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第十三話

「それでは、聖女ジルを人質として要求すれば私が来ると読んでいたのですか? 最初から私がミネアだと知っていた、と」


 まるで最初から全てが仕組まれていたような、そんなことを告白するシュバルツ様。

 私がここに来ることを知っていたかのような口ぶりでしたので、彼に真意を尋ねました。


「いや、そうではない。流石に身代わりを寄越してくるという悪手を打つ可能性は低いと見ていたさ。予言では聖女ジルを人質として要求して、この国に送られてきた娘と結婚するべきだと出ていた。つまり、君がこの国にやって来た時点で本物であろうと偽物であろうと関係なく、君と結婚しようと思っていた」


「では、私はベルゼイラ王国に着いた時点で……」


「ああ、私が結婚するべき相手になっていたのだ。だから魔力量を測定したときは本物の聖女ジルだと疑っていなかった。偽物にあのような魔力があるはずがないと思っていたからな」


 シュバルツ様は私が欲しかったと答えた意味を話してくださいました。

 だから、あの時――人質を要求したのには他にも理由があると仰ったのですね。

 予言に完全に従うために彼はわざわざあのような手を――。


「それから君のことを色々と知った。聞いていた聖女の力を遥かに超えていたことも、それだけの力を持っているのに何故か自己評価が異様に低かったことも、私には不思議でならなかったよ」


「それだけで私がジルではない、と……?」


「何となく、な。聖女として絶大な支持を受けていたジル、その裏で無能者だと蔑まれていた双子の姉であるミネア。君のその性格や能力から想像するに、ずっと認められるように努力していたのではないか? そしていつしか聖女をも超える力を身に着けたが、それが日の目を見ることは叶わなかった。私には君がミネアに思えてならなかったんだ」


 私がミネアだと思ったのは、何となくの勘だとシュバルツ様は言われます。

 誰も目を向けてくれなかった頑張りも、それが徒労に終わった悲しみも、この方は私と過ごしたたったの一ヶ月で分かってくれた――たとえ、私が罪の責任を負うことになろうと、それだけで報われた気がします。


 ジルはシュバルツ様に手を出してしまった。我が家はそれだけで重罪です。

 いくら予言が私と結婚することを推奨したとしても、決して私や私の家族は許されないでしょう。

 願わくば、休戦協定だけは守って頂きたい。責任はアウルメナス家だけで収めて欲しいと思います。

 しかしながら、休戦協定の条件は既に破られていますのでそれも難しい願いなのかもしれません。


「シュバルツ様、覚悟は出来ています。今まで騙していたことも含めて、妹の不始末の責任も――」

「待て! そんなことより聞いてほしいことがある」


「聞いてほしいこと……ですか?」


 私はシュバルツ様に責任を取ると言いましたが、彼は「そんなことより」と大して興味を持たれません。

 聞いてほしいこととは何でしょうか……。


「ミネア、最初は確かに予言に従おうという義務感から君にプロポーズした。だがな、短い時間ではあったが君のことを知り、ひたむきな努力家だということも知れた。今はそんな君と国の為ではなく私自身の為に共に生きたいと思っている。もう一度、君にプロポーズさせてくれ」


「ぷ、プロポーズですか……?」


「そうだ! プロポーズだ! 君のことが愛おしい。理由はそれだけだ! 私の妻になってくれ……!」


 シュバルツ様は私に手を差し出して、二度目のプロポーズされました。

 これは夢なのでしょうか。あまりの熱量に心の中に刺さっていたナニカがドロドロに溶けてしまいました――。

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