第1章:呪われた好奇心
【前書き】
こんにちは、ミナミラストです。
本作は『これが私の本当の自分じゃない』というタイトルで、性転換(TS)・現代もの・家族ドラマ・学園コメディの要素を含む作品です。
※男性の精神が女性の体に入る話です。
※エッチな描写やコメディ要素を含みます。
※翻訳作品(スペイン語原作)となります。
ダニという少年が、裕福な令嬢シエナの体に目覚める――
本当の自分を探す、ちょっと変わった日常が始まります。
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それでは、第1章をお楽しみください。
雨は止まなかった。
ただの小雨なんかじゃなかった。激しく、果てしなく降り続く豪雨で、街路はひび割れたネオンの鏡になり、安ホテルの部屋は湿気と骨まで凍えるような薄暗さに沈んでいた。壁紙は黄ばんだ花柄で、まるで何年も前に諦めたみたいに剥がれ落ちていた。曇った窓を叩く雨音の他に聞こえるのは、向かいの壊れたネオンサインのうるさいブーンという音だけだった。ズズッ。ズズッ。まるで俺たちを嘲笑っているかのように。
三ヶ月。
九十三日前に、俺たちは寝室の窓から飛び降り、バックパックを半分だけ閉じたまま、心臓を激しく鼓動させながら逃げ出した。あれ以来、このクソみたいな安ホテル部屋――漂白剤の臭いと絶望が染みついた場所――が、俺たちの隠れ家であり、牢獄でもあった。
「なぁ、マイケル」
俺の声は湿った空気でくぐもっていた。「もう大学に戻る頃じゃないか?」
マイケルはベッドの端に座り、濡れた靴ひもをいじっていた。こちらを向いた。黒い髪が額に張り付いている。粗い灰色のタオルを取って、ゆっくりと疲れた動作で拭き始めた。何をするにも億劫そうだった。
「やめろよ、ダニ」
彼の声は平坦で、ユーモアの欠片もなかった。「今は冗談を言うタイミングじゃないだろ。お前、俺たち一緒に暮らそうって言ったよな?自分のビジネスを始めようって。あれが計画だったろ?」
「そうだな」
俺は頭を掻きながら言った。爪の下に溜まった垢が気になった。計画。いつもそのクソみたいな計画。夜中に暗闇の中で囁き合った時は、夢に酔って簡単に聞こえた。でも現実は違った。「でも金が一円もないとキツイよな……」
そこで閃いた。バカみたいに天才的なアイデア。疲れ切っていても、若さ故の欲が目を輝かせた。「おい!どこか行って金稼ごうぜ!」俺は飛び起きた。「カジノに行こう!」
マイケルは俺が翼を生やして飛べと言ったみたいな顔で俺を見た。首を振り、タオルを肩に落とした。
「カジノ?絶対勝てねえだろ、知ってるだろ」
彼は床に視線を落とし、カーペットの奇妙な大陸みたいな染みを眺めた。そしてベッドに仰向けに倒れ、天井の剥げた部分に向かって片腕を伸ばした。「普通に仕事を探そうぜ……」
声が少し震えた。「俺たちには無理だろ……」
「俺たち」という言葉が、重く部屋に残った。十九歳のガキ二人、独りぼっちで無一文、日々をどうにか凌いでいる。胸に冷たい悲しみが刺さった。外の雨のように鋭く。
「なぁ、マイケル」
俺は自信があるふりをしながら言った。隣に横になると、古いマットレスが沈んで体が寄り添う形になった。彼の腕の温もりが伝わってきた。「高校一年からずっと一緒だろ。試験も、クソみたいな先生も、家族も全部乗り越えてきた。俺たちならやれる。一緒になら」
長い沈黙。ただ雨の音だけ。マイケルが顔をこちらに向けた。一瞬、消えかけた光が彼の目に反射した。あの夜、俺についてきた勇敢な少年の目だった。
「……わかった。やってみよう」
俺の顔に、震える小さな笑みが浮かんだ。
「あの時みたいだな。夜中に職員室に忍び込もうとした時、覚えてる?」
俺は笑った。乾いた、緊張した笑い声が狭い部屋に跳ね返った。彼の肩に体を寄せ、温もりを求めて濡れたシャツの感触を感じた。
マイケルは笑わなかった。ゆっくりと腕を回して俺を抱き寄せ、顎を俺の頭の上に軽く乗せた。
「ああ……」
彼の声は遠くから聞こえるようだった。「きっと……」
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その温もりが、消え始めた。
急に目が覚めたわけじゃなかった。現実がゆっくりと溶けていくような感じだった。カビ臭いホテルの匂いが、湿った土と腐った葉、古老で野性的な何かへと変わった。窓を叩く雨が歪み――最初はささやき、次にシューという音になり、最後には見えない枝を揺らす風になった。
目を開けた。
そして、血管に氷が走るような確信が湧いた。
俺はもうあの部屋にいなかった。
冷気が襲ってきた。街の湿気じゃない。これは古く、土と腐敗の匂いがする冷気だった。地面に座っていた。土。枯れ葉と泥がズボンに張り付いている。
暗闇が完全に濃すぎて、自分の目が開いているのかさえ疑った。手を顔の前にかざした。何も見えない。胃が刃物のように抉られる恐怖。
「ここはどこだよ、クソッ!」
叫び声は虚空に吸い込まれた。反響もない。ただ、肌に感じられない風だけ。
すると声がした。一方向からじゃない。あらゆる方向から――黒い空、見えない木々、足元の土から。深く、古く、骨まで震わせる声。
「ほう……なかなか気炎を吐くじゃないか」
まるで子供の癇癪を面白がる大人のような、愉しげな響きだった。
突然、冷たい突風が顔に叩きつけられた。見えない木々が激しく揺れ、枝が軋み、ぶつかり合う音が耳をつんざいた。
「なんだよこれ、クソッ!」
俺は腕を上げて見えない何かを防ごうとした。
そして――完全な静寂。
風が止んだ。木々の音が消えた。俺は瞬きをし、途方に暮れた。暗闇はまだあったが、もう怖くはなかった。ただ……無だった。
「な……なんだよ今のは?」
見えない根に躓いて、濡れた落ち葉の上に尻餅をついた。痛みは本物だった。「おい!なんだよこれ!?」声が高くなり、恐怖と怒りで割れた。「木はどこだ!?いや、もっと大事な質問だ――お前は誰だ?ここはどこだよ!?」
「黙れ」
命令は鞭のように飛んだ。音じゃなく、顎を締め上げる命令だった。唇が強引に縫い合わされた。千本の針で口を縫われるような鋭い痛み。叫ぼうとしたが、喉から漏れたのはくぐもったうめきだけだった。
「んっ!んんっ!」
パニックで視界が真っ白になった。手で口を触った――縫い目も血もなかった。ただ、信じられない力で唇が押し潰されているだけ。
「俺はお前をここに連れてきた。目的と使命があるからだ」
声は俺の恐怖などお構いなしに続けた。「お前、ダニ・ツァイエル。俺に選ばれたのだ」
低い唸りが大きくなった。風が俺を中心に渦を巻き、どんどん速く、強く。俺は地面から浮かび上がり、土の下はもうなかった。枯れ葉、小枝、土――全てが渦に巻き込まれ、ますます激しく、荒々しく。空気と怒りの牢獄。
「んっ……!んんっ!」
俺は飲み込まれていく虚空に抵抗した。(何なんだこれ?なぜ俺なんだ?俺が何をしたって言うんだよ!?)
「お前は何もしていない」
声は俺の心の叫びを読み取っていた。「ただ、俺がそうしたかっただけだ」
何かが俺の中で弾けた。恐怖が熱い怒りに変わった。血が煮えたぎる。拳を握りしめ、爪が掌に食い込んだ。
「聞けよ、このクソ野郎」
声から愉しげな響きが消えた。今は鋭く、命令調で、嵐の中の雷だった。「お前は実験体として選ばれた。目標に忠実に従え……」
俺の目は赤く、激怒し、無力に、灰色の渦巻く空を見上げていた。
「アジアの星座たちは俺より経験豊富かもしれないが」
声は少し拗ねたように付け加えた。「俺は『呪われた好奇心』だ。俺のやり方でやる」
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稲妻は光ではなかった。むしろ光の反対だった。
熱も音もない、ただ白く眩い閃光――全てを消し去る光。刹那、世界が消えた。森も風も俺も。あるのはその不可能な光だけで、その中心に何かが形作られていた。
手だった。
視界全体を飲み込むほどの巨大な手。
果てしなく黒く、光沢を帯びたジェットのような手。鋭い指が雲を引き裂いている。その大きさの前では俺は蟻同然だった。掌の皺一つ一つが峡谷で、線一本一本が深淵。
体が硬直した。頭の中が真っ白になった。恐怖が大きすぎて、他の全てを消し去っていた。ただ呆然と見つめることしかできなかった。
「そこへ送ってやる」
声が響いた――あの巨大な手から出ていると分かった。「そして、子を産め」
その言葉が、恐怖に凍りついた脳に染み込んだ。子?何?どうやって?
「子だって?何のために……!?」
手が落ちてきた。
動く時間も、叫ぶ時間も、言葉を終える時間もなかった。衝撃が全てだった。暗黒の山が押し潰すような衝撃。
骨が折れる音がした……
【あとがき】
第1章、お読みいただきありがとうございます!
突然の体が入れ替わり、暗い森、そしてあの巨大な手……
ダニの運命が一気に動き出しましたね。
次章では、ダニ(シエナの体)が目覚めた後の混乱と、初めて出会う家族が登場します。
ミサキとの出会いも少しずつ近づいてきますよ。
この物語はまだ始まったばかりです。
どうぞ温かく見守っていただけると嬉しいです。
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それでは、第2章もよろしくお願いします。
ミナミラスト




