最終話
「う、ううっ……ち、力が出ない? 何がどうなってるっていうのよ……」
目の前には膝をついて、動揺を隠せないでいる妹。
彼女は自分の身に起きたことを理解していなのでしょう。
「ジルの体内に含まれている魔力を全て私の魔力で吹き飛ばしました。暫く魔法を使うことは叶いません」
「はぁ? そ、そんなこと。余程の魔力に差がないと出来るはずないじゃない。ミネアなんかが、落ちこぼれのミネア姉さんなんかが私を上回るなんて……」
私はジルの魔力を全部吹き飛ばして彼女の魔法の発動を抑えました。
王宮に被害が出なくて良かったです。ジルは呆けた顔をしてブツブツ何かを呟いています。
見下していた私に自分が勝てなかったことが信じられない。そんな表情でした。
「呆けているところ、悪いが君は重罪人だ。極刑は免れんからそのつもりでいるんだな」
「極刑……!? そ、そんな、私は……聖女で……」
「このように大暴れする聖女が何処におる? 君に姉を身代わりに出そうとするところを止められるくらいの気高さがあれば、話は変わっていたのだろうな。――連れて行け!」
口をパクパクしながら愕然とした表情を浮かべるジル。
護衛の兵士たちが彼女を監獄へと連れていきます。
もう、アウルメナス家はおしまいでしょう。
それだけ、ジルの行ったことの罪は重いのです。
「で、ミネア。プロポーズの返事を聞いていないのだが」
「――っ!? ご冗談を。妹があれだけのことを犯したのです。我が家は責任を取らなくては――」
「今ここで結婚してしまえばミネアはベルゼイラ王家のものだ。手は出させないさ」
何事もなかったかのようにベルゼイラ王家に迎え入れると口にするシュバルツ様。
そこまで私のことを……。なんだか涙が止めどなく溢れてきて、止まらなくなってきました。
「我慢しなくて良い。今まで耐えてきたのだ。自分の感情に素直になっても誰も責めたりはせんよ」
◆ ◆ ◆
アウルメナス家は滅びました。
代々聖女を輩出していた名家と呼ばれていた我が家が一夜の内に。
不思議と悲しくなかったのです。涙が一粒も流れなかった私は冷たい女なのでしょうか。
長年、人として扱って貰えずいつの間にか卑屈になり、自分なんか幸せになっては駄目なんだ、幸せにはなれないのだと諦めていました。
ベルゼイラに送られた日。多分、私は一度死んだのだと思います。
家族から完全に捨てられて、生きる希望を完全に失ってしまいましたから。
でも――
今の私は――
「幸せだと思っています。私を助けてくれたシュバルツ様に、ベルゼイラ王国に、恩返しをするために……この精霊術を使っていきたいです」
「恩など感じなくてよい。この国の者は皆、新たな聖女に感謝しておる。君が私の妻になってくれて本当に良かった」
シュバルツ様は処罰が私にも及ぶところを全力で守ってくれました。
予言の力というものはこの国で絶大な力を持っており、約束された国の繁栄と天秤にかけるとなると、私を処刑することは良くないという勢力が強く何とか助かりました。
「自分を大切にするのだ。君の命はもう君のモノだけではないのだから。新しい命も生まれるのだから」
シュバルツ様は私のお腹を撫でながらそう声をかけます。
そうですね。一度は諦めかけたこの命ですが、拾ったからには――
「天寿をまっとう出来るように、精一杯生きようと思います」
「笑った顔が美しいと思っていた。最近はその顔をよく見られるようになったからな。私は毎日癒やされておる」
毎日、笑うことが出来る。それだけで人は幸せなのかもしれません。
ちっぽけな願いかもしれなかったですが、それが叶っただけで私は自分の人生が好きになりました――。
あの~、人質だと聞いていたのですが殿下はどうして私に求婚を?
~完結~
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※最後にお願いがあります!
現在、新連載を開始しておりまして、
【穢れた血だと追放された魔力無限の精霊魔術士〜「魔力を分けて欲しい」と頭を下げても、もう遅い。ホワイトな王立ギルドでSランク待遇を受けてるので】
というタイトルで、聖女になれなかった主人公が新たな才能と新たな仲間に恵まれて活躍するという内容でやっています。実はこの作品がプロトタイプとなっていまして、精霊術→精霊魔術となっていますが、より設定を練って完成度を上げた作品に仕上げるつもりです。
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