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瑞雲高く〜戦国時代風異世界転生記〜【1周年感謝】  作者: わだつみ
三章・明日をも知れぬ村(青年編壱)

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24・近くの隣人(地図有り)

急用と下記の設定変更で過去分の修正をしていたら昨日中に投稿出来ませんでした。申し訳ありません。

また、設定的にちょっと無理が出ると考えたので’第126部分5・外れ籤’の冒頭、彌尖国の歴史の部分を少し修正しました。大筋に影響は出ませんが、今後対外的な話になる時に少し違いが出るかもしれません。

お詫びも兼ねて本日はこの後20時にもう一本投稿します。


それと、前回登場した早瀬七ヶ村は早瀬七庄に名称を変更します。前回の分も修正致しました。

理由は、そっちの方が格好良い気がするから!!

「御坊、早瀬七庄について教えて下され。」

夕餉の後、才田殿に聞いた事を尋ねる。

「良くご存知ですな。しかし、これは成程、中々良い物ですな。」

柳泉がそう言うのは、俺の拵えた急増の足湯だ。月明かりの中、祥猛を加えた男三人で足を突っ込んでいる。

「お分かり頂けますか!?首まで浸かれれば更に良いのですがなぁ…」

実に残念だ…

「左様に良い物ですか。是非味わってみたいものですな。」

「兄者…湯の話ではなかろう。」

二人で呆けていると祥猛に叱られる。

「そ、そうであった…それで御坊。」

「は、七庄の事でしたな。これは早瀬盆地に勢力を張る七つの勢力を指します。まぁ、領主の住む七つ村と言い換える事も出来ますな。」

ばつが悪そうに柳泉が話し始める。

「て事は、この村も七つの内って事ですか?」

祥猛がそう聞く。

「いえ、残念ながら…」

「「…」」

「ま、まぁ、良いではないか。いつの日か、その七庄よりこの村を豊かにすれば良いのよ。取り敢えず、一番大きい勢力と一番近い勢力について教えて頂けますか?」


「で、では…一番近いのは平林です。早瀬川が南に向きを変え、西からの秋川が合流する辺りに位置しています。川の東の平林の集落が大きく、秋川の南の集落と合わせて平林氏が治めています。」

「つまり西の崖のすぐ下と言う事で?」

「そう言う事になります。集落は少し離れていますが田畑は川の向こうまで広がっています。」

思った以上に近いな。

「歩いて一刻もあれば行けてしまうか。」

「坂の下からであれば半刻もあれば十分行けますな。」

「集落は門から見えますか?」

「家々は森の影で見え辛いですが北側の田畑なら見えます。」

「境界争い等は起きた事は?」

「無い、と思いますな。そもそも我等は崖下に降りる事はほとんどありませんから。」

「少し下流で葦原で萱を刈ると聞きましたが。」

「あそこに彼らは来ません。秋川との川俣に大きな葦原が有りますので。」

可能なら暫くは関わりたくない。

「何か交流はあったのですか?」

「税を納めていた頃は一緒に荷を運ぶ事がありましたが、それでも向こうはこちらと余り関わりたくない様子であったとは聞きます。」

「それは、こちらを下に見ていたと言う事ですか?」

「それもあるやもしれませんが、後ろめたさもあったのではないかと…あの村は社領の多くが勝手をする中で最後まで大社に従っていた村の一つなのです。ですが最後の最後、佐高家の侵攻の折に寝返った。裏切らなかった者の末路である我等を見て、蔑む気持ちと後ろめたい気持ちの両方を感じたのではありませんかな…」

「成程…人の心と言う物はなんとも難しい物ですな…」

しかし、それなら我等の事は露見せずに済むかもしれん。だが、様子は確認しておきたいな。西の崖から遠目に覗けるだろうか。

「では、大きい方を。あ、因みに平林は規模で言うと七庄の内でどの位になりますか?」

「田畑の広さだけで言えば上の方でしょう。ただ、あの村は川が急激に曲がる場所にあるせいか、川が良く氾濫しましてな。」


「成程、では今度こそ。」

「はい、一番広いのは早瀬庄でしょう。その名の示す通り、古来より早瀬盆地の中心であった場所です。」

「位置的にはどの辺りになりますか?」

「彌下平野より刈込峠を抜けた最初の庄が馬下(ました)庄、その次が早瀬庄になります。この二庄は佐高家から来た海東(かいとう)家が支配しています。」

「盆地の出入口を扼する土地と最も豊かな土地を抑えて他の領主を押さえ付けている訳ですな?」

「左様ですな。」

単純だが効果的なやり方だ。

「そこからは税を支払えとは言って来ないのですか?」

「来ませんな。海東は佐高家の直臣ですから、名目上は横柴の領地であるここに直接命を下すのは憚られるのやもしれませんな。」

「成程、それはあるかもしれませんな。または、それを理由に横柴家に貸しを作るか。」

「成程…権力を持つと言うのも大変ですな。」

柳泉が呆れたような表情でそう言う。

「海東の石高はどの位か分かりますか?」

「早瀬の石高は二千程と聞いております。馬下は斜面が多く、田が少ないですから両方合わせても三千を少し超える位でしょうか。」

「三千ですか…」

海東家だけでも動員人数は百人近いか…となると攻めて来るのは百程度と言う想定は少々甘かったか。

「因みに、早瀬盆地全体ではどの位の石高になるのです?」

「一万石には届かないと言われておりますな。実際の所は分かりませんが凡そ一万石と考えて頂ければそう大きく食い違わないかと。」

早瀬盆地全体では三百を超えるか…何とか人を増やさねば…その為にはまずは田畑の整備だな。


「良く分かりました。対外的には、我等がここにいる事が露見するのを極力避ける事。これを第一に行動致しましょう。」

「畏まりました。そう言った方策を立てるのは拙僧には困難ですので全てお任せ致します。」

「しかし、気付いた事は伝えて下され。我等はその分、ここいらの事には詳しくないのですから。」

「そうですな。そういたしましょう。」

「ところで、海東家が押さえている早瀬、馬下の二庄を元々支配していた家はどうなったのです?」

「馬下家は佐高家の侵攻の際には既に寝返っていた様で、敵を引き込んだのです。その見返りに、彌尖平野に新たに領地を得ました。」

「成程、それでは他の家は抵抗しようにも…」

「はい、それでも抵抗したのが早瀬庄の内川家でした。しかし、多勢に無勢。他の庄からの後詰を待つ間もなく…それを見た残りの勢力は皆戦わずして佐高に下る事になりました。先程の平林もその一つですな。」

「成程、それは一概に平林を責められませんな。」

そうは言っても心の内は簡単に割り切れんのだろうが…

「それと…いや…」

柳泉が何か言おうとして口籠る。逡巡した様子で目を泳がせている。

「どうされました?」

そう、尋ねても迷った様子のまま黙っている柳泉。

「いや、やはりお伝えしておきましょう。宗太郎の家は、その内川家であったと伝わっております…」

「「はぁ!?」」

何が年貢を運ぶのを取り纏める家だ…いや、きっとそれも仕事の内だったのだろうが。とんでもない大物じゃないか…

「ま、まぁ…それが今すぐ何かに影響する事はありますまい。因みに本人はその事は?」

「どこまで両親から伝え聞いているかは分かりません。もう少し成長したらば拙僧からも伝えようと考えておりますが…」


挿絵(By みてみん)

意外と大物だった宗太郎。当分はただの少年です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 無料で読める小説の中で最大級に丁寧な小説だと思います。 だからこそ、無理だけはしないで下さい。 いつまでも楽しみにしているんですから。
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