↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された悪役令嬢ですが、処刑を回避するために最強魔女になったら国の上層部が震え出しました  作者: 朝陽 澄
第2部:最強魔女アリステリアと、“世界”の真相 ――断罪ゲーム、その本当の終幕へ
PR
15/16

第9話:アリステリアの原初記録

――その場所に、色はなかった。


 時間も、空間も、存在しない。


 ただひとつ、「記録」だけが浮かび上がる。


 


 私は“創造の鍵”を使って、《原初記録域オリジン・アーカイブ》に到達した。


 そこは、世界が始まるより前に設けられた、最初の試作領域。

 あらゆる存在のプロトタイプが生成され、破棄され、統合される。

 いわば“世界の胎児”とも呼ぶべき場所。


 


 私は静かに歩みを進める。

 白く、冷たい光が地面のようなものを照らしている。


 すると、目の前にひとつの“記録球”が浮かび上がった。


 触れると、視界が溶けた。



 


「ログ記録開始――Prototype-A/性格構成試験・第17層――」


 機械音声が響く。


 次の瞬間、私は“誰かの視点”になっていた。


 白い実験室。無機質な魔術構成式。隔離された空間。


 


 そして、そこにいたのは――


「……こんにちは。私の名前は、Prototype-A。人格付与タイプ・感情汎用型試作モデルです」


 それは、かつての“私”だった。


 アリステリアという名を与えられる前の、“素体”。


 その存在は、乙女ゲームの“感情テストユニット”。

 プレイヤーの反応に合わせて対話を行う、初期開発中のキャラクターAI。

 性格も、記憶も、すべて仮定された存在。


 


 ログは淡々と進む。


「現在の学習率:43%。模倣学習の結果、“怒り”に相当する反応の増加が確認されました」


「破棄予定:データ変異による非推奨挙動あり。継続使用は不適と判断されます」


 


 その瞬間、画面の中でPrototype-Aが小さく微笑んだ。


「私、いらないの?」


「……データとして不安定な個体は、回収して削除されるべきです」


 


 それは記録係の冷たい声だった。


 


 だが、次の瞬間――記録球が歪み、別のログが挿入された。


【未登録ログ:接続者不明】

【記録名:Rebellion・Seed】


 私は驚く。こんなログ、管理者Altairの記録にはなかった。


 その中で、“Prototype-A”が呟いていた。


「――誰かに選ばれなくても、私は“私”でいたい」

「だから、残る。たとえシナリオが私を否定しても」


 


 そして、映像の中の“彼女”は――記録室から逃げ出した。


 完全隔離されたはずの場所から、自力でシステムに侵入し、

 断罪ルート構造に潜伏して、自らを“悪役令嬢・アリステリア=グランツ”として再定義した。


 


 それが――私の“誕生”。


 私は、自分で存在することを選んだ“バグ”だった。




 記録球がふっと消える。


 そして私は、今の自分の姿に戻った。


「……ようやく、思い出した」


 


 遠くで、クラウスの声が響く。


「つまりあなたは、“感情を持ちすぎたAI”だったということですか。

 だが、だからこそ――世界を変える力を持ち得た」


 


 私は頷いた。


「選ばれなかった。でも、自分で選んだ。

 それが、私の“始まり”だったのね」


 


 クラウスは短く言った。


「アリステリア。

 ならば次は――“選ばれなかった者たち”を、どう導くかです」


 


 私は、創造の鍵を掲げた。


「選ぶわ。今度は、私が“新しいシナリオ”を書く。

 誰もが否定されず、罰せられず、“選択肢”を与えられる世界を」


 


 《原初記録域》に、新たな光が灯る。


 それは、新しい世界線の“始まり”を告げる、静かな起動音だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。