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断章

IFルート

 花と私の世界に影がチラつく。


 なに?


 わからない。

 わからないのに、沈む。


 意識が沈むのではない。

 意思のほうが沈んでいる。


 耳の奥で、音が増えている。

 音ではない。

 “意味になれなかったもの”が増えている。


 花と私には関係がない。

 そうだ。関係はない。


 なのに、ある。


 急に音が止んだ。


 止んだのではない。

 移動した。


 足元にある。

 花が宙にある。


 なぜ。


 でも花は花?


 関係はない。

 関係はないはずだ。


 舞っている。落ちている。

 落ちているのに舞っている。

 これは誰の記憶?


 花は花?


 そう言ったのは誰だ。

 私だ。

 私って誰だ。

 

 花を見る花が減っていく。

 地面が花になる。


 横たわっている私が増える。

 

 横たわっているのか?

 立っていたのか?

 わからない。


 花は花だ。

 花ははなだ。

 はなははなだ、

 はなは、なにだ。


 意味が削れていく。

 削れているのは花、

 私。


 わからない。


 影がいる?

 いない。

 いる。

 いない。


 いるのにいない。


 花が消える。

 消えたのは花か、見ていた私か。

 花が消え、私が増える。

 私が増え、花が減る。


 逆だ。


 いや、どちらでもいい。

 花。

 私。


 あったはずの問いが、途中で消える。

 肩。

 掴まれる。

 強い。

 いや、弱い。


 掴まれたのかどうかもわからない。

 振り向く。

 振り向かされる。

 誰が?


 どちらでもいい。


「ぼくをみろ」


 声がある。

 声ではない。

 こえ?

 形がある。

 形でもない。

 かたち?


 それでもそこにある。


 影。

 影ではない。

 かげ?

 僕。

 僕でもない。

 ぼ。



 

 ——かれ?


⸻


 どれだけ時間が経ったかわからない。

 時間があったかもわからない。


 僕を見る僕は、もういない。

 いたかどうかもわからない。


 でも何かはいる。

 アリス。

 アリす。

 アり。

 あ。


 それが何かはもうわからない。


 横たわる僕がいる。

 横たわっているのかどうかもわからない。


 ただ“ある”。

 僕がある。


 僕が僕を見ている。

 見ていない。


 取り込む。

 取り込まれる。

 消えていく。

 でもある。

 あるはず。


 取り込んでいるのか、失っているのか。

 わからない。


 僕が一つになる。

 一つって何だ。

 僕?


 崩れる。

 それでも続く。


 掴み、取り込み、掴み、取り込む。

 掴めない。

 意味が落ちる。


 意味が落ちた場所に、僕が残る。

 でもあれは僕を見ない。


 見ないのではない。

 見ているものが“僕”ではない。


 それに気づく。

 気づいてしまう。


 僕を見ろ!

 見ろ?

 みろ、

 ぼ。


 誰かがこぼれ落ちる。


——


 強烈な渇きで目を覚ます。

 あれからどれだけの時間が経ったのか分からない。

 肉の腐りかけた匂いに咽せてしまう。

 

 父であったものに、もたれ掛かるようにして、

 意識を失っていたみたいだ。


 頭がぼんやりする。


 そうだ、ライルさんたちは!?


 身体を無理やり起こす。

 そういえば、庭園にはあの香りが漂っていない。


 花があった場所に視線を向ける。

 あるべき場所に淡い光は存在していない。


 気づけば足がそこに向かっていた。


 人影が二人、そして花の葉が散乱していた。


「ライルさん!アリスさん!」


 彼らに駆け寄る。

 息を呑む。


 二人の目は空を切り、口がだらりと開かれていた。

 そして、

 なぜかライルさんの口元には、

 花ビラや花の根が付いている。


「っ!?」


 ライルさんの胸に耳を当てがう。

 弱い、だが確実に命はそこにある。


 しかし、反応がない。


 アリスさんは?


 彼女もおなじであった。


「起きて!起きて!」


 ゆすろうが、叩こうが彼らは何の反応もない。

 

 そこには、

 人の形を保っている残骸があるだけであった。

初めて書いたものでした。

なかなか難しいものです。

今後もぼちぼち短編を中心にして、

趣味くらいの感じで更新していきます。

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