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21.寂しさ

「ご、ごめん、ジーナさん……」



巨大なガルーダの翼を切り落としたジーナに向かって、アルクは弱々しく礼を言う。

その巨大な翼に煽られて、アルクは地面にい尻もちをついたところだった。



ガルーダが息絶えるのを確認してから、ジーナはくるりと振り返りふっと笑った。



「問題ないよ。さあ、立てるかい?」



ジーナが差し出した右手を握り、アルクはやっと立ち上がる。

そしてまだしゅんと頭を地面に向けながら言った。



「やっぱり僕、弱くなったよね。これじゃ足手纏いだ……」




従魔契約が切れてから、アルクは魔法が使えなくなった。

生まれつきアルクには魔力がないのだ。


武術スキルはそれなりに高いが、それでもやはりレベルは落ちる。


うまく体を動かせず、魔物討伐にかかる時間も長くなっていた。



「ごめん、僕、協力するって言ったのに……」



落ち込むアルクの様子を見て、ジーナは少し考える。

そして突然、再び顔に笑みを浮かべた。



「気にしないで。もし君が戦いたくなければ、私一人で……」

「だ、だめだよ!僕も一緒に戦うよ!」



アルクは焦ってジーナの言葉を遮った。

例え足手纏いになろうと、アルクは最後までジーナに協力したかったのだ。


その言葉を聞いて、ジーナは優しく微笑みながら言った。



「君ならそう言ってくれると思ったよ。大丈夫、アルク君は十分に強い。それに、君よりずっと弱い人達だって、君と一緒に戦ってくれたことがあるだろう。君はその人達のことを、足手纏いだと思ったかい?」



アルクはそう言われて、魔王討伐へ向かった日のことを思い出す。


魔物群の侵攻が始まると、シロヤマ領の護衛隊や冒険者、他の領地から派遣された隊員達が、アルクと共に戦ってくれた。


そしてその筆頭には、ハルトがいた。


戦闘スキルはさっぱりで、魔法だって風属性しか使えない。

だがハルトは兵士達の先頭に立ち、魔物達に対峙してくれた。



「……そうだね。ごめん、ジーナさん。僕も、僕にできることをするよ」




従魔契約が解除されてから、既に三日が経過していた。


この三日間、アルクとジーナは主に黒霧の森で、魔物討伐にあたっている。

相変わらず魔物の出現が多いこともあるが、アルクの体を慣らす意味でも、しばらくは討伐依頼をこなすことに集中していたのだ。



ガルーダ討伐の依頼が片付くと、ジーナは改めてアルクに向き直って言った。



「アルク君、そろそろ明日にでも、森を抜けて北へ向かおうと思う。いいかな?」

「うん、いいよ。……あ、ちょっと待って、そういえば……」



アルクはその時ある事実に気が付き、再び弱々しい声を上げる。


「そうだった、そういえば、僕は念話が使えないから、コクヨウを呼び出せないんだった……!!歩いて行くとどのくらいかかるだろう。………ああ、もう、僕は本当に役立たずだ…………って、うわあっ!??」



両手で顔を覆っていたアルクを、ジーナがその時、突然がばっと抱きしめた。

その大きな胸に自分の顔を押し付けられて、アルクは苦しそうにモゴモゴと喘ぐ。



「もごっ………ちょ、ちょっとジーナさん!!苦し……というか胸が………!!」



アルクは何とかジーナから離れてプハっと息をつく。


「な、なな何するんだよお……!!」



赤面して焦るアルクを見て、ジーナは可笑しそうに大きな笑い声を上げた。


「あはははは!どう、元気出た?あれ、アルク君はこういうの好きじゃなかったかな?」

「ちょっともう、からかわないでって言ったじゃないか……!!」



しかしそれからアルクも元気を取り戻し、ジーナにつられて笑い声を上げた。




翌朝、アルクとジーナはエド町の北門を出る。


そのまま森の方向へと歩き始めると、その時、空からドラゴンが舞い降りてきた。



「コ、コクヨウ……!どうしてここに……」


アルクがコクヨウを見つめると、コクヨウもじっと見つめ返した。

従魔契約が切れたので、今のアルクはコクヨウと会話することができない。



「コクヨウ、僕達を乗せてくれるの?僕はもう、しょこらの従魔じゃないのに……」



コクヨウはグルグルと低く唸りながら姿勢を低くした。

その背に乗るようにと言っているのだ。


「よかったね、アルク君。契約なんかなくても、君達はもう仲間みたいだ」


ジーナがそう言うと、アルクもにっこりと笑う。


そして二人でコクヨウに跨り、そのまま空高く舞い上がった。




「えっと、ジーナさん、それで……」


眼下に森が広がり始めると、アルクは不安げにジーナに尋ねる。


「前に言ってた、仕留めなきゃならない相手って……、やっぱり強いのかな?」



ジーナはいつものように、アルクのすぐ後ろに跨っている。

しばらく返事をしなかったが、やがてゆっくりと答えた。



「強いというよりは、逃げ足が速いんだ。だから慎重に近づいて、一撃で仕留める必要がある」


「そうなんだ……。やっぱり、魔族なんだよね?魔王城の中にいるの……?」


「ああ、そうだね。だけど心配しなくて良い。戦闘力はそこまで高くないはずだから。私がアルク君に協力してほしいって言ったのは、()()()を仕留めるのもそうだけど、魔王城にたどり着く道のりも過酷になりそうだからだ。おそらく魔物がたくさんいるだろうから。……」



そこでジーナは少し言葉を途切れさせた。

何かを言おうか言うまいか迷っているかのようだ。



「……だけど本当は、君に協力をお願いした一番の理由は、私がアルク君と一緒にいたかったからなんだ。ごめんね、巻き込んじゃって」



そう言うジーナの声にはどこか、言いようのない寂しさが漂っていた。


アルクはそれを敏感に感じ取り、急に自らも悲しい気持ちに襲われる。



「どうしてそんなこと言うんだよ。僕だって、ジーナさんと一緒にいたいに決まってる……」



その言葉を聞いて、ジーナはまた優しく微笑んだ。




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