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・それは、まだ世界の在り方を知らなかった古き頃。珍しく親がレジャー施設に連れてきてくれた時の事だ。
しかし親は笑わずこちらを見ず、端末を動かしている。今になってみればそれが自分の生体データの確認をしていたのだと分かる。
しかし、そんなことを知らなかった自分はとにかく走り回って遊んだ。池のある公園で、僅かな足場を使って飛ぶように先に進んでいく。一度苔に足を滑らせて池ぽちゃしてしまったが直ぐに開き直って池の中を泳いで回った。こうして思い出してみれば自分はどれだけアグレッシブだったのかと突っ込みたくなる。突っ込んで過去を誤魔化したくなる。それが出来るのだからそれからは大人になってくれたということなのだろう。
そんな中だ。
「~♪」
何か聞こえるものがあった。歌だ。聞いたことのない歌だった。声は幼い。性別の判断は付きにくかったがやがて少女の物である事が分かった。その音色を追いかけてみる。初めて他人の目の及ばない領域への行動はちょっとした冒険だ。全身服がびしょ濡れで間違いなく重くなっているのにも気付かぬほど冒険心に身を弾ませていた。そしてたどり着いたのは自然公園の森の中にあるアスレチックだ。ジャングルジムのような遊具の一番上に自分と同い年くらいの少女がいた。その少女が歌を歌っていた。
「……あ!」
自分に気付いたのか、こちらに視線を飛ばす。
「どうしたの?」
「うん、降りられなくなっちゃったの」
近付いて、様子を見やる。遠目で見た時以上にこのアスレチックは老朽化していて、足場どころか全体的に軋みを上げていて、いつ崩れてもおかしくない状態だった。さらに見れば、上に、少女のいる場所に続く足場のいくつかは腐り落ちていた。
「だからお母さんを呼ぶために歌を歌っていたの」
「でも……」
見る。確かに下には降りられないし、自分が上に上がる事も出来ない。
しかし、少女のいるてっぺんには隣のアスレチックに繋がる吊り橋のような遊具があった。あれも老朽化が激しいだろうがまだ小学校にも上がっていないであろう少女が一度通るくらいなら問題ないだろう。
「あれなら大丈夫じゃないの?」
「う~ん、でも僕、目がよく見えないから」
「そうなの?」
「そうなの。うっすらとしか見えないの。だから君が最初来た時もお母さんかと思った。声で違うって分かったけど」
「……でも、このあたりには誰もいなかったよ? 歌ってるだけじゃダメじゃないかな?」
「でも、僕もうこうするしかないし……」
「ねえ、君は歌が好きなの?」
「うん。大好き」
「でも、歌は楽しい時に歌うものだよ? 今、楽しい?」
「わかんない。そんなこと聞いてどうしたの?」
「待って。今私が向こうから行くから」
急いで隣のアスレチックまで走って、上って、釣り橋を渡る。グラグラ揺れて怖かったけど、もっとよくあの子を見たかったから自分は走っていた。
「あ、」
「ほらね。大丈夫だよ」
「……君は髪の毛が真っ黒なんだね」
「そう言うあなたは真っ白。幽霊かと思った」
「む、僕は幽霊じゃないよ? 名前だってあるんだから」
「なんてお名前?」
「歩乃歌。紫歩乃歌っていうの。歩いて歌うって書いて歩乃歌」
「じゃあやっぱりあなたは歌う時は楽しく歩いてないと」
「でも……」
「あなたの名前はね、歩きながら歌う女の子って意味だよ? だから何事も楽しまなきゃ」
「怖い事も?」
「怖いのは仕方ないけど、でもあなたなら出来るよ。ほら、手を繋いであげるから」
歩乃歌を名乗った少女と手を繋ぎ、一緒に吊り橋を渡る。
近くで見れば、その少女は自分とは全く違うのがよく分かった。
髪の毛は白いし、目は泣いてるわけでもないのに真っ赤っか。それに自分の事を僕って言うし。
「あなた本当に女の子?」
「そうだよ? ほら」
などといっていきなり歩乃歌は下を脱いだ。確かにそこに見える景色はホクロがある事以外は自分のと同じものだった。念のため触ってみたり舐めてみたりもしたがやっぱりない。女の子だ。
「……どうして舐めるのかな?」
「見たり触ったりするだけじゃ分からないでしょ?」
「普通分かるよ。君は女の子でしょ?」
「うん。ほら」
自分もまた下を脱いだ。濡れていたから脱ぐのに手間取った。
「おお、ほんとだ。ついてない」
「女の子のを見るの初めて? あなたも女の子なのに?」
「うん。僕にはお兄ちゃんがいたんだ。もうどっかいっちゃったけど。前までよく一緒にお風呂に入ってたの。でも女の子の友達はいなくて……」
「じゃあ私が友達になってあげる」
「本当? そうだ、あなた、お名前は?」
「私は蛍。白百合蛍って言うの」
「蛍ちゃんなんだ。うん、友達だね」
その会話は微笑ましいものかも知れない。……5歳程度の幼女が吊り橋の上で下半身を露出させながらでの会話じゃなければだが。
それから二人で歌を歌いながら歩いていると、無事に歩乃歌は母親と出会い、自分もまた両親……ではなく兄と再会して別れて、それから再会する事はなかった。
……去年までは。
・朝。目を覚ますとやはり当然のように見えるのは見慣れた部屋の天井と、隣のベッドで眠る眞姫の姿だ。
「……ん、何か夢を見てたような……?」
前に見たのとは違うものだと思う。どっちも覚えてないけど。
時計を見る。まだいつも起きる時間よりも15分早い。
15分だよ? 15分。微妙な時間だよね。寝直すには足りないし。早起きしてしまうにもちょっと勿体無いし。
よく漫画とかであるあと5分~とかあと5光年とかあと5世紀とかって僕みたいに一度目を覚ましちゃったらそのままぱっと目が覚める偉い子ちゃんからしたら信じられないよ全く。
とりあえず上体を起こしてカラコンを入れる。まだちょっと怖いけど、これがないとほとんど何も見えないから仕方ない。なんでもできる僕の数少ない弱点。でも玉にも瑕があった方がいいって言うし、やっぱり僕ってパーペキ?
「……すー……すー……ドギャギャギャン……すー……すー」
隣を見ればまだ眞姫は眠っている。そうだ。いたずらでもしてやろう。そう思ったら吉日。なるだけ音を消して布団から出てベッドから上がり、眞姫のベッドに忍び込む。
うわ、あったかいなぁ……これが人の温もりって奴かな? 殿、靴を温めておきましたとか聞いた時はキモイって思ったけど布団くらいなら悪くないかも。眞姫の癖に地味にいい匂いだってしてるしさ。
「どれどれ」
もにゅもにゅ。ご自慢のDカップを揉んでみる。寝てる時だってのにブラしてるからちょっと感触が残念だけど。しっかし、本当に色気のない下着だよね。まだ真っ白の方がましだよ。色気のない下着なのに色気ムンムンのビッチスタイル。ニッチだよねぇ。ニッチ向きのビッチとか眞姫はどれだけピンクなんだろう。
「どれどれ」
今度は下だ。
「……ん、」
流石にズボンの中に手を入れたら反応があった。でも、起きる気配はない。なのでそのまま指を下着の中に入れてみる。お、眞姫の癖にちょっとだけ生えてる。僕はまだなのにずるいなぁ。あ、勃ってる。エッチだなぁ眞姫は。ん? ここまでしてる僕の方がエロいって? ふっふっふ。何をおっしゃる男性諸君。これは女の子同士の朝のスキンシップ。こんなふうにパンツの中にまで手を入れてたって軽いいたずらで済むのだよ。
悔しい? 羨ましい? そこ代われ? ふっふっふ、最高のスパイスだよっ!
「あ、そうだ」
眞姫の枕元には眞姫のパラフォがある。充電コードを抜いて、画面を開く。
僕達は一緒に住んでいる関係上ある程度の情報交換とその保存が必要だからお互い最低限の機能を使えるように相手のパラフォを設定してあるんだ。僕の指紋も眞姫のパラフォには登録してあるし、眞姫のも僕のに登録してある。なので、
「ふっふっふ……」
カメラモードにしてそれを眞姫の下着の中に入れる。そして撮影。
フォトで確認すればあら不思議。立派な肉の谷間が写っているではありませんか。
そしてそれをロック画面の画像に設定する。これで眞姫は自分の股間をパラフォを使って最初に見る景色に登録している自己中系激痛変態ビッチ中学生として認識されるに違いない。
……想像したらちょっと興奮してきた。僕も後で自分のをやってみよっと。
さあ、今から眞姫が外でパラフォを開いた時が楽しみだ。ふっふっふ……。
・通学路。僕は頭に大きなたんこぶを乗せて眞姫の隣を歩いていた。
「そう言えば最近UMX出ないね」
「そうね。1号2号が続けて出てきたからてっきり毎日のように出撃があるんだと思ってた」
そうおっしゃる眞姫の右手は血に濡れていた。……何もここまでする事ないじゃないか。
「いや、あんたねぇ。寄りにも寄って何で定期モードに登録したわけ? これ今日一日は解除できないんだよ? 罰としてあんたのもそうして同じ目にしてやったからいいけどさ」
「同じじゃないよ!? 僕の場合くぱぁってされたもん!! これ放送できないよ!?」
「……出来たとして自分の秘部をどこに放送する気だあんたは」
そんなこんなで自分のあそこを最初の画面にしたパラフォを持った女子中学生がここに二人。
と言うかこれじゃ学校でゲーム出来ないし、と言うかロック画面を指紋で解除する場合自分のあそこを指でいじる構図にしないといけないの? 学校で、自分のの写真を、自分の指でいじるなんてどんな変態プレイをさせる気なんだ眞姫は。この変態♬ 変態♫ 変態♪
「……あんたの画面、花京院に見せてもいいんだけど?」
「うわあああん!! このルームメイトが怖すぎるよぉ!!」
「大体、これじゃUMXが来た時にPAMTを出す時不便じゃない」
「だね。今日ばっかりはUMXが出ない事を祈るばかりだよ」
と言いつつも僕は何が起きても無難に対処できる自信があるハイパー歩乃歌ちゃんなので何か起きてくれないかなぁって全力で祈ってたりする。天才なだけだよ? 決して変態なんかじゃないよ?
「……あ」
赤信号の前、止まっていると左側の青信号の向こうから横断歩道を渡ってこっちにやって来る制服姿を発見した。確か、白百合さんと一緒にいた下級生ちゃんだ。一人でいるところは初めて見る。
眞姫も気付いたのか、二人でぎこちなく会釈をしようとした時だった。
「……っ!」
一瞬、僕は首から下の感覚を失った。同時に喉のあたりに鋭いものを感じた。
まるで、見えない剣か何かで首を落とされたように……。
「……はっ!!」
気付いたら僕はガードレールに上半身をもたれさせていた。すごい汗をかいていた。でも、当然ながら首は落ちていない。それを何度も首をさすりながら確認すると、あの下級生ちゃんの姿はどこにもなかった。
だけじゃなくて、何だか風景も変わっているような気がした。そして遠くの方から学校のチャイムの音が聞こえた。
「え……!? 今の何……!? 眞姫は!?」
振り向く。と、足になにかぶつかった。それは地べたに倒れ込んで嘔吐している眞姫だった。
「眞姫!! 眞姫!!」
「……ほ……のか……?」
「どうしたの!? と言うか今のってまさか……!!」
僕はパラフォを操作する。ロック画面の我が亀裂は今は無視して時間を確認するとかなり時間が経っていた。
7時半には家を出て、8時には学校に着いている筈だったのにもう8時20分になっていた。学校までの道のりのちょうど半分くらいだったからつまり僕達は30分近くも意識を失っていたってこと……!?
「眞姫、遅刻しちゃうよ! 立てる……!?」
「……ごめん。体中に力が入らない……」
「怪我はどこにもないよ……!?」
「……力が入らないの……」
「……」
仕方なく僕は眞姫を担いで学校への道を急いだ。見れば眞姫は嘔吐だけじゃなく失禁までしていたのか太もものあたりが黄色く濡れていた。でも眞姫にはもちろん僕にもそれを気にするだけの余裕はなかった。
……初めて体験した。あれが殺気による幻覚。一瞬か数秒意識が飛ぶ程度だと思ってたのにまさかこんな長い時間意識を失っていたなんて……。僕はもう冷や汗掻いてるだけで収まってるけど眞姫なんか全身が麻痺してるみたいだ。
……この前体育館裏で覗いちゃったのをそんなに怒っていたのかな……?
いや、それもあるかもしれないけど、それだけじゃないはず。それに普通じゃない。間違いなくただの中学1年生じゃないよあの子。僕をここまで恐怖させるなんてUMX以上。……いざとなったら百連使うかな。
ともあれ僕よりずっと大柄な眞姫を担いで走るのは流石の僕も厳しくて、結局遅刻してしまった。
けど、偶然校門を締めようとしていたのが筧先生だったから僕達は仕方なく公休扱いで保健室に行く事にした。
「ああ、白百合と一緒にいる下級生か。知ってるぞ」
保健室。ジャージに着替えさせた眞姫をベッドに寝かせ、僕はカーテンの向こうの筧先生に尋ねた。
「あの子、何者なんです? 白百合さんのSって事は知ってますけど」
「Sって、スールか。よく知ってるな。……彼女の名前は火核咲。白百合の家で3年前に拾われた記憶喪失の少女だ。セントラルの重要機密らしきデータも背負っているらしい。俺とは管轄が全く違うから、セントラルに関係していると言う事しか分からないがな」
「……って事は白百合さんも?」
「白百合の家はセントラル日本支部と隣り合わせだ。正確に言えば白百合が所有している2000坪もの広大な敷地の一部を借りて支部を作ったそうだ。流石に60年以上も前の話だから俺も聞いた話だがな。そして、ただ敷地を貸しているわけではない。白百合の家長であり彼女の父親でもある白百合孝蔵はセントラルでもかなり上の方にいる幹部職員だ。俺は会った事がないから分からないが、なんでもずっと外見が変わっていないらしい。少なくとも外見年齢60前後の状態で20年以上は姿を変えていないらしい。今回の件に関しても間違いなく関わっているそうだ。……話が逸れたが、白百合蛍と火核咲の二人、そして白百合蛍の兄である白百合孝宏に関しては俺は詳しくは知らない。ただ、間違いなくUMX やPAMTについては知っているはずだ。
特に兄である孝宏は俺も見た事があるがPAMTそのものの試作機だった機体<ワイヤード>のテストパイロットでもあった。そして実際に完成したワイヤードでUMX1号分身体と戦い、見事倒して見せていた。それから2年は経過しているからもしかしたら孝宏にはアレが……」
「え?」
「……いや、何でもない。まあ、連中は敵ではない事は確かだ。火核咲は正確な胸中は不明だが蛍に懐いているようだからお前達に危害を及ばせる事もないだろう」
「……たった今さっき殺される幻覚見させられて遅刻しそうになったんですけど。眞姫とかまだ目を覚ましませんし」
「外傷はもちろん内傷も問題ないと保険医の赤城先生は仰っていた。ならば問題ないだろう。と言うか頼むから何かしたりしないでくれよ。火核咲は間違いなくセントラルで必要とされている存在なんだ。直接関わってる。お前ほどの変態でもないわけだしな」
「あれれ? おかしいな先生。英語の担当だからって日本語を間違えちゃダメですよ。変態じゃなくて天才ですよ僕は? メガネな男子が言えばイヤミでも僕みたいな可愛い女の子が言えば萌えるでしょ?」
「そう言うところが変態なんだお前は」
失礼ながらため息の筧先生。と、その胸ポケットが激しく揺れ始めた。あれは前にも見た……
「先生、まさか……」
「ああ、そのまさかだ。2週間ぶりだが行ってくれるか? ……UMX3号のお出ましのようだ」
・教室。今は現国の授業が行われている。
「……」
始業するまでの間、見ていたけれど彼女は来なかった。何かあったのかもしれない。でもUMXの出現情報はまだ出されていない。
「それでは、今から漢字テストを行う。……紫はいないから白百合、用紙を配るのを手伝ってくれ」
「はい」
席を立ち、先生の待つ教卓へと向かう。プリントを受け取ってそれぞれの列に適切な枚数分配る。
……やっぱりあの子の姿はなかった。ううん、あの子だけじゃない。牧島さんもいない。この二人の共通点はルームメイト。そしてPAMTの所有者。後者で何か問題があったなら私にも情報が行くはずだ。だとしたら前者で何か問題があったのかもしれない。
例えば? 片方が急病で病院まで付き添いか看病? でもあの二人の性格なら相手のためにそこまでするとは思えない。真面目なあの二人が遅刻をするはずもなければ、況してや連絡もなしに休むはずもない。
だったらやっぱり何かあったと見た方が可能性は高いはず。
……どうしようか。この教室の設定を一度ストップして状況を確認する? でももしなんてことない、それこそ私の思い過ごしのような、軽いハプニングだとしたら……。
私でも設定に直接手を出すのは余程の場合を除いて許可はされていない。実行自体はいつでもいくらでも出来るけど、帰ってからお父様やお母様、お兄様に何をされるか分かったものじゃない。
……私はこの計画に必要不可欠な存在。でも逆に言えば必要とされている事以外に意味はない。
死んでしまったり、壊れてしまったりしない限り何が起きても構わないって考えられてるだろう。
前に一度、何もかも嫌になって家出をしそうになった時には旧式でお兄様の新型を相手させられて何度も何度も殺されそうになった。
正直いつ死んでしまおうかと思ったか分からない。でも、あの子に会うまでは私は死ねなかった。
実際に再会してからは、私の事を覚えてなかったとしても毎日あの子の顔を見るために死ぬわけには行かなくなった。……まさかあの子までPAMTに選ばれてUMXと戦う事になるなんて思わなかった。
あの子がまだ私の言った言葉を覚えてくれていてそれを実行してくれていたならどんなUMXが相手でも大丈夫だろう。それでも危険は襲ってこない方がいい。だから、UMXが現れた際には担当官よりも先に私に知らせてくれるようにセントラルに頼んである。それがないって事はまだUMXは……。
「……あ」
来た。ポケットの中のパラフォが振動している。UMX襲来の時だけこの振動は発動する。
……どうしようなんて迷う必要はない。あの子のために私は生きている。だったらこの命をあの子のためにどうして出し惜しみをするのだろうか?
「……ストップ」
パラフォを取り出して、この教室の時間を止めた。それを確認してから私は廊下に出る。パラフォの画面を開けば3号出現の文字とその座標が記されていた。
「UMXめ!!」
「……!」
隣の教室から一人の男子が飛び出して走り抜けていくのが見えた。あれは確か花京院繁。PAMTインフェルノの使い手であり、あの子が恋焦がれている相手。
……正直言って咲に頼んで膾切りにしたいけれど、でもあの子を悲しませたくはないからそんな事はしない。
……でも、花京院繁が飛び出したって事はUMX出現の情報が行ってるという事。私より先に誰かからその情報をもらっているということだ。だとしたら……。
「……急がないと」
廊下の窓から20メートル超のPAMTが姿を見せ、音速で地を駆け抜けていくのを見送ってから私はPortble Asultism Mechanical Truperの画面を開く。
「……アズライト、行くわよ」
スタートボタンを押すと同時に私の姿は変わり、一縷の閃光となって窓の外に放たれた。




