6話
第六話 危険な場所
しばらく誰も喋らなかった。
窓の外を見ても、もう誰もいない。
さっき人が死んだ場所だけが残っていた。
「……ここにいても仕方ないな」
スーツの男が言った。
誰も反論しない。
腹は減る。
喉も渇く。
どれだけ怖くても、生きるためには動かなければならなかった。
「食料を探そう」
その一言で決まった。
外は既に夕方だった。
赤く染まった街は不気味なくらい静かだ。
人の気配がない。
車も動いていない。
風の音だけが聞こえる。
俺達は周囲を警戒しながら歩いた。
会話はほとんどない。
全員が同じことを考えていた。
能力者に会いたくない。
ただそれだけだった。
やがてコンビニを見つける。
入り口のガラスは割れていた。
誰かが先に来ている。
それでも入るしかない。
店内へ入る。
棚は荒らされていた。
だが全部ではない。
飲み物も少し残っている。
カップ麺もあった。
「助かった……」
美咲が小さく息を吐く。
俺も少し安心した。
その時だった。
店の奥から音がした。
全員が固まる。
ガタン。
何かが倒れる音。
誰かいる。
俺達以外に。
スーツの男がゆっくり奥へ近付く。
俺達も後ろからついていく。
そして。
倉庫の前で立ち止まった。
扉は少しだけ開いている。
中は暗い。
見えない。
「誰かいるのか?」
男が声をかける。
返事はない。
沈黙。
数秒。
そして。
倉庫の中から一人の青年が出てきた。
俺達と同じ参加者だった。
年齢は二十歳くらい。
顔色が悪い。
だが向こうも安心したようだった。
「よかった……」
それが第一声だった。
「能力者じゃなかった」
誰も笑わない。
その言葉の意味が分かったからだ。
青年も俺達と同じだった。
戦う側ではなく。
逃げる側。
しばらくして全員で店内を探し始める。
食料を集める。
水を確保する。
少しだけ。
本当に少しだけ。
生き残れる気がした。
だが。
その時だった。
外から轟音が響く。
ドゴォォン!!
店全体が揺れた。
棚の商品が落ちる。
ガラスが砕ける。
全員が反射的にしゃがみ込んだ。
「なんだ!?」
誰かが叫ぶ。
俺は窓の方を見る。
そして息を呑んだ。
道路の向こう。
百メートルほど先。
二人の能力者が戦っていた。
片方は炎。
もう片方は何か分からない。
だが。
その余波だけで周囲の建物が壊れていた。
「離れろ!!」
青年が叫ぶ。
その瞬間。
俺はなぜか足を止めた。
違和感があった。
理由は分からない。
ただ。
出口へ向かう気になれなかった。
俺は無意識に棚の裏へ身を隠す。
次の瞬間。
爆発。
コンビニの入り口が吹き飛んだ。
轟音。
悲鳴。
衝撃。
世界が揺れる。
俺は咄嗟に頭を抱えた。
数秒後。
恐る恐る顔を上げる。
店内は滅茶苦茶だった。
煙が充満している。
商品も棚も倒れていた。
耳が痛い。
何も聞こえない。
「みんな!」
俺は叫ぶ。
返事がない。
必死に周囲を見回す。
やがて。
美咲の姿を見つけた。
生きている。
スーツの男もいた。
無事だった。
だが。
青年の姿だけが見当たらなかった。
そして。
崩れた入り口の近くから手が見えた。
コンクリートの下。
動いていない。
誰も言葉を発しなかった。
外ではまだ戦いが続いている。
能力者達は知らないのだろう。
いや。
知っていても気にしないのかもしれない。
自分達の戦いで。
誰が死のうと。
その時。
空に浮かぶ数字が変わった。
【983】
【982】
また一人減った。
俺はその数字を見つめる。
そして初めて思った。
このゲーム。
最後まで生き残れる気がしない。
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