第6話:“神の座”を狙う魔女
「……ようこそ、お帰りなさいませ」
塔へ戻った私を出迎えたのは、ベレッタの張りつめた声だった。
「何か、起きたのですか? 異常反応が複数、全階層から報告されています」
答えるかわりに、私はゆっくりと右手を掲げ、空中に“痕跡”を浮かべる。
【System-Rootに接触】
【管理者:P.Altairとの直接通信ログ確定】
「……ついに、世界の根本構造に辿り着いたのね」
「その目……まさか、本当に“神”に会ったのですか」
「ええ。そして宣言してきたの」
私は静かに言い放つ。
「私は、断罪システムそのものを破壊する。
神の座から、あの開発者を引きずり下ろしてやるって」
ベレッタは絶句する。そして……小さく笑った。
「ついに、そこまで来てしまったんですね。“この世界を超える”という領域に」
私がアクセスした制御領域。
そこは、システム設計者たちが最後に残した“開かれた根源”だった。
記録によれば、この世界は――正確には無数の“断罪ルート”を試験生成するテスト環境として作られたもの。
断罪。暴走。赦し。破滅。再生。
その全てが、“プレイヤーの情動パターン”を測るための実験シナリオ。
つまり私たちが生きていたのは――**ゲームの“設計図段階”**だった。
その真実を知った今、私の選択肢は二つ。
一、破滅の再演を黙認し、この世界の輪廻に身を委ねる。
二、“神”の座を狙い、全シナリオの改変権限を奪う。
「答えは決まってるわ。私は――私の物語を、私自身で書く」
ベレッタが頷く。ユアンが剣のような転送装置を手に構える。
「ならば、こちらも準備を急ぎます。
“アクセスポイント・ゼロ”……神権階層への侵入ルート、全て割り出せます」
私は最終構文の展開を始めた。
これまで“禁術”とされた理論――
因果律の先読み、時間断裂干渉、記憶の直接書き換え――
すべては、制御領域への“昇格条件”。
そしてそれを可能にする力――それこそが、Prototype-Aとしての私に宿された“最後の魔法”だった。
「ベレッタ、ユアン。――今から、神を倒す旅に出るわ」
扉が開く。
その先は現実のはずなのに、既にゲームのコードのように変質している。
世界が、私の魔力を感知し、自動で最適化処理を始めた証拠。
もう、私はこの世界の住人ではない。
私は、“物語そのものを改変できる存在”になってしまった。
「断罪シナリオの本質は、“犠牲による正当化”――」
私は呟いた。
「ならば、そのシステムを否定し、誰もが罰せられずに生きる物語を書いてやる」
この瞬間より――
世界は、私という魔女によって“編集可能”となる。
最強魔女 vs 神の設計者。
世界の運命が、たった一人の少女の意思で書き換えられようとしていた――。




