1話
目が覚めた時、俺は知らない場所にいた。
真っ白な部屋。
学校でもない。
家でもない。
病院でもない。
ただ、広い。
そして人がいた。
大勢。
ざっと見ただけでも百人以上はいる。
みんな困惑していた。
当然だ。
昨日まで普通に生活していたはずなのだから。
「ここどこだよ……」
「誘拐か?」
「スマホ繋がらねぇぞ」
ざわめきが広がる。
俺も同じ気持ちだった。
何が起きているのか分からない。
すると突然。
天井に巨大な画面が現れた。
同時に部屋全体が静まり返る。
そして。
画面の中に、笑顔の男が現れた。
『皆さん、おはようございます』
誰も答えない。
男は気にした様子もなく続けた。
『突然ですが、皆さんには殺し合いをしてもらいます』
数秒。
誰も理解できなかった。
『最後の一人になった者には、どんな願いでも一つ叶える権利を与えます』
沈黙。
そして。
「ふざけんな!」
誰かが叫んだ。
当然だ。
冗談にしか聞こえない。
だが男は笑顔のままだった。
『それでは能力配布を開始します』
次の瞬間。
全員の目の前に半透明の画面が現れた。
俺の前にも。
【能力抽選中】
文字が流れていく。
周囲から歓声が上がった。
「マジかよ!」
「能力だ!」
「俺、炎操作だって!」
「こっちは身体強化!」
興奮する声。
不安より期待が勝ったらしい。
俺も自分の画面を見る。
そして。
【生存】
たった二文字だった。
「……は?」
説明を探す。
だが無い。
能力名しか表示されていない。
意味が分からない。
生存って何だ。
戦えるのか?
攻撃できるのか?
何も分からない。
周囲では盛り上がりが加速していた。
「雷だ!」
「俺は念動力!」
「やべぇ!」
一方で俺の能力は。
生存。
生きる。
それだけ。
嫌な予感しかしなかった。
『それでは転送を開始します』
男がそう言った瞬間。
世界が白く染まる。
思わず目を閉じた。
そして。
次に目を開いた時。
そこは巨大な都市だった。
高層ビル。
崩れた道路。
誰もいない街。
見渡す限り廃墟。
映画みたいな光景だった。
空には巨大な数字。
【1000】
浮かんでいる。
何の数字かはすぐ分かった。
参加者の人数だ。
そして空から声が響く。
『それではゲーム開始です』
『最後の一人になるまで生き残ってください』
その瞬間だった。
爆発音。
遠くで誰かの悲鳴が聞こえた。
ゲームが始まったのだ。
俺は反射的に走り出した。
戦うためじゃない。
逃げるためだ。
能力も分からない。
武器もない。
そんな状態で戦えるわけがない。
とにかく隠れよう。
そう思って角を曲がった時だった。
ドンッ。
誰かとぶつかった。
「痛っ!」
顔を上げる。
そこには三人組がいた。
全員、俺と同じ参加者だ。
そして。
俺の頭の上に浮かぶ文字を見て笑った。
【生存】
「なんだそれ」
「ハズレじゃねぇか」
「生存って何だよ」
三人は大笑いする。
俺は何も言えなかった。
なぜなら。
俺も同じことを思っていたからだ。
そしてその時。
遠くから再び爆発音が響いた。
ゲーム開始から。
まだ十分も経っていなかった。
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