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【番外編】 サイラス様の浮気?


妊娠も後期になるとかとにかく歩くのが大変になってくる。お腹が大きいからガニ股になるし足下が見えないから本当に辛い。


「早く生まれないかしら」


ついつい愚痴るのもいつものことでマリーは隣で笑っている。

そして最近の私は涙もろい。自分でもどうしてそこで泣くのって言いたいくらい変なところで泣いてしまう。


「どうしたのですか? 涙が溢れてますよ」


マリーの言葉で泣いていることに気づく。でもこの涙にはきちんとした理由があった。

昨晩サイラス様が戻ってこなかったのだ。夜会に出たきり部屋に戻ってこないなんて今までにはなかったことだ。

口さがない侍女たちが話していることを小耳に挟んだせいで涙が止まらないのだ。

侍女たちはもちろん王妃である私に聞かせるために話していたわけではない。私がすぐそばにいることに気づかなかったのだ。そう、私はまた『かくれんぼ』を使ったのだ。

この『かくれんぼ』は便利だけどいつも陰口を聞いてしまう。陰口というのはたいてい聞きたくないことが多い。


「ねえねえ、とうとうサイラス様が外泊されたそうよ」


「え? あれだけ奥様を大事にされる方でも誘惑には勝てないのかしら」


「本当に。がっかりですね」


「妊娠中の時の浮気は多めに見てあげないと」


「それはわかりますけど。王妃様は小さな身体で頑張っているのになんだか遣る瀬無い気持ちですわ」


偶然というよりは外泊したサイラス様のことを誰か知らないかと思って『かくれんぼ』を使ったのだから自業自得だった。

サイラス様が浮気? 考えたこともなかった。

でも確かにあれだけカッコ良くこの国の王様でもあるサイラス様はとてもモテる。誘惑があるのは当たり前のことだ。

でも浮気をするなんて思ってもいなかった。


「まさか側室をもらうとかはないわよね」


「それはないでしょう? 子供ができなくて側室をって話は聞くけど王妃様は妊娠中ですからただの浮気ですよ」


側室だなんて……でも王族ではよくあることだわ。法律でも認められてるし。私はフラフラとその場を離れた。

そして今マリーの前で泣いている。


「まあ、そんな話を聞いてしまったのですか? 『かくれんぼ』を使うからですよ」


「でもサイラス様が帰ってこられないなんて初めてで心配だったの」


私が涙ながらに訴えるとマリーが困ったように笑った。


「仕方ありませんね。カホ様には内緒だと言われているのですが、国境の方で何かあったようで様子を見に行かれたのですよ。浮気ではないですから泣き止んでください」


マリーは私を慰めるために教えてくれたようだが、それを聞いた私はさらに泣くことになった。

だって、それって戦争になるかもしれないってことにでサイラス様のことが心配で涙が止まらなくなってしまった。


「もうマリーはダメですね。そんな言い方をしたらカホ様がもっと泣くと何故わからないのかしら」


マリーの双子の姉であるメリーが現れた。彼女はサイラス様付きの侍女だ。


「大丈夫ですよ。ただの小競り合いで済んだようです。もうじき帰ってこられるとは連絡が入りました。泣き顔で出迎えられたらサイラス様が困ってしまいますよ。疲れた殿方に心配させてはいけませんよ」


メリーに言われて恥ずかしくなった。サイラス様は徹夜で疲れておいでなのだから私が泣き顔で出迎えるわけにはいかない。


「マリー、顔を直すのを手伝って」


「はい、かしこまりました」


私はサイラス様が帰って来る前にと思って小走りに歩いていたら、危ないですとメリーに注意された。メリーには敵わない。


「ねえ、マリー。さっきの話は誰にも内緒よ」


メリーがいないのを確認するとマリーに釘を刺した。サイラス様を疑ったことが知られたらメリーに何時間も説教されそうだ。


「もちろんですよ」


わかってますよとマリーが約束してくれたのでホッとした。


メリーはカホ様が泣き出した時にはもうそばに居たことはカホ様には内緒にしとこうとメリーは思ていることに私が気付くことはなかった。



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