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シロエとクマ  作者: むあ
1/2

シロエとクマ 1

昨年の童話祭にだすつもりが、執筆中作品の中にうずもれてしまっておりました作品です。


 (ちい)さな(まち)(ちい)さなパン()さん。

 そこにはクマのパンが大好物(だいこうぶつ)な小さな(おんな)()がいました。


 名前(なまえ)はシロエ。

 パン屋のおかみさんは、ずっと(ちから)のつよい(おとこ)の子がほしかったので、シロエが()まれた(とき)、女の子の名前をかんがえていませんでした。生まれても名前がないのはかなしいことです、だから仕方(しかた)ないので、そんな女の子の名前はシロエとなりました。


 小さな町の(なか)でシロエはシロと()ばれ、シロは町の(みんな)大好(だいす)きで、皆もシロのことが大好きなのでした。


 小さなシロはいつもパン屋のおかみさんにこう言います。


「お(かあ)さん、(あさ)(はん)にクマのパンをくださいな」


 するとおかみさんは(こた)えます。


「シロ、お手伝(てつだ)いをしなきゃパンはあげられないよ」


 お母さんであるおかみさんはシロエをけっして(あま)やかしません。

 今日(きょう)もいつものように、パン(づく)りに使(つか)()()をとってくるように言いました。


「はい、お母さん」


 シロエは町はずれにある(はやし)の中にむかいました。


「ねぇねぇかわいいシロエちゃん」


 町はずれの林の中には小さな木苺(きいちご)のようせいがいます。

 ようせいはいたずらが好きですが、正直(しょうじき)でやさしくて、かわいいシロエにはいたずらをしません。



 シロエがすすむさきに“いばら”があるだとか、ここのいずみは(みず)がおいしいだとか、ようせいはシロエにたくさんのことをおしえてくれます。シロエはようせいが大好きで、ようせいもシロエが大好きでした。シロエは毎日(まいにち)こんな(ふう)に、木の実をとって(いえ)にかえり、クマの(かたち)をしたパンをもらうのでした。






 そんなシロエも16さいのきれいな(むすめ)になりました。

 きれいなシロエを()て、町の青年(せいねん)たちはいつもおかみさんにこう()います。


「おかみさんやい、シロエを僕のお(よめ)さんにくれよ」


 お母さんであるおかみさんはシロエをけっして(はな)しません。


「かわいいシロエはいつか、どこかの(くに)王子様(おうじさま)とけっこんするんだよ」


 そう言うと、青年(せいねん)たちはくやしそうに、王子様になりたかったなぁと言いながらかえっていきます。そんな青年たちを見ながら、おかみさんは言いました。


「シロエ、今日も木の実をとってきておくれ」

「はい、お母さん」


 シロエは町はずれにある、いつもの林の中にむかいました。






 その()、林には(めずら)しいお(きゃく)さまがいました。

 となりの(おお)きな(くに)王子(おうじ)がいたのです。



「今日こそ鹿(しか)をしとめてやる」


 王子(おうじ)はそういって、ぎりぎりと、器用(きよう)(ゆみ)をひきました。

 ちょうどその(とき)、しげみの(なか)からシロエがあらわれたのです。


 鹿(しか)だと思った王子(おうじ)はその()を放ち、シロエは不幸(ふこう)にも、その矢に()たってしまったのでした。おどろいて王子(おうじ)がかけよると、シロエは(かな)しそうにわらい、そしてゆっくり()()じました。


 そんなシロエのかなしいすがたを最初(さいしょ)()たのも、そしてその冷たくなった(からだ)()れたのはもちろん、シロエを(きず)つけてしまった王子(おうじ)です。王子(おうじ)はこんな(うつく)しい(むすめ)さんを(ころ)してしまったことにふかく(かな)しみ、(なみだ)をこぼしました。






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