〈TURN-4〉ミアと愛海、共同作戦に出る。
――ミアさん達が乗る遊覧船に襲いかかる『ティーチの使者』の攻撃!
奴等から逃げたり、助けを求めようものなら、容赦なく砲台の餌食になる。
遊覧船の船員含め、乗客の皆が不条理な攻撃に怯え、中には神に祈る者も。
彼等が狙う標的は遊覧船の乗客の1人であった。
その者とは、3年前『ティーチの使者』に脅迫されて強制的に協力させられていた男・伊佐教授。
彼等の残虐非道なやり方を恐れ、半年前に脱走したが、裏切り者として執拗に命を狙い、この遊覧船まで追い掛けてきたのだった。
「や、奴等は容赦を知らないんだ。睨まれたが最期、この船もろとも……!!」
「お父様……!」
伊佐教授と、その娘である架純だけでなく、遊覧船の乗客全員を道連れにする気でしょうか。
自分の不甲斐ない行動に、他者を巻き込んでしまうことを恐れ、教授は更に不安を増していく。
そんな中でミアさんが冷静に、これから起こす行動を承認させるべく伊佐教授に説明します。
「……今の状況からして、危険に晒されてるのは、この船に乗っている人全員です。私は皆さんを見殺しには出来ません。ですが私は、皆さんだけでなく貴方達も助けたいのです。
――だから、教授の背広の内ポケットに隠したジュエリーケースの詳細を、是非話して頂けませんか……?」
「し、しかし……」
伊佐教授は躊躇う。しかし敵の攻撃は待ってはくれない。船と船の距離を詰めていき、砲弾の威力は更に増していった。凄まじい衝撃に煽られる船室の状況を見て、とうとう教授は観念した。
「……分かった。ミリオンダイスの事といい、君は全て見通しているようだ」
そして、教授の内ポケットから大型のジュエリーケースが取り出された。
「この中身はワシが、『ティーチの使者』の連中から逃げ出すと同時に奪った物だ。これ無くして、ミリオンダイスの参加は出来ない……!」
教授から渡されたジュエリーケースを、ミアさんがその中身を調べる。
なんとそこには、純金で型取られた腕時計のようなもの。時計の針の代わりに半円の透明なドームが被さり、中には一寸大のサイコロが埋め込まれていた。このアイテムの正体は……?
「……【ディレクション・ダイス】。又の名を、方位磁針ならぬ方位サイコロ……ですね」
「いや、方位サイコロって何よ??」
愛海さんには何のこっちゃと、言わんばかりの疑問の目でディレクション・ダイスをまじまじと見つめていた。そして詳細は、持ち主である伊佐教授が教える。
「ミリオンダイスは、このゲームワールドのエリアの何処かに隠されている巨大双六のようなゲームだ。
そしてこの『ディレクション・ダイス』は、そんなミリオンダイスの舞台へ案内する方位磁針でもあり、自分が駒となって、進める為に必要なサイコロでもあるのだ。
『ティーチの使者』は、このたった一つの方位サイコロを使ってミリオンダイスを挑み、勝ち取った賞金で兵器を買って、罪もない庶民に略奪を繰り返したのだ……!」
そんな理不尽かつ残忍な目的でミリオンダイスに挑み、得た賞金でまた暴虐を繰り返す最悪の連鎖。
強制連行されたとはいえ、良心の呵責に苦しんだ伊佐教授は、ミリオンダイス参加の要である『ディレクション・ダイス』を奪い、今まで逃げていったのだった。
金を求める為なら、伊佐教授の命を奪ってでも取り返したいディレクション・ダイス。これで彼等が狙われる理由の合点がいった。
「……愛海さん。今の話を聞いて、輩の事を許せますか?」
「何を決まりきった事を言ってるの。許せないに決まってるでしょ! 伊佐さんだけでなく、関係ない乗客にまで危険に晒すなんて……!!」
ティーチの使者に対し、怒りを燃やすミアさんと愛海さん。伊佐教授達を護る為、いよいよ二人は奴等に対抗する為の作戦を企てます。
「伊佐教授、暫くの間ディレクション・ダイスを私に預けて頂けませんか? 大丈夫、輩に渡すような真似は致しません」
「それなら構わないが、いったい何を……?」
ミアさんに全てを託す覚悟の伊佐教授。大事な方位サイコロを彼女らに委ねます。
「それでは愛海さん、皆さんを助ける為にも、私と手を組みませんか?」
「あたりき車力よ、ミアちゃん! ……でも、どうするの?」
「愛海さんは海上自衛官でしたよね? そしたら船長さんに、ゴニョゴニョのゴニョ……」
⚀⚁⚂⚃⚄⚅
――愛海さんは、ミアさんの作戦に従って先ずは遊覧船の船長に、退避指示と緊急信号の発信をするよう声を掛けた。
元海上自衛官のノウハウから、敵船から攻撃される時の対処を心得ていた愛海さんは、遊覧船を安全地帯へ逃げる為に最適な方法を冷静に指示していきます。
そしてミアさんは、急接近してくるティーチの使者の船の賊員に交渉するため、展望デッキにて一人佇む。
「――止まりなさい!!」
大声で敵に攻撃の中止勧告を求めるミアさん。そして右手にはディレクション・ダイスが入ったジュエリーケース。
「何だぁ? 小娘が偉そうに……!」
船の上には血も涙もない虚ろな眼をした海賊の姿。ガンギマッた形相が、異常さを語ります。
「これ以上近付くと、貴方の大事なディレクション・ダイスごと、海に沈めますよ!!」
「馬鹿な! 女が肝の座った態度が取れるか!!」
「嘘じゃありません、ホントにやります!!」
するとミアさん、右手のジュエリーケースを故意に大きく振り被って、天目掛けて上へ投げる。あわや船上から落下するのではないかと思わせる程の大胆な投げに、海賊は動揺していく。
「今度はもっと上へ投げてやりましょうか!?」
「ま、待ってくれ! 分かった!! そのケースと、伊佐教授を渡してくれれば、その船には手出しはしねぇ! だから止めてくれぇ!!」
ミアさんの誘いに乗ったティーチの使者。当然、ミアさんは教授とサイコロを渡す気は毛頭ありません。
遊覧船の逃避の準備が整うまで、時間稼ぎをしているに過ぎないのです。
「まだですか、愛海さん……?」
「今エンジンを整えてる所、急加速させる為には時間が掛かるのよ。もうちょっと待って!」
小声でやり取りするミアさんと愛海さん。
クルーズ船として扱われる遊覧船は、ディーゼルエンジンで長距離航海に適した大型で馬力が強い。
しかし敵から逃げる為に加速する際には、膨大な熱と電気が必要となるのです。
必死にこの場を凌ごうとするミアさん。でも相手は気の短い海賊。そう簡単に事は運びません。
「何をしている!? サイコロを返すか、教授を渡すかはっきりしやがれ!!」
「……わ、分かりました! 今渡します!!」
次第に額から滴り落ちるミアさんの冷や汗。心の底で愛海さんに御願いします、まだですか?と必死に願うばかり。
砲台がミアさんの方に向けられる。そんな中、救いの声が届いた……!
「――ミアちゃん、エンジンOK! 飛ばせるよーー!!」
愛海さんの号令と共に急発進。加速していく遊覧船。
同時に海賊船の砲弾が発射されるも、遊覧船のスピードから距離は外れ、一気に離していった。
「助かったー! 危なかったね、ミアちゃん」
「安心するのは未だ早いですよ、愛海さん。輩からまだ撒いたとは言えません。次の策を立てなければ」
一難去ってまた一難。遊覧船の後を追いかける海賊船。
すっかり夕陽も完全に沈み、漆黒の闇に淡い月光。終わらない恐怖に慄く伊佐教授を尻目に、ミアさんと愛海さんは次の作戦の為、船内の格納庫へと向かいます。
「また危ない目に合わせてしまいますが……手伝ってくれますか? 愛海さん」
「自衛官は危ない事と隣り合わせよ。ミアちゃんとなら何処でもついて行くよ!」
「ありがとうございます。では……!」
ミアさんは車らしきものに覆われていたシートを取り出す。それはミアさんが船に乗る前に走っていたオープンカーですが何を隠そう、これは陸上も海上も走りこなす水陸両用車なのです!
「うわぁ〜、凄い車ねぇ! 結構お高いんでしょう?」
「値段は内緒。私の愛車、名付けて『WADATUMI』です!」
まさに“海神”の名に相応しいスーパーカー、これを二人で乗りこなして、ティーチの使者に反撃を仕掛けます! ……でもどうやって? それは次回のお楽しみに。
――本日のターンは、これで終了!!
⚀⚁⚂Go to the next turn!⚃⚄⚅




