死ぬところだった。震える手で缶をこじ開けてそのまま口に掻き込む。
甘さが喉を落ちていくと同時に、ようやく人間に戻れた気がした。
「井崎さ~ん。終わりました?」
間の抜けた声が聞こえる。
振り返ると、デスク越しに今野が顔だけ覗かせていた。小柄な体に似合わず妙に存在感のある目が、俺の顔を見るなりわずかに細くなる。この女は昔からそうだ。俺が限界のときほど、何事もなかったような顔をして現れる。
「終わったよ。ところでこの後飯でもどうだ」
「セクハラですか?訴えますよ?」
即答だった。口元は笑っているくせに目が笑っていない。
研修のころからの付き合いではあるが、こういう風にはっきり自分の意思表示ができる性格が俺と似て、逆に気を使わなくていい楽な関係だと感じる。
「それはいかん。代わりにお上に賞与に色をつけといてやれと言っといてくれ」
「ふふ。これでも感謝してるんですよ?」
今野がpcを落として身支度を始めた。俺もそろそろ帰るか...
定時過ぎでも髪一本乱れていないと感じさせるのは、こいつの妙なところだと思う。モデルには届かないが整った顔立ちをしていて、それが無表情に近い顔に乗っているせいで、初対面の人間はだいたい最初の一言で面食らう。
美人なんだが、こいつはもう少し感情を表に出したほうが愛嬌ってやつがあると思う
「当たり前だ。なんだってリードプランナーにコーディングをやらせるんだ」
「プロデューサーのPVが思ったよりバズっちゃったからですかね。だからベータで想定より倍の人が来て、その分見つかるものが多かったってだけですよ」
今野はそう言いながら、俺のデスクに積み上がった空き缶とコンビニの袋を一瞥した。何か言いたそうな顔をして、結局何も言わなかった。
そろそろ片さないとまずいか。
潔癖症ってわけではないが、女性はある程度綺麗好きな人が多いからどこか思うところがあるんだろう。
「こんなに反響があると思わなくて人数制限を設けなかった馬鹿とは思えない手腕だな」
あいつはあいつでこの小さい会社に収まるタマではないんだよな。
会社がここまで大きなプロジェクトを進める資金を調達できたのも、ほぼほぼアイツのおかげと言っても過言ではない。
ただ少し、自分の能力を過小評価する癖があり、保険の上に保険をかけて業務を行うせいで、余計に成果が出てこちらとしてもいい迷惑だ。
「無料で打てる広告は打っとくべきだ!って言ってましたからね」
「そうだな。人の口は一番の広告だ。身をもって知ったよ、まったく。俺のどこが天才プログラマーだか……コーディングは嫌いなんだ」
本音だった。好きなのは設計やレベルデザインであって実装じゃない。それを今さら言っても仕方ないが。
結局自分の脳みその中の考えてることを知るには実際に見せた方が百倍速いから、寝る間も惜しんでアルファ版を作って見せたらコレだ。
「まぁ、噂ほどではなくても……プランナーとしてはありえない。この道で食ってきた人間のソレではありましたね」
「持ち上げなくてもいい。どこにでもいる社員なのに誰がこの噂を流したんだか……まぁ後藤のやろうか。これは昼飯十回はつくな……」
後藤の顔を思い浮かべると、それだけで疲れが三割増しになる気がした。
あいつもあいつで気が知れた中ではあるが、口が軽い。
どうせ天下のディレクター様に泣きついたリードプログラマーと出くわしたんだろう
「あの人は耳が早いですからね~。きっとどこかで納期に苦しんでるって知ったんでしょう」
「はぁ。それで終わるまで業務を付き合ってくれた優しい優しい今野さんは、どうして話しかけてきたのかな?」
我ながら嫌みったらしい言い方だと思ったが、今野は特に気にした様子もなく、ちょっとだけ視線を逸らした。ほんの一瞬だけためらった様子を見せたが、何か無くし物でもあるんだろうか?
「井崎さん。記念に居酒屋行きましょう、もうすぐ正式公開ですから」
「おいおい。俺が誘った時はセクハラだって断ったじゃねぇかよ」
「へへ、私から誘うのはセクハラになりません」
「なんだそりゃ」
最後までありがとうございました。
書き溜めを吐き出した後は、
21:00の毎日投稿をしようかなと思います!(≧▽≦)




