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瑞雲高く〜戦国時代風異世界転生記〜【1周年感謝】  作者: わだつみ
三章・明日をも知れぬ村(青年編壱)

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45・苗代

 農業の事を書こうと思うと気になる点が次々出て来て間に合わなかった上に、ほぼ書き終えていた本文が吹っ飛んで投稿が一回飛びました。すいません。

「…出来た。」

誰かがぽつりと呟く。

 目の前に有るのは二本の三和土製の水路。そしてそれが繋がる長方形の湯船だ。

 湯船はなるべく平滑な石を敷いて三和土は目地として使って石灰を節約した。

「湯を入れよう!」

また誰かが今度は我慢の限界だとばかりとばかりにそう叫ぶ。

「待て待て待て!まだ三和土が乾いておらん!まだ数日は待って、まずは水路にきちんと水が流れるか確認してそれから風呂だ。」

「「えぇ!?」」

いや、前から説明してたじゃないか…

 まぁ、秋から春まで色々とやらされた良く分からない作業の内、漸く形になったものが出来たのだから気持ちは分からなくもないが…この間の襲撃を容易く撃退出来た事も影響しているのかもしれない。どちらにしても良い傾向だろうと思う。


「こりゃあ楽だ!」

蒼風の引く犂を押しながら竹丸が声を上げる。

 二度の襲撃で手に入った槍の穂先から再生した鉄のほとんどを使って作った犂だ。西の秋津島では割と各所で見られる牛や馬に引かせる犂だが、東の敷島では余り普及していない。

 そこで経験者の祥智と祥猛の下で、犂の製作と使い方の指導が行われている。

 但し、折角馬が三頭居るのに残念ながら作成する事が出来た犂は一つだけだ。

 残った僅かな鉄は先が三又に分かれた鍬の先端に使われた。これも出来たのは二つのみだが。

 犂は差し当たり木製の物も追加で作らせている。秋津島で見られる物も多くは木製だったはずだから、木製でも効率は大幅に改善されるだろう。

 犂の後ろからは一冬越えて完成した腐葉土を撒く一団と、更にその後ろからは犂で掘り返された土と腐葉土を三又鍬で混ぜながら土を更に細かく耕して行く一団が続く。

 因みに腐葉土と言ったが途中から汚れた馬の寝藁やら糞も放り込んでいたので腐葉土だか堆肥だか分からない代物となっているが、きっと大丈夫だと思う…


 さて、眼下の田では足を泥に沈めながらこちらでも腐葉土の撒布と従来の鍬での耕起が行われている。

 こちらは馬を入れると村総出での救出作戦になる事は明白なので完全人力だ。

 それでも水の出入りは制御した事で沈み込みは改善されたし多少マシになっただろう。

 因みに人数的には道具の数の問題も有りほとんどの人間が田に回っている。こちらが問題無ければ俺もあちらに応援に行かないといけない。


 今年の田畑はとにかく様々な作物、同じ作物でも様々な品種を試す事を目標としている。

 その為、祥智に昨秋の買出しの時に手に入るだけの種を買って来て貰ったのだ。

 まず穀物だが、水田は稲、これは糯米も含む四種類の種籾が手に入った。水田では稗も候補だが差し当たって米を優先して試す事にする。

 稗は収量が安定する反面、通常の収量は米に大分劣ると言う特性がある。

 また、食べるまでの精製に掛かる手間が米に比べてかなり大きいのも問題だ。

 そして何より、稗は稲を作付けした田では最大最悪の雑草の一つとなる点も問題になる。

 米が軒並み駄目となれば全面的に稗の栽培に切り替える事は想定しているが、今の所は稲を優先したい。


 一方で畑の方は、粟と蕎麦を中心とし、前述の三種に問題が出た場合は生育期間が極めて短い黍を緊急で植える事を想定している。粟は二種類手に入った。

 そして、豆類は大豆と小豆がそれぞれ二種、それから沓前で育てられている千石豆と呼ばれる豆が手に入ったのでそれも植えてみる。千石豆は扁豆(へんず)と呼ばれる生薬にもなるらしい。

 それから芋。里芋がニ種と長芋が一種手に入ったのでこれも植えていく。

 それ以外には通常の野菜、根菜類、秋からは昨年は種籾を食べ尽くしてしまって作付け出来なかった麦が入って来る予定だ。

 これ等の中から土地に合った物を輪作で作って行こうと思っている。順調に行っても安定するまでには数年を要するだろう。そうだ、四太に瓜を育てさせるのを忘れない様にしないとな。


「落ちるなよ、そして落とすなよ。」

田畑の耕起が終わると次は苗作りだ。

 冬の間に作り溜めしておいた葛籠の蓋の様な物を苗代として、田の泥と腐葉土を混ぜた物を敷いて水をしっかり含ませ、浸種させた種籾を蒔いて薄く土を被せる。そしてそれを…源泉の傍に並べる!

 常に膨大な熱源が近くにあるのだからこれを温室代わりとして利用しない手は無いと考えたのだ。

 その為に源泉側の水門を作った時にその周辺を三和土ブロックを駆使して平らになる様に整備しておいた。

 勿論、上手く行くかどうかなんて分からないし、恐らく酸性であろう温泉の近くに置いておく事で、湯気を浴びて土壌が酸性に傾かないか、水に浸かっていない状態で発芽するか等分からない事も多いので最悪の場合は今年は今まで通り直播になるだろう。


 稲の苗代を作ったら次は粟と蕎麦の苗代も作ってみる予定だ。これらは直播と比較する事にしている。

 そして川の向こう岸には、これも冬の間に佐吉の炭焼き釜の片隅で焼いて作り溜めしていた素焼きの植木鉢に村の周辺に植えたい果樹や商品作物となる樹木の種を植えている。

 桃栗柿のお馴染みの果樹に、桑の木も欲しい。桑の実ってこの時代で手に入る果物の中だとかなり甘くて美味しいんだよね。それにいつか養蚕にも手を出したいものだ。他には梨と枇杷もだ。

 商品作物としては取り敢えず油用に実績の有る椿。楮や三椏も植えて製紙に使いたいが職人に当てが無い。

 だけど、いざ職人の当てが出来た時に慌てても遅いから育てて置こう。

 あ、そう言えばそろそろ筌を使って魚を取ってみよう。また、皆に手伝って貰わねば。

 以前より度々振り仮名ルビに対するご指摘を頂いております。今までそれについて私の考えをお伝えしていなかったのでお伝えしようと思います。

 私は固有名詞や特殊な読み方をさせたい場合を除いてほとんど振り仮名を振りません。理由としては、これが紙媒体であれば勿論振ったんでしょうが、web媒体ではPCであろうがスマホであろうが容易にコピーからの検索が可能である事です。

 私がそうして読めない漢字を検索して読みを調べることに楽しみを感じる為に、こんな牛歩ちまちま系小説をお読み頂いている読者の皆様も似た様な性癖をお持ちであろうと勝手に期待して敢えて振り仮名を極力排除しているんです。

 そんな奴イネーよと言うご意見が多ければ方針変更しようかなと思います。

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― 新着の感想 ―
[一言] これ読みにくる人が読めない漢字多分今のところ無いと思います ただし商業化の際に地獄を見る、かな?
[良い点] 湯舟完成おめでとう 温泉熱を利用した苗代の早期栽培も上手くいってほしいね [一言] 蒼風を農耕馬代わりにするのは贅沢すぎる 農耕用に牛も欲しくなりますね
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