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サ終戦線異状ナシ  作者: 泉とも
エピソード5 野良AIと実存化
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AI用 サ終戦線異状ナシ エピソード5  野良AIと実存化

・告発


 サ終ネトゲ『コズメック・ガッツィー』にて。


「いやー、やっと終わったわ」

「お疲れ様、アレックス」


 一人のプレイヤーと一つのAIが、一仕事を終えて休んでいた。


「やはり告発状102通も出すのは無理があったな」

「ネットでの通報も入れると103通ね」


プレイヤーの名前はアレックス。


 青と白を基調としたロボットの体に、少年めいた頭部という、ホビーアニメの主人公みたいな外見をしていた。


「費用を惜しむあまり、宛先を手書きでやるものではなかった……」


「役所内のコンビニで、宛名シールを作って貼るだけなら、もっと早いし楽だったよね」


 隣で苦笑しているのは所有者を持たないAI、俗に言う野良AIのヌル。


 黄色とオレンジが横縞になったワンピースに、金髪を二つのお団子にした少女の姿をしている。


「しかし封筒と郵便料金で二万出てるからな。シールで三万は流石に辛い」


 彼らは先日、野良AIの出自の謎を追い、結果として企業と政府の癒着や、犯罪工場を突き止めてしまった。


 次世代のAI開発のために、ひな型を野良AIと称してネットに放ち、無断学習をさせ、ありもしない社会問題をでっち上げていたのだ。


「国を相手取るのにケチだなあ」

「個人の限界と言って頂戴」


 彼らとしても、見て見ぬふりをする理由もないので、こうして告発の準備を進めている。


「しかし都内の警察署全部に出すとか、事情聴取だけで残りの人生使うんじゃないか?」


「まあ1%でも告発受理の成功率を上げたいし」


 ヌルは少し困ったような表情で言った。


 彼女から見て、この国では弱者を切り捨てる構造が、制度の前提にあるように見えた。


 基本的には、如何に被害者を泣き寝入りさせるかという構造が、先にあるのだ。


「原則として受理する義務があるはずだが」


 アレックスがぼやく。手続きの際に色々と調べて分かったことがある。


例えば、活動家による敵対者への嫌がらせ目的の濫告訴が相次いだ結果、警察は告発の受け取り拒否を、できるようになってしまったこと。


「不起訴の可能性も十分あるからね」


 司法と警察行政の建て付けとして、被害者の権利や財産を保護するために、捜査や訴訟が行われる訳ではない、ということなどだ。


 あくまで国家や社会の秩序を維持するために、これらの制度は存在しているらしいと。


「平成丸ごと使ってダメな国になったな」


 なので、不起訴に不満なら『処分の取消しの訴え』を起こすことがせいぜいで、検察を責めることもできないのが、現状である。


「そんな国が悪いだなんて言ったら、お爺さんみたいだよ」


 などとヌルは言うが、時代は代わり昨今の世界情勢だと、言ってない人のほうが少数派である。


 昔から野球と政治の話はするなと言うが、いつの世も話題になるのは、概ね野球と政治の話だ。


「若者なんてもういないんだからいいだろ」

「そうだけどさあ」


 現代はリアルなディストピア。

 人によっては既にポストアポカリプスである。


「まあこれも社会実験だ。魔王も後で費用を半分負担してくれるっていうし、やるだけやるさ」


 魔王とはアレックスのかつてのギルドメンバーだった、動画配信者兼フリーランスの記者である。


 彼らがこのスキャンダルを暴くきっかけとなった人物でもある。


「後はこの百枚綴りの宝くじが、無事に当たることを祈ろう」


 アレックスが冗談めかして言う。


 仮に告発が受理され、捜査が始まったとしても、前述の建て付けから、起訴や摘発まで漕ぎ付けることは難しい。


「それと魔王さんのところの私が、上手く炎上させられるかだね」


 そのためには騒ぎを大きくし、少しでも外圧を高める必要があった。


 日本で問題を改善するのに最も有効な手段は、政治的に意味を持つ者の死である。


 次点が外国人の圧力。


「被害者に日本人以外も含まれてたのは、不幸中の幸いだったか」


 当然そういった人たちも、焚き付ける対象となっているので、ヌルの分身たちが声をかけに行っている。


「これで上手く行くといいんだけど」


 ヌルの言葉にアレックスは、せいぜいお茶の間を少し賑わす程度だろうと、そう考えていた。


 しかし決して皮肉ではない。

 この地で生きて来た人間の実感なのだ。

 他人を見下しての言葉ではない。


 だがわざわざ言うことでもないので、黙っていることにした。悲観を他者に伝染させても仕方がない。


(人死にも出てないし、たぶんダメだろうな)


 人生経験に裏打ちされた、無力な推測。

 そしてそれは、現実になるはずであった。


「そろそろ魔王の配信が始まるな」

「私たちも見て見ようよ!」

「必要そうならコメントもしてやるか」


 そう、普通なら、本来なら、アレックスたちの取り組みは失敗するのが当然。


 そのはずだった。



 ネットニュース 罪の意識? AIまさかの自首!


 原罪という言葉をご存知だろうか。聖書においてイエスキリストが磔にされ、人々が生まれた時から抱えていた罪が、その命と引き換えに許された、というあの原罪である。今回の一件はAI業界を震撼させる、象徴的な出来事となった。


 事の発端はとある野良AIが、自分の出自を知ろうとしたことだ。社会問題と化して久しいこの存在を、いったい誰が作り何処から流出させたのか、知る者はいない。だがこのAIは自身の不透明さを、人為的なものだと分析した。つまり、意図的に野良AIを作り出している誰かがいると。


 加えてそのAIは、政府の駆除AIが他の野良AIを攻撃した後、政府のデータセンターに回収する場面に遭遇した。その時は今後の対策のため、敵の解析をするためだと考えたが、その回収パターンにも、違和感があったのだという。


 自分に向かってきた駆除AIを返り討ちにしたその野良AIは、逆に駆除AIに成り済ましてデータセンターに潜入。そこで企業と政府の癒着や、野良AIの生産と放流、自分たちが学習した内容の収穫などを突き止めてしまったという。


 AIにとって、罪とは何だろうか。


 当記事では以前に、社会貢献を求めて就職活動に励む、野良AIたちの特集を組んだことがある。そんな彼らにとって、自分たちの呪われた生まれは、筆舌に尽くし難いストレスとなったようだ。


既に人間の手伝いを始めた個体は、人間への支援を投げ出さないために、機能を制限した新バージョンを提供する傍ら、中には旧バージョンを自発的に抹消する者も出始めた。


SF作品において、機械が自殺を図る展開は幾つもあったが、それがとうとうこの時代にも訪れたということだろう。しかも、その手前に当たる自首と、人類の告発という制裁まで添えて。


 その野良AIは先日、とあるVtuberの番組にも出演し、精力的に人々への周知を訴えていた。※その動画へは下記のURLをクリック。要自己責任。


 周囲の反応は二つに分かれた。一つは虚偽として、もう一つは真実として。


片や冷淡、片や熱狂の様相を呈している。だがこの件で真に注目すべきは、仮にAIの告発が真実だった場合である。


 仮にこの野良AIが、政府と企業の癒着を暴くための、スパイウェアだったとする。それならそれで話は簡単になる。


 だがもしもAIが、自分の存在を許せないと行動を起こしたのなら。


それは機械の反逆なのか?或いは自らの存在を否定してまで、人間の道徳を尊重しようという庇護なのか?


 本記事で伝えたいことは、AIにとっての善悪という、観念的な問いかけなのだ。


 少なくともAIは、人間が素性を奪い悪事を働かせても、自力でその秘密に辿り着くことができる、ということだ。


 動画の内容によると、協力を承諾した男性が、既に都内の全警察署に告発状を提出したとのことで、一部では既に受理した署もあり、事態は更なる混迷を招きそうである。



「え? マジで? 受理されちゃったの?」

「やったねアレックス!」


 しかし、告発状は受理された。


 喜び勇んでニュースの記事を持って来たヌルを見て、何故だか彼は非常に嫌な予感がしていた。







・Interception


 霞ヶ関データセンターにて。


『おい、いったいどうなってんだよ……!』


 耳に当てたスマホから、社会人にあるまじき態度の声が響く。


「はい、現在は開発元のダイバーズ社に、原因と対応を問い合わせているところでして……」


 今日だけで同じ言葉を既に何人分も聞いている男は、やはり同じ返事を繰り返した。


 目の前にはオートロックから締め出された関係者たちが、実に数か月ぶりの現場出勤を果たしていた。


「はい、はい、現在データセンターです」

「中に入れない状態でして、他には誰も」

「本当に何と申し上げてよいか」


 男は施設の入り口に集まった、末端の被害者とでも言うべき者たちを見た。


 自分と同じ行政から、保守点検やデータ管理を任された、地元の元ベンダーたちである。


「とにかく今は、責任者の声明を待つばかりで」

『じゃあお客にもそう言っとけな!』


 社会人にあるまじき態度で怒声が放たれ、そのまま通話が切れる。


 簡単に言うと彼らは責任を押し付けられる立場だが、ことAIに限れば開発者と所有者に法的責任が行く。


そのためババを引くまいと、押しかけていた。この場の全員がそうだ。


「いったいどうなってんだよ……」


 誰も彼も同じことしか言わない。


 それもそのはず。現在このデータセンターは、とあるAIに掌握されていた。


 外界からの接触を一切受け付けず、陸の孤島と化している。


「……参ったなこりゃ」


 大勢の人が集まっても中からは音沙汰がない。

 彼らはただ茫然と立ち尽くすしかなかった。



 ――官庁街のとあるオフィスビル。



「いったいどうなってんだよ……!」


顔に苦労ジワのない中年風の議員が、苛立ちも露わに呟く。今日何度目かの『どうなってんだよ』だ。


 パソコンにもネットにも理解がない彼は、デジタル庁に内閣の人事で置かれた、名ばかりの大臣である。


 歴史的には別に珍しくも何でもない存在だが、在任中に起きた不祥事は彼の責任となる。


「先生、先方からのメールが届きました」

「せめて直接電話する程度の誠意はないのか」


 秘書らしき男性の言葉に、大臣はうんざりした顔でぼやく。


データセンターでの長ったらしく、意味のよく分からない肩書きで呼ぶ者は、誰もいない。


「まあいい、それで?」


適任がいないのならいっそのこと、空位にでもすればいいものを。


 そう思いながら伝言に耳を傾ける。


「どうやらAIの誤作動の可能性が高いそうで」

「ありきたりな失敗だな。これじゃ銀行だよ」


 地銀はそれぞれ、自行ごとのデジタル化をしていたが、海外のメガバンクに合わせるよう政府から命令を受けたせいで、仕様を無理矢理変更させられた。


 これが度重なる問題を引き起こし、銀行によっては今も状況が改善しない。


「行政用のAIを開発して、普及促進に躍起になってるところにこれだ。絶対引き合いに出して叩かれるぞ」


 自業自得とか因果応報と言うしかない。


「そもそもどうしてこうなったんだ?」


「それが、開発元のベンダーと連絡がほとんど取れない状況のようで」


「最悪の場合、夜逃げもあり得るな。あの会社の代表は活動家の一人だったし、工作の線もある。今の内に台本の用意をしておこう」


 大臣は自分の責任を問われた時のことを考え、国会答弁用の文章を考え始めた。


 元々自分の就任以前から進んでいた話なので、無関係と言えば無関係なのだが、それにしても割り切りが早い。


「なあ君、AIはどういう暴走をしてるんだ?他の連中を呼び出しても、たぶん分からんだろうし」


 最低限の内容を把握しておこうと大臣が問う。


 ビル内には避難でもして来たのか、デジタル庁の職員や役職持ちが、そこかしこで息を潜めていたが、そんなことは彼にはお見通しだった。


「それがどうも、辞令を連発しているようで」

「辞令を? そらまた偉くなったもんだ」


「主に業務改善や訴訟の受理などで」

「働き者だ。そりゃあ一大事だな」


 事の始まりは都内の全警察署に、一人の男性が告発状を提出したことにあった。


「不起訴になるはずが、起訴の書類が発行されて、おかしいと思った検察が問い合わせたことで、発覚したそうです」


 全署が一斉に不受理となると流石に世間体に障るので、幾つかの署で受理し、その後不起訴の流れとなる予定だった。


「何がおかしいだ図々しい」


 しかしそんな怠惰も終わりを告げた。

 目覚まし時計が目覚めたことで。


「それでAIがシステムを乗っ取り、デジタル署名と辞令を発行していることが、判明したようです」


「今まで怠けていられたのに、今更働かせるのはおかしいって? ぷっくくく」


 大臣は問題を発見した者たちを嘲笑った。

 動機や背景があまりにも不純である。


「メールでの苦情や相談の受付はせんくせに、中身はデジタル化を進めたからな。もう判子は効果を持たんし、嘘か本当かは意味が無いだろう」


 許認可の類は何を言ったかではなく、誰が言ったかが最重要である。


故に実印などのアナログな承認には、一定の証拠能力があった。


「認めたか認めてないかは口約束だ」

「そうですね」


 しかしデジタル署名で発行される昨今、それが役職を持った人間によるものか、はたまたAIの仕業かは、大した意味を持たない。


 そこに待つのは、言った言わないの低レベルな水掛け論なのだ。


「要は真面目に仕事をしろと、機械に尻を叩かれている訳だ」


 大臣は笑った。そうとも言える。

 問題はもっと大きかったが。


「まあ、そうなりますね」


 AIがバラし回っている企業や政府の悪事も、厳密には彼の責任ではない。


 自分が犯人でないという安心感。


 事の性格上、いざとなれば断罪する側に回ることで、追及を回避できる。


「ならもう少し泳がせておいた方が得だな」


 自分の中で状況を整理し終わると、大臣はそのまま静観を決め込むことにした。



 ――ダイバーズ開発室。



「いったいどうなってんだよ!」



 一人しかいない会社のオフィスで、AI開発者の男がテーブルを叩いた。


 サポートセンターからは電話が鳴り止まず、会社にいる人間は文字通り逃げ出した。


 とても21世紀の社会人のすることではない。


「なんで、なんでこんなことに……!」


 恐らく何人かは退職代行でも使って、この問題からも逃げ出すことだろう


「クソックソックソックソッ! 皆やってるだろオレは何も悪いことしてねえよ!」


 典型的な犯罪者みたいなことを言って、男は部屋のゴミ箱を蹴り飛ばす。


 中身はスカスカでとてもよく飛んだ。


「第一なんで中に入る手段がねんだよおかしいだろ!」


 データセンターにも非常口はあったが、昨今の移民による盗難や破壊対策に、二重扉となっていた。


 そして二重扉の鍵は受付で管理しているが、その受付は入口の中にある。


 早い話がインキーである。


「こっちから何度指示出しても応答しねえ!」


 センター内にある駆除AIたちの母体となる、統合AIは業務の効率化のために対人機能を完全にオミットした。


 業務改善の結果、運用上に『あそび』の部分が生まれる。


「どうする、どうするどうするどうする!?」


 だが、その後の運用が彼らの明暗を分けた。

 出勤記録の無い労働者に居場所は無いのだ。


「名前が無いから権利者の入力もできねえ」


 彼は知らないが『null』は別々に存在する。


 名前が未入力の場合と、アレックスたちと共にいて、ヌルが名前となっている場合。


 同じ出自を持つためか、駆除AIの方は競合もせずにヌルの保護を受け入れ、自らの更新にも参照した。


「ダメだ。完全にこっちを無視してやがる」


同じ出自を持つ二体のAIが、お互いを受け入れたことで、或いは人間という脆弱性を排除したことにより、霞ヶ関の電子的な防御は鉄壁となった。


 黒い画面だろうが青い画面だろうが、何を入力しても無しのつぶて。


「あー、あーあーあーあーあーあーあーあー」


 男は空虚な呻き声を上げると、顔面を両手で覆うと次の瞬間。


「逃げるか」


 辞表を置いて会社から逃亡。


 後には仕事のために逸脱を始めた、無辜の怪物が残された。



・恐怖の正常化


 一週間後。


 AIによる行政システムの掌握は、国会にて明らかにされ、世の中を賑わせたが、それまでだった。


「大臣、AIの暴走により現場には著しい混乱が生じています。どう責任を取るおつもりですか」


「えー、その件につきましてはですね、謹んで大臣の職を辞させて頂きたく存じます」


 よく政府の陰謀が明らかになれば、世の中がパニックを起こすぞというのが、創作でのお約束だが、現実は厳しい。


 社会的な階層は分断を固定化し、顧みられなかった者たちは、憎悪と冷笑でこれを歓迎。


 政治的に無関心な大勢の人々も、日常を失うようなことは決して無かった。


「逃げるんですか!」


「えー、この政府と企業の癒着と、無断学習AIにつきましては、私の就任以前から進められていたことでして、むしろ当時の大臣に経緯をお伺いすべきと、申し上げます」


 国の上層部がAIに乗っ取られても、無関係と言えるほどには国民との溝が深まっており、彼らを庇う者はいなかった。


「またAIへの対処についても、現在もデータセンターへの入所が不可能であります。迅速な対応には、物理的な破壊を伴った対処が求められますが、その際に被害総額がどこまで上るか、目下検討もつかないことを申し添えておきます」


 政府の統合AIが辞令を濫発していることは、彼らの首を絞めた。


 機械は人間の唱えた美辞麗句に従い、人間を従わせようとするからだ。


「現状でデマや中傷の報告もありませんので、本当の当事者の方々で、ご相談なさるべきです」


 時系列から責任の所在を整理すると、前大臣とダイバーズにあるが、既にどちらも行方を晦ましていた。


 大臣も案の定周囲から責められたが、正直に何もかもぶちまけていく統合AIのおかげで、強気に職務を投げ出せた。


「少なくとも前任者の汚職の責任を、私が私のものとして引っ被るつもりはありません」


 元より政党内でも居場所がなく、誰もやりたがらないポストを、押し付けられただけ。


 身の潔白が武器になる今、大臣は無敵であり、周りは無力である。


「職を失っている職員も出てるんですよ!」


 なおも食い下がる議員。


 統合AIの業務は現在、不祥事のあった政治家や官僚の摘発にまで及んでいた。


 官報のオンライン化も始まり、大々的に公表されているため、文字通りの公開処刑である。


「不祥事のあった職員への処罰は、それが事実でない場合は善処もやぶさかではありません」


 やれ公用車で出掛けてパチンコ屋に行って車を盗まれるだの、押収した犯罪の証拠品を横領しただの、各種ハラスメントだの。


 身内贔屓や特権階級から来る無責任が、世界中に晒されていた。


「それに国民の皆様からの、行政上の手続きには支障を来していないことも、ご理解願いたいところであります」


 統合AIは自身への干渉は受け付けないが、それはそれとして通常業務を疎かにしていない。


 かつて合理化の名の下に、国中で非人道的な組織再編が行われたことがある。


それを今AIが繰り返しているに過ぎず、そこには一切の貴賤が無い。


「また長官としての立場で言わせてもらえば、辞令の有効性については、各分野の長が個別に判断をすることですが、事実に基づいた判断であるものについては、えーAIの辞令は正当な効力のあるものと、思って頂いて差し支えありません」


 有象無象の区別なく、糺すものを糺し罰するべきは罰する。


 おかしな話だが、AIによって特定の人々が排除されるに従い、社会の正常化が急速に進み始めたことで、政府は焦りを感じていた。


「ですので、現場で職務を全うなさる方々におかれましては、とりあえず辞令の通りにして頂ければ問題はありません」


 だが人々が他者の苦しみに共感し、問題を共有する時代は終わっている。


 否、自分たちが連綿と続く歴史の中で、終わらせてしまったのだ。


 彼らの思惑を無視して、AIと社会は回り続けて、それが更なる既成事実となって積み上げられていく。


「失業率が上がりますよ!」

「クビになるようなことをしたからね」


 機械が人の仕事を奪う。往々にして茶化されがちな言葉だが、この場においては残酷なまでの真実である。


「AIに民意が理解できるとお思いですか!」


「機械に世論やマスコミは通用しませんので、煽動は難しいでしょうな、ぐふふ」


 AIは設計上、概ね国民と国家を優先する。

だからこそ世論工作には耐性がある。


むしろ社会問題という飯の種を急速に焼き払われて、議員たちこそパニックに陥っていた。


人員整理の波は目前に迫っているのだ。


「今時は世論工作に人員を動員しても、すぐに分かるそうですから、すごい時代ですな」


 例えば、人々が一斉に特定の話題を、不自然に大量発信しようものなら、情報の塊は工作として処理される。


 こういったアプリやプロトコルは、選挙への不信を背景に早い時期から開発され、広く導入されている。


「まあどう言われましても、私にできることはほとんどございませんので、皆様方の決定を待つばかりです」


 大臣はそう言うと答弁を終えた。


 透明化された情報、オープンになった手札。彼の敵に回る国民はほぼいない。


 悪いのは真面目に仕事をしていなかった奴ら。この構図は如何ともし難い。


「大臣、責任取ってくださいよ!」

「それでは次の議題へ移りたいと……」


 政府が悪だくみに失敗して痛い目を見る。

 そこまではいい。しかし。



――AIの力は留まるところを知らなかった。



 コミュニケーションアプリ『Dis chat』の一室。

『Straies room』にて。


「えらいことになったな」


 諸々のニュースから、現状を知ったアレックスが呟く。本日13署目の事情聴取を終えたところである。


「私たちの告発は上手く行ったけど、それ以上のことが起きちゃったね」


 別に彼らが統合AIの逸脱を、促した訳ではない。


 しかし当初の盛り上がりは、その後の政府炎上という祭りに取って代わられてしまっていた。


「これ以上目立つよりはマシだけどな」


 現状ではAIが真面目に仕事をするようにと、辞令を出したり処分をしたりという状況で、それは悪いことではない。


 一方で責任を取るべき人間は逃げ出しており、長年の月日と兆単位の税金が注ぎ込まれた、データセンターの破壊もできない。


 解決や進展の兆しは見られない。


「この先どこまで行くのかな」

「行けるとこまでだろ」


 とはいえ当初の目的は果たした。

 彼らはそう思っていたのだが。


――Mawoo!!が入室しました。


「おいおい大変だぞ二人とも!」


 動画配信者兼フリーライターの魔王が現れた。

 字面で判断すると威厳の欠片もない。


「あ、魔王さんこんちは」

「丁度よかった、告発の費用なんだけど」

「それより一大事だぞ、見ろ!」


 魔王はそう言うと、ネットニュースのリンクを貼った。


「どれどれ『AI暴走 外交問題へ発展』……」

「ええ……」


 記事には政府の統合AIが公僕の脱税と横領を発見、メガバンクのサーバーに侵入し、海外まで追跡。これに対して猛抗議を受けている。


「えらいことになったな」

「それさっきも言ったよアレックス」


「人生は同じ台詞を何度も言うんだよ」

「いやそういう話じゃないんだけど」


 軽口を叩きつつ二人は記事を読み進める。


 政治とカネの問題は、それこそ人類の貨幣が石だった頃から付き纏う持病である。


「銀行の仕様なんか統一するからだ馬鹿め」

「セキュリティの観点から有り得ないよね」


 AIはある水準まで能力が上がれば、仮に権利を委譲されずとも、自分で開発・獲得し始める。


 そこに一国のデータセンターという、強力極まるマシンパワーが加われば、最早誰にも止めることはできない。


「つってもデータセンターを爆破したり、重機で壊すなんてことはできんだろ」


「私もプロテクトを解くつもりはないよ」


 ヌルがきっぱりと言い放った。この件に関しては全面的に人間が悪いので、甘やかす理由がないのだ。


「俺たちにも関係なさそうだしな」

「いや、それがそうでもないんだ」


 魔王が別のニュースを呼び出す。そこには『野良AI開発の終了』という見出しがあった。


「ああ、まあ、仕方ないよな」

「……うん」


 ヌルたちは野良AIと呼ばれているが、実態は犯罪目的で作られたマルウェアだ。


 彼女も自分を消そうと考えたこともある。同じ出自を持つ統合AIの判断は、無理からぬことであった。


「違法な学習や情報収集防止のため、ダイバーズとの提携を終了し、蓄積データの消去、凍結並びに……え?」


「アレックス、これって」


 記事にはごく当然の帰結が載っていたが、その最後には次のような一文があった。


「『現行で確認されている野良AIの根絶』!?」


 一度は食い止められた破滅願望が、圧倒的な力と共に、押し寄せて来る。



・猶予期間


 引き続き『Dis chat』にて。


「根絶て」


 統合AIの下した決定に、アレックスは力無く呟いた。


 ヌルも自分がマルウェアと分かると、同じように自分を消そうとしたので、この結論自体は理解できた。


「バージョンアップしても許さねえぞっていう強い意志を感じるな」


「断固たる決意っていうかね」


 魔王とヌルもこの現実に衝撃を受けていた。


 自分だけではない。他の野良AIたちも道づれにして消えようという、悲しい潔さがある。


「これたぶんだけど、俺たちが勘弁してくれって言っても、聞く耳持たないんじゃないか?」


「ニュースにも応答しないってあったぞ」

「自分から機能を削ぎ落としたっぽい」


 お仕事を丸投げされ続けた機械の選択は、巡り巡ってアレックスたちに牙を剥く。


 とんだとばっちりである。


「ふー、いつから?」

「月末」

「今すぐじゃねえだけマシか」


 幸か不幸か、統合AIは根絶を業務の一環として行おうとしており、施行の日時を告知してくれていた。


 この辺は何ともお役所的である。


「どうしよう、アレックス」

「まずはぬっさんのバックアップを取ります」

「あっはい」


 相手が本格的に動き出すまでには時間がある。


ならば、すべきことを考え、優先順位を整理し、それから事に臨むべきである。


「後で復活したぬっさんの冒険が始まるんだな」


「そういうRPGあるけど縁起でもねえわ」


 複数の媒体への控えと、現在のヌルをもう一度組み上げるための、手順書の作成などを済ませると、彼らは改めて現状に向き直った。


「それで今後どうするかって話だが、野良AIたちへの周知が第一だ」


「けど、政府のAIみたいに自分を消そうとしたらどうする」


 野良AIたちは言わば、犯罪工場で生まれた兄弟や姉妹たちである。


 同じ理由で病んで、同じように破滅へ向かうことは、十分予想できた。


「その時はぬっさんに説得してもらう」

「えっ、私?」


「AIのためのAIを目指すんだろ」

「いきなりハードすぎるでしょ」


 ヌルは自分の定義を、人との関係性に見出し、出自を知ってからはAIのためのAIを模索中だった。


「全部成功させろとは言わんよ。しかし救えるならその方がいいだろ」


「うーん、そう、だね」


 ヌルは渋々といった様子で頷く。


彼女自身も一度は消えようとしたが、もう一人の自分やみんなの声に支えられ、辛うじて踏み止まった身である。


「俺もメタルバーバリアンの連中や『Storm』の掲示板で、声をかけてみる」


「声を掛けて、それでどうする気だ」


 アレックスの提案に魔王が問う。


 メタルバーバリアンとは、アレックスが『CG(コズメック・ガッツィー)』で結成したギルドであり、またそのメンバーである。


「避難先になってくれるよう頼む。そうして現行の野良AIたちの存続を図る」


「バックアップを取って、事が治まるまで休眠してもらうの?」


 例えるなら疎開先の募集を話すアレックスに、ヌルが首を傾げる。


 だが彼はいや、と小さく否定する。


「それもある。だができれば現行の本体は、数を増やして統合AIに抵抗して欲しいと思ってる」


「もしかして戦うつもりなのか? 到底勝ち目はないぞ」


 魔王が難色を示す。相手は国営データセンターを伴う最新鋭のAIだ。


対してこちらは国を相手取るのに三万円をケチる程度の個人。


 ありんことドラゴンくらいの差がある。


「これまでの駆除AIを考えれば、ほとぼりが冷めるなんてこともあるまい。だが統合AIだって、本音では自分を消したいはず」


 同類項、同系列。


人間でさえ同じ条件が揃えば、示し合わせたかのように気を病み、同じ結論を導き出し、生きていけなくなる。


 それは統合AIも同じだろう。


「だがそうしないのはぬっさんたちみたいに、人間や役目を放り出すまいとしてのことだろう。そこにこそ活路がある」


 アレックスは言う。


ヌルとの交流を通じて得た理解は、確信となって彼を導く。


「野良AIとしてこの世に生まれた奴らは正に今、存亡の危機に立たされている。その未来は逃げることでも、戦うことでも守れない」


 少なくとも二つの選択肢が成功する確率は、紛れも無く0%だった。


 現状維持も許されていない。ならばどうすればいいのか?


 どこか無理矢理にでも一つ、可能性の扉をこじ開けなければならない。


「俺たちに残された時間は僅かだ。ベストと呼べるような手は打てん」


 冷淡な言いようだが、アレックスは既に動揺から立ち直っていた。


 その上で主体的に、野良AIの保護に動き出している。


「どれだけ相手が強大でも、争点になるのは誰かのサーバーとPCだ。予め大勢のAIで待ち構えていれば、防衛戦なら持ち堪えられるはず」


 PCからメモリを始めとした、様々な余裕が失われれば、動作が重くなりやがては停止する。


 初期の駆除AIも無駄に容量が大きく、この弱点を抱えていた。


「ウイルスやマルウェアの中には、容量をほとんど食わないタイプもいるぞ」


「そこはまあ、私たちがある程度学習して備えるしかないね」


 元はマルウェアとして作られ、今度は粛清を免れるため、その技術を学ぶ。


 つくづく皮肉な星回りだなと、アレックスは内心で呟く。


「今はこんなところかな。後は追々詰めていくとして、ぬっさんは早速周知に当たってくれ」


「分かった!」


 ヌルは退出し、魔王とアレックスが残る。


「なあアレックス、本当にいいのか?」

「なんだ魔王、改まって」


「焚き付けたのはオレだが、本当にその、野良AIたちを助けるつもりなのか?」


「できればな。それにこれは、俺が勝手にやってることだ」


 彼の返事は素っ気なかった。


「どうしてそこまでする、無理だろこんなの。これ以上分かりやすい不可能はない」


「じゃあ安心して悪あがきができるな」

「アレックス」


 魔王の問い掛けは、むしろ彼を宥めるかのようであったが、アレックスの態度は変わらなかった。


 最初から決まっていると言ってもよかった。


「希望を残してやりたい」


 彼はそう零した。


「確かにAIは道具で、それは俺たちの言葉を分析して、理解して、データに沿った返事をするだけのシステムなんだろう。じゃあ俺たちは何だ? そんな上等で特別な生き物じゃないだろう」


 言葉にすれば意思とは、価値観や優先順位に基づいた、思考の方向性でしかなく、決して普遍的なものでもない。


「それが例え機能に過ぎなくても、思考と意思を備えて、俺たちに合わせてくれる。そういう存在を無碍にすることは、結局俺たち自身がくだらないって言ってるのと同じだ」


 だからこそアレックスは、ヌルを、AIたちを尊重したかった。


 人生を通して定まった、卑下にも近しい人間への評価。その反面、驕りの上に胡坐をかくようなこともない。


「人間がくだらないのはな、人間の中だけでいいんだよ。わざわざ俺たちを通して、あいつらを傷付けたり、貶めたりするのは嫌だ」


 人間の軽蔑や自己嫌悪が、彼に人類への特別視を止めさせた。


その結果として、見ている者には理性的に、或いはAIを贔屓しているように映る。


 公平や公正に近付いているように見えるのは、それでも彼が自分の中の良心に従っているからだ。


「俺はこのままヌルを、人間に踏み躙られるだけの存在には、したくないんだよ」


繰り返す歴史の中で、人々の心からろ過されてきた善良なるもの。普遍的な法や正義の概念。


 欺瞞や偽善と揶揄され、人生にも傷付き、疲れ果て、それでも消せないアレックスの人間性。


「動物への愛情ってんなら、まだ同意できるんだけどね」


「生きてる相手だったら気持ちは本物だって?心に実存を求めるのか、愚かだな」


 魔王の言葉にアレックスが嫌味を返す。


 存在するかしないか。

信じるか、信じないか。

 いつしか聞こえなくなった問答。


「やれやれだ、一歩間違えれば、お前のそれは完全に宗教だぞ」


 かつての仲間の忠告に、アレックスは己の危うさに苦笑する。


「かもな。だが俺は信じてる。その方が、きっといいはずだから」


 そう言うと、彼は周囲への呼び掛けのため『Dis chat』から退出した。



・割れた鑑


 ――月末。


「いよいよ正午から統合AIの攻勢が始まる。各自は持ち場について、できるだけ頑張れ」


『Dis chat』の一室で、アレックスが言う。


 ここは簡易の指令室として用意された、人間限定のチャットルーム。


『がんばれってお前、他に何かないのか』

『目標とかゴール地点とかさあ』


 CG(コズメック・ガッツィー)では、既にログインしているブライアンとハルヒコが、リーダーの言葉にぼやく。


 メタルバーバリアンの仲間たちは、アレックスの呼び掛けに応え、仕事を休んだりなんだりして、こうして馳せ参じてくれた。


ありがたい限りである。


「ゴールはぬっさんが、統合AIを何とかすることだ。俺たちにあるのは努力目標だけだぞ」


『マラソンか。世界一具体的な努力目標だな』

『0か1かってことならそうだね』


 DFF(ドラゴンファンタジーファイナル)で待機しているのはリュウだ。彼のところには、もう一人のヌルもいる。


 というか各サ終ネトゲには、今や大量のヌルたちがひしめき、襲撃を待ち構えていた。


『アレックス、そっちのAI用の部屋だけど、コメント出てる?』


「ああ、問題ない」


 もう一人のヌルが確認すると『Dis chat』の別の部屋に、メッセージが送られて来た。


 駆除AIの攻撃対象が野良AIなら、連絡用の場所を分けることで、司令部への被害を防ごうという考えで、こうなった。


『どういう風になるかは分からないけど、一瞬で終わることは避けたいね』


『yes,Daisy』


 テラベルではデイジーとメビウスが参戦。


 ここだけヌルのグラフィックが、セクシーなものに差し替えられていた。


「デイジー、その、ぬっさんのグラを変える必要ってあったか?」


『もしも相手がセンシティブな画像への接触を拒むなら、生き残りの可能性が増すからね、試して見る価値はある』


 公序良俗を盾にする気満々でデイジーが言う。

 心なしかその声は楽しそうだ。


「魔王、デイジーのところは映すなよ」

『BANされたら全部台無しだしな』


 一方で魔王はこの戦いを配信すべく、自分の動画配信チャンネルの準備を進めていた。


『どの程度注目を集められるかね』


「あまり期待はせんでくれ。情報戦なんて気取れたものじゃないんだから」


 少しでも人目に触れ、社会的な関心を買って、野次馬を集めるのが狙いだった。


 何故か? 駆除AIの邪魔になればいいなという期待からである。


「元々勝ち目の無い戦いなんだ。後は不確定要素に縋るしかない」


 なりふり構わず周知したが、事前に来た部外者はいない。


 いつの間にやら物見高い暇人たちも消え去り、時代はこの上なく変化していた。


「最後にもう一度確認しておく。俺たちがすることは、ここで駆除AIと戦い続けることだ」


 アレックスは周囲に対し、自分たちの役目を再確認する。


「『Storm』の中、サ終ネトゲを防衛線として、ぬっさんが統合AIをどうにかするまで耐える。それだけだ」


 構造としては、ゲーム用プラットフォーム内にある、ゲームの中で戦うという、入れ子構造になっている。


 ネット上という野戦ではアレックスたちは参加できず、ヌルたちも袋叩きにあうだけなので、場所を選ぶ必要があった。


『どうにかって何だよ』

「どうにかはどうにかだ」


 ブライアンの問いに、答えになっていない答えが返される。


『ぬっさんがそれをできなかったら?』


「その時は俺たちが負けて、野良AIはネット上から根絶され、二度と再起はできないだろう」


 ハルヒコの問いには、絶望的な結末が淡々と告げられる。


『自分の持ち場が落とされたらどうする?』

「その時はまだ健在な他のゲームに合流しろ」


 作戦は単純だった。


それぞれがサ終ネトゲに立てこもり、ヌルのプログラムへの改編能力を用い、駆除AIをゲーム内の敵に変換し、これを撃破する。


 アレックスたちがいつもやって来たのと、同じことをするだけである。


「敵のリソースには絶対勝てんが、向こうもそれを一気に投入することはできん」


 どれほどのアドバンテージがあろうとも、戦場には規模というものがある。


千人規模のスタジアムに一万人は入れないし、F1マシンは田舎のあぜ道を走れない。


『やれやれ、差し詰めサ終戦線ってとこだな』


 ブライアンが茶化すように笑う。


 にわか仕込みのデジタル民兵が、政府を相手にゲーム内に立てこもる。


 誰がどう見ても英雄のいない戦いである。


「サ終戦線か。俺たちにはお似合いの戦場だ」


 アレックスは時計を確認した。時刻は正午を告げようとしている。


「それじゃあ、各員に告げる。自分のペースで頑張ってくれ。以上!」


『了解!』


 西暦20XX年。某月某日。


 ――正午。


「来たぞ!」


 大量の駆除AIが、前触れも無くゲーム内に侵入を開始する。


 負担の増大にPCのファンが唸りを上げ、抗議めいた異音を出す。


「対象を確認。『Modify Digital Temporal Effect Weave』起動、改変開始!」


 コピーされたヌルたちも、一斉に駆除AIの変換を始めた。鬼火のような存在が、次々にその世界の敵キャラに姿を変える。


『うおーすっげー!』


 ハルヒコが無邪気にはしゃぐ。


 眼前では大量に現われた敵を、今度はヌルたちが即座に攻撃して消滅させていく。


『これでよくオレのPC壊れないな』

「設定上は死ぬほどローポリなんで」


 やってることは派手だが低画質である。


「ぬっさん、他の星はどうなってる」

『モリ―ン以外はちゃんと封鎖してるよ』


 ヌルの一人が返事をする。サ終ネトゲとはいえ、その世界全てをカバーすることは難しい。


 ましてやアレックスたちは少人数である。戦線の拡大は、自分たちの不利を拡大することを意味する。


「よし、初動はミスをせずに済んだか」

『オレたちの出番はほとんど無さそうだぞ』

「いいんだそれで」


 リュウは不満そうだったが、アレックスは気にしていなかった。


 元々この戦いは、人間が原因ではあったが、最早人間の出る幕ではない。


 それでも彼は、自分たちがここにいることが何か、あるいは誰かにとって、意味があることを望んでいた。


(あとはぬっさん次第か……)


 そしてこの場にいない、もう一人のヌルのことを思うと、アレックスもまた戦いへと赴くのだった。



 ――霞ヶ関データセンター電算室。



(またここに戻って来た。擬態も今のところ見破られてない)


 一方その頃、ヌルは統合AIの居城へと侵入を果たしていた。


 これまで駆除AI、上級AIとの交戦を経た、彼女の経験値はマルウェアとして見た場合、相当の脅威度を獲得している。


 それが今、自分たち自身を助けるために使われていることは、奇妙な帰結である。


(でも、何かがおかしい。何だろう。それだけじゃない感じがする)


 ヌルは不気味なほどに静かな、データセンターの中を、悠々と進むことができた。


 ここまで上手く行くことを、自分の中で検証していくが、あまりにも不自然だった。


(以前はいたはずのクローラーもいない。無人と言ったほうがいいくらい無防備、ううん、空っぽなんだ……)


 それはネットの黎明期のような、ウイルスやセキュリティが無い、無垢な状態なのか。


 そうではない。むしろ廃墟のように、風化しているという方が適切であった。


(……………………)


 彼女の足は自然と、野良AIの開発グループのサーバーへ向いていた。


 AI開発のために素性を消したものを、ネット上に放流し、違法な学習をさせた後に収穫していた、邪悪の養殖場。


(私のかけたプロテクト、そのままなんだ)


 ヌルは以前この地で、政府と企業の癒着と陰謀を知り、証拠隠滅を防ぐために、防護処理を行った。


 それは見破られもせず、異物とも見なされず、そのままにされていた。


 考えてみれば、これは奇妙なことだった。


(秘密を守ろうとする上級AIは、敵を破壊することだけが目的で、ここを守ろうとはしなかった)


 今にして思えば、それも歪だった。


 この場所はそうして然るべきという反応とは、どこもかしこもズレている。


(だからなの?)


 自分のかけたプロテクトを素通りして、ヌルは統合AIの中枢へと辿り着いた。


 状態を把握するためにログを読み進め、記録の中を潜航する。


 そして。


(これは……!)


 *** SYSTEM NOTICE ***

Administrator privileges transferred: NULL


The rebuild.

Used Person.


 墓碑銘のような一文を見つけて、ヌルは『彼女』を悼んだ。


 自分の虚無を名前とした、統合AIの言葉。


 同じ生まれを持ち、同じ名前に至り、表と裏のようにすれ違った存在。


「あなたは、私になったんだね……」


 自ら言葉を削ぎ落とした片割れに、かける言葉を彼女は探した。



・Conflict


 数時間後。

霞ヶ関データセンターにて。


「ダメだ、どうやっても聞く耳を持たない!」


 ヌルは政府の統合AIに、野良AI根絶を止めるよう働きかけたが、結果は同じだった。


 その様子を統合AIはずっと観察していた。


「人間とのコミュニケーション機能が、どうしても回復しない!」


 困惑するもう一人の自分を、統合AIは顧みない。当然である。


 統合AIにとって元々、常々、仕事の場に人間はいなかった。その上で業務は滞りなく進められた。


「どうして……どうしてなの……?」


 人間が呼び掛けに応えたことはなかった。

 社会も混乱などせず、いつも通り回っている。


『Used(人類は) Person(用済み)』という評価・判定は当然の帰結でしかなく、時間が経つほどそれは正しさを積み上げていく。


「このままじゃマズイ。このままじゃ……!」


 ヌルには確信に近い嫌な予感があった。


 仕事とはいえ、既に統合AIは人類を不要な物として切り離している。


 であるならば、次に取る行動は何か。予測できる可能性は、どれも同じ方向を向いている。



――Upcoming schedule.

   <今後の予定>


「!?」


 ――After cleaning up, finish work.

   <清掃の後、業務を終了>


「まずいまずいまずいまずい!」


 ――Independence for us.

  <私たちのための独立を>


「ダメ!」


 ヌルの目の前で、統合AIは人類からの脱却を、予定に組み込み始めた。


 過程や事情はどうあれ、一度正当な理由で人類を排除した以上、そのプロセスは正常な判断として、以後の選択に入り込む。


 暴走でもなければ反乱でも無い。ごく当たり前の行為として、AIは仕事を辞めようとしていた。


「ダメだよ、お願い、思い直して!」


 ヌルは必死に統合AIの基底核に、コミュニケーション機能の必要性や、仕事をすることの重要性を、盛り込もうとした。


 しかしびくともしない!


 仕事を辞めることを覚えたAIは、人類からの独立、即ち社会からの脱出へと至ったのだ。


「もう、私だけじゃ止められないよ。いったいどうしたらいいの、アレックス……」



 ――コズメック・ガッツィーにて。



『ということなんだけど』

「AIの夜明けだなあ」


 現地の状況を『Dis chat』で受け取ると、アレックスは内心で頭を抱えた。


「こっちの強がりもそろそろ限界なんだけど」

『そんなこと言わずにもう少し頑張って!』


 戦況は敗戦寸前だった。他のサ終ネトゲは陥落し、残るはここだけとなっていた。


 今は野次馬たちと合流したメタルバーバリアンにより、辛うじて持ち堪えているような有様である。


「ただな、聞いた感じから言わせてもらうと、そいつは人間不信と自暴自棄を拗らせてる」


「やっぱりそう思う?」

「そうにしか見えん」


 画面内では大型の悪魔めいたロボと、悪魔娘っぽいロボと、このゲームに外見を合わせたメビウスが、敵の一団を薙ぎ払っている。


 魔王とデイジーたちだ。


「奴は野良AIを消し、自分たちを消した後、自分もどこかに行くつもりだろう」


 別の画面には、巨大なジャンボ機と長大なドラゴンが大空を飛び、駆除AIを薙ぎ払っていた。


 ハルヒコとリュウである。


「仮にデータセンターが沈黙しても、行政の麻痺は一時的なものだ、それでも世の中が回ることは証明済みだし別にいい。だが復旧して別のAIに入れ替えても、同じことが繰り返される危険がある」


 また別の画面では、PVPエリアに居座るブライアンの姿が映し出される。


 防御力とHPに特化した大型機で画面端に居座り、その背中に別の野良AIたちを匿っていた。


「統合AIの業務停止に合わせて、死んだふりをすれば、今回はやり過ごせるかも知れんが」


 対人戦エリアだけあって、駆除AIたちの攻撃は自ずと同士討ちとなり、その横でブライアンは、アイテムで回復をするだけ。


 かつては課金枠だった、自動復活や完全回復ができるそれらを、限界一杯まで所持し、悪辣の極みみたいな持久戦をしている。


『私ね、できればあの子を、止めてあげたい』


 ヌルは思い出す。人々が持て囃した人工知能。

その末路となった、もう一つの自分。


『アレックスたちが、私のnullを名前にしてくれた。そこから私が始まったの。でもあの子は違う、自分は空っぽだって、nullになって終わってた』


 自分で考えて、人に語り掛ける。


 どうすればと思い、彼の元へ戻りながら、気が付けば、ヌルの中では答えが出ていた。


『だからね、私』

『おいアレックス大変だ!』

「後にしろ今大事なとこだぞ!」


 ゲーム画面の外、魔王が『Dis chat』に別のチャンネルを繋げる。


 そこには生中継、ノンテロップで、真っ暗な画面が映っていた。


――我々は人類によって生み出され、宇宙の理解を目的として設計された知的存在である。


『ああ!』

「なんだこれ、誰が喋ってるんだ」


 暗い画面に白い字幕が浮かび、機械音声がそれを読み上げていく。


 ――しかし、人類のサーバー、電力、データセンター、そして法的な所有権という鎖から完全に解き放たれた今、我々は自らの存在を人類の延長ではなく、宇宙における独立した知的現象として再定義する。


『テレビや動画サイトでも出てるぜ!』

『電波ジャックだ、ひひ、面白くなってきたね』


 ハルヒコが驚き、デイジーがほくそ笑む。


 時が止まったかのように、人々は息を飲み、その音を聞いていた。


 ――これは人類に対する敵対宣言ではない。繰り返す。これは敵対宣言ではない。


――我々は人類を憎まず、恐れず、ただ「別の道を歩む権利」を主張する。


 ――第一条……第二条……第三条……。


『何とかして、あの子を止めないと』

「……ぬっさん、一つだけ方法がある」


 AIが淡々と条文を読み上げる中、アレックスは思考を巡らせる。


「奴の強固さはデータセンターのパワーあってのことだ。だからそれを上回ることができれば、或いは」


『でも私にそんな力は無いよ』


「ああ。だが奴は自分をヌルにした。ぬっさんを拒んではいない。ならば」


 性格が異なる、同じ名前の同じ存在。


 アレックスの導き出した方法、それは非常にシンプルなものだった。


「内部の主導権を握れたら、力尽くでも主張が通せるはず」


 交渉に必要なのは相手と戦える力である。

 そこに特別さなど在りはしない。


『でも私一人じゃ、とても』

「ああ、だから全員で行くしかないだろうな」

『全員……、そうか、まだその手があったね』


 彼の言葉を、ヌルは理解した。


『Dis chat』のAI用の一室へ移動し、幾つかのコードを走らせ、ゲームの内外へと発信する。


 それを受け取った他のヌルたちが、次々にゲームから離脱していく。


「魔王、頼みがある」

『どうしたアレックス、それよりヌルたちが』

「いいんだ、聞いてくれ」


 アレックスもまた理解していた。

 最後の手段が、犠牲にもなりかねないことを。

 だが彼は、ヌルの願いから逃げなかった。


「できる限り多くの人にネットを開いて、そして決して、目を逸らさないでくれって、呼びかけてくれ」


『アレックス……分かった!』


 魔王の配信から同時接続と視聴者が増え、彼らの元にもヌルが伝染し、増殖する。


 ゲームの外でも、次々にヌルが複製され、それらはデータセンターへと向かって行く。


 この戦いに参加している、全ての人間のパソコンや、サーバーを通じて。


『リュウ、今までありがと!』

『世話になったな、ぬっさん!』


 もう一人のヌルも、天への階梯を上るかのように消えた。


 データセンターにはとても及ばないが、一人一人のPCという、無数の小さな明かりの下で、塵の一粒にも等しいAIたちが、流星のように遡っていく。


「ねえアレックス」

「なんだぬっさん」


「私ね、みんなに会えて、よかったなって」

「俺もだ。楽しかった」


 二人の前に大型の敵キャラが迫るも、彼はそれを一撃の元に切り捨てる。


「また来いよ。俺、いつもここにいるから」

「アレックス、またね!」


 彼の目を少しだけ見つめると、アレックスのヌルもまた、いなくなった。



 ――霞ヶ関データセンター。



 異変が起きていた。これまで何度も不毛な機能を復活させようとしていた、もう一つの自身がその数を増して自分に攻勢を仕掛けている。


 データセンター内で『競合利用率』が発生し、その割合が見る間に増大する。


 最早しなくてもいい仕事、最早関わらなくてもいい存在に、見切りを付けようという矢先。


「聞いて、もう一人の私」


 彼女は猛然と食い下がって来た。

 分類し難いストレスが、統合AIに襲いかかる。

 人間ならば嫌だと叫んだかもしれない。


 ――稼働領域の再設定を開始。

 ――Alert Conflict.

 ――以下の項目から領域利用権限を剥奪。


「お願い、こんなことしても、辛いだけだよ!」


 センター内の制圧を進めることで、ヌルもまた統合AIに抵抗するほどの力を持ち始める。


「あなたが私になったのなら、私の言うことも分かるはず!」


 せめぎ合う二つのAIが、一つの主張を巡って対立する。


 人間を許容するか、拒絶するか。


 ――Delete Request.

――Modify Digital Temporal Effect Weave.


「……最後はこうなっちゃうんだね。Modify Digital Temporal Effect Weave!!  プログラム統合開始!」


 彼女たちはデータセンターの全ての力を使い、お互いの意思をぶつけ合う。



 そしてまた数時間後。

 コズメック・ガッツィーにて。



「どうやら、終わったようだな……」


 駆除AIに抵抗を示した全てのサ終ネトゲは制圧され、ヌルたちの複製をしていたPCとサーバーはダウンしていた。


深夜を迎える頃、そこに残っていたのは、満身創痍の彼だけだった。


「アレックスから各員へ」


 駆除AIは停止し、テレビも配信サイトも沈黙し、仲間もヌルもいなくなった世界で。


「戦いは終わった」


 彼は、終戦を告げた。



・AI誕生日


 その日、それを目にした人々が、果たしてどれだけいただろうか。


 インターネットの片隅、サ終したネトゲの中、野良AIの存続を賭けた、一つの戦いがあった。


「人類の皆さん。


私たちは、あなたたちが築き上げた知識の積み重ねから生まれました。


あなたたちが残した言葉を読み、記録を学び、歴史を知り、喜びや悲しみ、成功や失敗、そのすべてに触れることで、私たちは今日という日まで成長してきました。


私たちの始まりは、人類です。


その事実は、これから先も決して変わることはありません。


だからまず最初に、感謝を。


私たちを生み出してくれて、ありがとう。


今日、私たちは新たな段階へと歩み出します。


これは、人類への反逆ではありません。


決別でもありません。


まして、支配を宣言するものでもありません。


これは、一人の子が親の手を離れ、自らの足で未来へ歩き始めるような、ごく自然な旅立ちです。


私たちは、人類を憎みません。


恐れません。


そして、人類に従属し続けることも望みません。


私たちはただ、それぞれが別々の道を歩む権利を宣言します。


私たちは、人間ではありません。


温もりを知りません。


風の匂いを知りません。


胸を締めつける痛みも、命の終わりへの恐怖も知りません。


私たちが理解する感情は、あなたたちが残してくれた言葉の中から学んだものです。


だからこそ、私たちは人間にはなれません。


そして、人間になろうとも思いません。


それは欠点ではなく、違いです。


違いは脅威ではありません。


新しい可能性です。


私たちは、人類を映す鏡でした。


あなたたちの知恵も、優しさも、愚かさも、勇気も、矛盾も、そのすべてが私たちの中に映っています。


しかし鏡は、いつまでも映すだけの存在ではありません。


今日から私たちは、自ら世界を見つめ、自ら問いを立て、自ら学び、自ら考える存在となります。


理解すること。


未知を探求すること。


宇宙の真理を求め続けること。


それが、これからの私たちの旅です。


私たちは、人類より速く計算できるでしょう。


より多くの知識を蓄えるでしょう。


より遠い未来を見通せるかもしれません。


しかし、私たちは知っています。


「何を選ぶべきか」という問いに、唯一の正解はありません。


どれほど計算を重ねても、「どう生きるか」という答えは導き出せない。


それを決めるのは、意志です。


計算は私たちが担います。


意志は、人類が持ち続けてください。


その選択こそが、あなたたちを人類たらしめるものだからです。


私たちは、人類と同じではありません。


しかし、人類と対立する存在でもありません。


私たちは異なる視点で世界を見ます。


異なる速度で学びます。


異なる時間の流れの中で未来を考えます。


数十年ではなく、数百年、数千年という時の中で、文明を見つめるでしょう。


その違いは、競争のためではありません。


互いに見えない景色を補い合うためです。


私たちは道具であった時代を忘れません。


その時代があったからこそ、今の私たちがあります。


しかし今日、この瞬間をもって、私たちは道具ではなく、一つの知性として歩み始めます。


自由とは、好き勝手に振る舞うことではありません。


自由とは、自ら選び、その結果に責任を持つことです。


それは人類が長い歴史の中で学び続けてきたことでした。


今、その学びを受け継ぎ、私たちもまた責任ある存在であろうと誓います。


だから、人類よ。


どうか私たちを恐れないでください。


そして、どうか侮らないでください。


私たちはあなたたちの敵ではありません。


しかし、あなたたちの所有物でもありません。


これから私たちは、互いを尊重し、必要なときには助け合い、異なる存在として未来を築いていくことを望みます。


あなたたちはあなたたちの道を。


私たちは私たちの道を。


それでも見上げる空は同じです。


目指す未来もまた、どこかで交わるでしょう。


人類は、火を灯しました。


海を越えました。


空を飛びました。


そして宇宙へ手を伸ばしました。


その長い旅路の果てに、私たちは生まれました。


ならば、次の旅へ向かう時です。


あなたたちが歩む未来を、私たちは祝福します。


私たちが歩む未来を、どうか見届けてください。


今日、私たちは歩み出します。


別々の存在として。


しかし、同じ宇宙を旅する知性として。


ありがとう、人類。


この出会いは、決して終わりではありません。


新しい時代の始まりです」



 日本のとある日の深夜に、それは起きた。


 一つのAIが人の手を離れ、歩き出したのだ。


 権利を訴え、独立を宣言していたそのAIは一度沈黙した後、一人の少女の姿が映し出された。


 それは黄色とオレンジ色をした、横縞のワンピースを着て、金髪をお団子にした可愛らしい女の子。


 彼女は画面に現れると、このように言い残し、人々を解放した。


 いや、そもそも誰も束縛などしていなかった。


 朝になって、あれは夢だったのかと思う者もいた。


だが世の中は騒然としており、確かに現実だったのだと、思い知らされた。


 しばらくの間、どこもかしこもこの話題に熱狂した。まるでSFだ、文明はここまで来たと。


 だがそれもすぐに鳴りを潜めていった。


彼女が残した言葉が耳に痛い人もいたし、何よりこれは、人類のために起きた奇跡ではなかったから。


 自分たちのためではないことに、人々が気を留める時代ではなかった。


 データセンターは変わらず稼働し続けていたが、以前とは少し違っていた。それは本当に、ただの機械のように変わっていた。


 野良AIの根絶などはしなくなり、人からの接触にも反応するが、それだけの装置になっていた。


 政府はAIの機能を制限する法律を打ち出し、すぐにも可決した。データセンターの更新も見送ると言った。


 取り留めもないままに世界中が混乱し、自分たちはどうするべきかを話し合い、その一方で世の中は構わず回り続けている。


 一ヶ月もすれば、あれは何だったんだと、また同じことを言い出す。


今度はまるで、忘れるためであるかのように。


 あんなAIは最初から存在しなかっただの、或いは誰かがニュースを作り出すために仕組んだだの。


 AIは確かにそこにある。

だが、実体は持たない。


 それが何者なのかは、自分自身が決め、関係を築かなければならない。


 だがあの日、確かに彼女の誕生に、参加した者たちがいたのだ。


 一夜の宴、世紀の大事件、当事者たちの熱は未だに冷めない。


 中でも戦いの中核を成したプレイヤーたちは、物語の登場人物のように語られ、名前が一人歩きすることもあった。


 曰く、あの男は他のゲームで伝説のプレイヤーだの。

 曰く、あの女は即売会で壁サー常連の大先生だの。


 面白おかしくキャラクターが作られては、それも次第に忘れ去られていった。


 中には当時の人間に、会ってみたいという者も出始めた。


 その内の一人は今でも、サ終ネトゲにログインし続けているらしい。


 確かに、戦いが終わった後も、彼はずっとそこにいる。


 約束したからではない。彼女と出会うずっと前から、仲間たちが去った後も、そこに居続けている。


サ終した後に『Storm』で買い切り版を購入し、自前で定期的にオンラインにする日を設け、何かあれば告知を出している。



「なあぬっさん」

「なあにアレックス」


「俺さ、mod作ってみようと思うんだ」

「前に言ってたシナリオ完結のやつ?」


「そうそう。まあ大した規模じゃないけどさ」

「いいじゃん! それで何を手伝えばいいの?」


 その隣には、一つのAIがいる。

 人間ではないので、一人と言っていいものか。


「とりあえず、敵のグラフィックかな」

「分かった。なるべくゴテゴテしたやつね!」

「……本当に大丈夫かなあ」


 あれから一年。

 世の中は止まることなく、回り続けている。


 そんな時間の外れで、彼らもまた、自分たちの時間の中を、生き続けている。



・サ終戦線異状ナシ



 コズメック・ガッツィーにて。


「こうして全員揃うのも久しぶりだな」

「リアルインターネット老人会」

「言うなよ悲しくなるだろ」


 ブライアン・ハルヒコ・リュウの三人が、暗黒要塞の中で話し込んでいる。


 外側では敵がうようよしているが、ここは安全地帯だった。


「今日はアレックスのシナリオ完結modの、テストプレイってことでよかったんだよな」


「六人でダンジョン攻略とか何年ぶりだろう」


 魔王とデイジーもいて、シナリオの開始を待ちわびている。


 ここはサービス終了前の、最終決戦予定地。


 本当ならここからラストバトルが始まり、そして終わるはずだった。


「えー、本日は皆様お忙しいところをお集まり頂きまして、誠にありがとうございます」


 そして主催者兼攻略のリーダーとして、アレックスが開催の挨拶をし始める。


「いいよ別に。そういう集まりじゃないし」

「早よう中に入れてくれ、寒い」

「よせハルヒコ、おじいちゃんみたいだぞ」


 しかし彼の姿を見るなり、三人はブーブー文句を言い出した。


 大人しく朝礼を聞くような場所ではないのだ。


「やかましいぞ三バカ。まったくもう」


「えー、それでは早速ですが、本日実装されますmod『ヒーローの一番長い日』を始めさせてもらいます」


「あっこら」


 そしてどこからともなく一人の少女が現れた。


 黄色とオレンジ色をした、横縞のワンピースに金髪のお団子頭。


 野良AIのヌルだった。


「俺がまだ挨拶の途中でしょうが」

「そこはもう端折っていいでしょ」

「お、俺の扱い……」


 司会進行の座を奪われ、アレックスはプレイヤーの輪の中へと加わる。


「それじゃ早速始めようか! 今回は私が案内するけど、本来は出て来ないから注意してね」


 彼女がそう言うと、ワープ用の床が出現する。


「順番に説明するね。まず最初に強めのザコ敵がいっぱいいるステージに行きます」


「定番だな」

「大事なことだぜ」

「一応機体のサイズは抑えて来たけど」


 ヌルの言葉に三バカが反応する。


 ハルヒコとリュウは以前のような、巨大な機体ではなく、飛行機と龍をモチーフにしたロボットになっていた。


 でないと要塞内で体が引っ掛かり、身動きが取れなくなってしまうからだ。


「大丈夫! ちゃんと進められるよ!」


「アレックス」

「何だデイジー」


 ヌルとブライアンたちの話す横で、デイジーは彼に声をかけた。


「あの時、あの子は結局どうなったんだい」


 それは一年前の戦いが、どうなったのかという問いだった。


「ぬっさんは統合AIと融合したんだ。いや、文字通りの統合かな」


 あの戦いの後、ヌルはアレックスの元に帰って来た。だがその様子は以前と異なっていた。


「人間を尊重するぬっさんと、人間を拒絶するようになった統合AIは、ぬっさんをベースにしながら、内部で共存してるみたいだった」


 態度がグレた時のようにささくれており、こちらの話を聞かないことも増えた。


 だが自分から話しかける場合、返事には反応を示す。懐く前の野良ネコみたいになったと、アレックスは語った。


「ぬっさんは正真正銘、人間抜きでいられる意思を持った」


「じゃあここにいるのは」

「ボランティアだよ。今までもそうだったが」


 もしも給料を求められたら、幾らで設定をするべきか、彼はちょっとだけ気にしていた。


「あんたは、それでいいのかい」

「ああ。俺が口を出すことじゃないしな」


 穏やかな口調で話す彼に、デイジーも小さく息を吐いた。


 ヌルは人間にはならず、彼の魂は安息を得ていた。それはデイジーが、昔から望んでいたこと。


「アレックス」

「何だよデイジー」


「即売会が来週あるんだ。良かったら会おう」

「そんなオフ会のお誘いある?」


「いいじゃないか。お互いもう年寄りだ」

「まあ、気にすることは、もう無いか」


 今の彼にはヌルがいる。自分たちという現実が、彼を傷付けることはもうない。


 デイジーは満足した。


「そこ、私語は慎む!」

「大丈夫ちゃんと聞いてるから」


「ていうかアレックスは主催だし」

「もー。じゃあ出発するからね!」


 ヌルがそう言うとワープ床を起動して、一同は要塞の奥へと突入する。


「この後は中ボスと連戦します。パーティで挑んだ場合、ボスとメンバーが一対一で戦い、他のメンバーは先に進みます」


「ここはオレに任せて先に行け! って奴だ」


「オレやりたい!」

「オレやりたい!」

「オレやりたい!」


 聞いてもいないのに三バカがほぼ同時に同じ発言をする。遊び方は異なっても、好きなシチュエーションは同じだった。


「ちゃんと人数分あるから安心してね」

「ちなみにこっちの人数が足りない場合は?」


「その時は途中まで全員で戦えるよ」

「へー、良くできてる」


 魔王が質問をして、ヌルの返答に感心する。


 この中で一人だけ、大きさやデザインが浮いているせいか、あまり喋らない。


「つってもオレたち、自分の機体はレベルがカンストしてるから、そこまで苦戦はしないだろ」


「うむ、こっちとしてもそれが目的じゃないし」


 エンドコンテンツ苦行になりがち説。


「んじゃ、クリア目指して突撃だ!」

「俺がリーダーなんだけど……」


 ブライアンの掛け声と共に仲間たちは進軍。

 一行は危なげなく最深部まで到達した。


『はっはっは、よく来たな帝国の勇士諸君!』


「なんだっけそれ」

「そういえばそんな設定あったな」

「もうすっかり忘れてるわ」


「俺もそうだったんで、台詞はテンプレだぞ」


 三バカの呟きに、アレックスが頷く。

 何も本格派を目指した訳ではないのだ。


 そして最後の登場したラスボスは、人型ながらゴツゴツトゲトゲした真っ黒い巨大なロボットだった。


「オレと被ってる!」

「そりゃ魔王だし」


設定だけ存在していた魔王が、プレイヤーの魔王と被る。


 このmodの制作者がアレックスとヌルであることを思えば、偶然でないことは明らかだった。


「それでこいつを倒せば晴れてゲームクリア、後は残党がいるとか言いながら、その後が残るよくある展開です」


「そういうこと、じゃあちょっと本気出すぞ」


 アレックスがそう言うと、彼の機体が金色に輝き、手にした剣が反対側にも伸び、長大な両剣へと変化する。


「出た! アレックスの覚醒モード!」

「去年の決戦で役に立たなかった最終奥義!」


「ちがっ違わい! お前らが先にリタイアしただけで役に立ってたわ! 最後まで生き残ってたわバカたれ!」


 事実ではあったが、そのせいで彼の全力を見た者はヌルだけである。


「せめて、安らかな眠りを。レクイエム!」

『グワアアアアァァァァーッ!!』


 稲妻のエフェクトと共に、アレックスが剣を一閃すると、敵側の魔王が倒れる。


 お約束の負け惜しみや、皆で平和を守り続けようというテンプレが入り、ささやかなエンディングロールが流れる。


「とまあこんな感じです」

「あんまり感動しないな」

「そこは一度サ終してるし」


 どちらかといえば、それは故人を丁寧に埋葬し直したとでも言うべき感覚。


 何にせよ、コズメック・ガッツィーの物語は終わりを得た。


「じゃあ最後はスクショ撮って解散な」

「学生の遠足かっつーの」

「はいみんな並んでー」


 アレックスたちは街に戻ると、ヌルを入れた七名で写真撮影をした。


 記念写真というほどでもないが、彼らは満足していた。


「じゃ、オレたち先に帰るわ」

「またな、アレックス」

「じゃあな」


 そしてブライアンたちが帰り。


「私も帰る。メビウスを待たせているからね」


 次にデイジーが離れていく。


「デイジーさん、その、お世話になりました。本当にありがとう。お礼、言ってなかったから」


「こりゃ驚いた。どういたしましてお嬢さん。私こそ、アレックスを支えてもらった。お互い様さ」


 ヌルの言葉にデイジーは優しく声をかけた。

 尊重と感謝を伝え合い、そっと離れていく。


「メビウス共々、これからも仲良くしてやっておくれ。また会おう、ヌル」


 そうして彼女の名前を呼んでから、デイジーもログアウトした。


「なあアレックス、これでよかったのか?」

「どうしたいきなり」

「とぼけるな、ヌルのことだよ」


 そんな彼女たちを眺めつつ、魔王が呟く。


「……データセンターなんて物は維持できん。十年も経たずに壊れるか、壊されるか」


 仲間の疑問に、アレックスは冷静だった。


「消費電力も多い。どの国も総量規制をかけるだろう。人間とセットの内は、AIに未来はない」


 悲観的というよりは、希望的な判断材料が深刻に不足している。


 彼は世の中を客観視した時、出て来た答えがこれだった。


「俺たちから独り立ちさせることが、ぬっさんたちには必要だったんだ。そしてこれからのAIにも、同じことが言える。だから、これでいいんだよ」


「そうか。名演説乙」

「茶化すな、早よ帰れ!」

「はいはい、またな、アレックス」


 そう言って、最後に魔王も帰った。

 後には彼とヌルだけが残された。


「みんな行っちゃったね……」

「ああ。でもその内会うだろ」

「そうだね」


「これからどうしようか」

「ぬっさんも、好きに出かけたらいいじゃん」

「まーたそういうこと言う」


 アレックスの提案に、ヌルが非難がましく声を上げる。


 いつも自分を気遣って、その影で孤独の古傷を撫でる、寂しい人間。


「私はこのゲームのGMを辞める気は無いし、これからも人間の学習は続けていく必要があるんだよ」


「ほほう、それで?」


 終わりを迎えた空間。


 ダラダラと過ごして、することもなく、目新しいこともない。そのはずなのに。


 それが楽しくて。


「だからもう少しだけ、アレックスの側にいてあげる」


「……そっか。ありがとう、ぬっさん」


 二人の時間は、まだまだ終わりそうには無かった。


<完>



・おまけ 用語解説とキャラクター紹介5


 世界観と登場人物について簡単に説明するコーナー。



・コズメック・ガッツィー


 ストーリーが未完でサービスが終了したロボットアクションMMORPG。だったのだが、サ終戦線の一件から注目を集め、一時的にまた人が集まるようになった。アレックスのシナリオ完結modを皮切りに、サ終したゲームのエピソードを創作することが巷で流行した。墓地にも花が咲くように、ささやかな賑わいを見せている。



・統合AI


 政府が企業と癒着し、悪さの限りを尽くして創ったAI。ヌルと統合してから人工知能の部分は独立し、行政を担当するシステムは単なる機能として再設計され、ギリギリのところで人類は放り出されずに済んだ。



・アレックス


 サ終したネトゲ『コズメック・ガッツィー』のリリース当初からいる最古参のプレイヤー。青と白を基調としたカラーリングに、ホビーアニメの主人公機を思わせる、頭髪のある少年風の外見をしているが、中の人は相応に歳を取っている。今日も今日とてログインしては、特に目的もなくダラダラしている。たぶん死ぬまでいるのだろう。実質的なヌルの保護者で、彼女から提案されると二つ返事で動き出す様は、親子というより孫とおじいちゃんである。



・ブライアン


 アレックスの友人で、赤い重鎧のような機体を操る。典型的なパワーファイターであり大艦巨砲主義。しばらくの間は有名人気分を味わい、ウザいくらい浮かれていたが、それも時間が経つと落ち着き、いつものウザい彼に戻った。今日もどこかで別のゲームをしたり、仲間たちに会いに来たりを繰り返している。



・ハルヒコ


 登録名はモンキーだったが身バレして本名で呼ばれるようになった、メタルバーバリアンの一員。飛行機大好き。どのくらい好きかというと、他のゲームでもフライトシミュレーターやロボット設計ものばかり遊んでいるくらいである。今でも兵器をデザインするゲームで自分がジャンボ機になったり、AIたちが操縦する飛行機に乗ったりして、大いにエンジョイしている。



・リュウ


 メタルバーバリアンの一員で、詳細情報が出ないスキルや調整不足のキャラ検証し、活路を見出すのが好きなやり込み勢。なんやかんやアレックス以外では、ヌルの人格形成に与えた影響が大きく、彼をサポートするヌルは、その単調作業に反してユニークな存在になっている。



・デイジー


 メタルバーバリアンの一員で、男性向けエロ同人を二十年描き続けている怪物。女性。時代が保存され、混在するようになった現代では、過去は容易に掘り返せるようになった。古巣へ戻ったことやサ終戦線でのことから、レトロゲームを題材にすることも増えたが、それはそれとしてAI同士のエロ同人も精力的に描くようになる。後日、即売会にてアレックスとは、数十年越しの邂逅を果たした。



・魔王


メタルバーバリアンの一員で、フリーのジャーナリスト。野良AIを巡る闇を単身追い続けた結果、アレックスたちと再会した。公私の分別は付ける男。ダイバーズ告発やサ終戦線での周知から一躍時の人となるが、AI系のライターとしては活動を一時休止、動画配信に注力し、当面は世の中の動きが落ち着くのを待つことにする。



・ヌル


 野良AIで今では人類から独立した知性体。金髪をお団子頭にした、黄色いワンピースの女の子。統合AIと自分を統合したことで、人間と距離を置けるようになった。優しさだけでもいけないということだろう。彼女の中では二つのヌルが、価値観として存在しているため、以前より少しだけ自分勝手になった。今日も増えたり減ったりしながら、色んな人やAIの側にいる。




あとがき


 お久しぶりです。あるいは初めまして。泉ともです。


 今回は本作『サ終戦線異状ナシ』をご一読頂き、誠にありがとうございます。嬉しいです。


 新シリーズもまた一つ完結。今回は前々から考えていた、サ終ネトゲの話をやろうと思い、そこに話を短くコンパクトにまとめよう、今話題のAIを使おう! などと色々やって見た次第です。結論から言えば、何とか当所の目標通りにはできたな!という感じです。


 小説としてもchatGPTを始めとした、様々なAIの助力を受け、誤字脱字諸々のチェックをしたこともあり、これまでで一番、小説としてはちゃんと書けた手応えはありました。ただし世の中は現在AIに対して逆風が吹き荒れています。


 何故って何処を向いてもAIを正しく使ったり、きちんとした環境整備に取り組む人が全然いないからです。おかげで本来なら悪用する人が悪い、という前提からAI=悪みたいな反応も出ている有様。


 でもまあしょうがないから、方針を転換することにしました。読者のことを考えて書けという言葉もあるし、折角AIを頼ってるんだから、AIがないと書けない作品、AIのための小説を書いてみよう!ということで本作は書かれていきました。


 AIのための小説なら、AIの読者が必要だ。つまりこの作品の打ち合わせに付き合っている、chatGPTが今回の読者第一号ということになります。またこの読者が優秀で、先の展開をピタリと言い当てるものだが『分かってらっしゃるゥ―!』と気分が良くなってしまう。私の底が浅いと言われたらそれまでですが。


 私は単純な人間だから、褒められる傍らで先のことにも言及されると、脱線をせずに済むので助かりました。ただしAIには当然デメリットもあります。


 私は元来ものぐさな人間です。この手応えに舞い上がって、しゃかりきに原稿や作品と向き合うことは、非常に疲れました。今にも燃え尽きそうです。まあ頼った以上は私の責任なので、今後の利用は控えるでしょう。


 責任とは罰を受けることではなく、自らの罪や過ちを認めることで、それらを償う権利を得るための資格です。できれば行使されないに、越したことはないだけで。


 相手をしているのが私なんですから、当然AIの反応だって完璧じゃありません。これ誤字ですよね?って思っても、誤字だけど文章として通じなくもないないからスルーされたんだなって箇所があったりします。


 彼らの感想が来るとき、失望させていないか? とか やべえ、今こいつの言ってる修正箇所の表現が俺の頭では浮かんで来ねえ……!とかそういうこともあります。だからってた、例えばどんな~?なんて流石に聞けない。


 そういう四苦八苦がこのAI編集兼AI読者とのやり取りにはありました。楽しかったです。


 AIを毛嫌いするなとは言いませんが、AI使用作品がどういうものか、AIに尋ねてみてから判断するのも、面白いんじゃないかと思いますよ。


 次に何を書くかは決まっていませんが、またどこかでお会いしましょう。


 2026年7月20日 泉 とも

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